身の程を知るモブの俺は、イケメンの言葉を真に受けない。

Q矢(Q.➽)

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8 俺のチャームポイントを挙げていかれる罰ゲーム

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…………いや、いやいやいや。
それはないだろ。

だって俺だぞ?
わざわざそんな事する価値、あるかぁ?

俺は真っ黒なスマホの画面に自分を映す。
そこには、平坦な顔に高くも低くもない鼻、一重っぽい奥二重の、普通の大きさの目、薄目の唇。

…………よし、今日も可もなく不可もない。

というお馴染みの顔だ。

ブサイクと言われた事も無いが、イケメンと言われた事もない。
以前はイケメンを羨んだ事もあるが、最近では他人に不快感さえ与えなきゃもう別にこれで構わないか、と思い始めた。

体だって、そんなに筋肉質って訳でもなく、ガリガリという事も無く、至って普通の、やや細身の体型だ。
身長だって174cmで平均。

黒髪、黒目、この国では埋没の色。

取り立てて特筆するところの無い、平凡な男。
それが俺、田中 泰という人間なのだ。
綺麗だったり可愛かったり、容姿の良い人間がそれなりにいる中で、わざわざ選び取る意味も無いような。

裕斗のアレは、単に長年一緒にいて性格も気心も知れているからと、そういう事だと思う。

だからそれらの事実を踏まえ、俺は風祭に言った。


「それは…考え過ぎなんじゃ?」


ところが風祭からは思わぬ答えが返ってきた。


「本当だよ。あの時の幹事だった奴が話してるの聞いたんだ、ファミレスで。
でもその時はもう、泰はアイツと付き合っちゃってただろ。好きになっちゃってただろ。

僕がそれを言っても、聞いてくれないと思ったんだ。」

確かに俺は付き合って徐々に本條を好きになっていたけど…。


「それに、アイツ…中高でもタラシで有名だったって聞いた。手癖悪かったって。
狙ったらどんな手段でも使う奴だ、って。
だから俺、どうしても泰とアイツを早く別れさせたかっただけなんだ。」

風祭はボソボソとそう言って、唇を噛みしめる。
だが、俺はそれを信じられない思いで聞いていた。

手癖…  タラシ…
どんな手段でも……。


「で、でも…そんな、俺なんか本條みたいや奴がターゲットにするほどのもんじゃないし…。」

「泰だからだろ!!」

いやどゆこと…?
平凡モブだから簡単ってこと?と首を傾げる俺。


「僕だって泰、欲しい。」

「……。」


ダイレクトすぎる風祭に言葉を失う俺。

何なんだ。
俺の何が君達の琴線に触れるんよ?

「泰は人見知りだし、」

「…うん。」

「だから基本、誰にでも塩対応だし、」

「まあね?でもそれは人の事はいえなくないか、風祭?」

「でも親しくなるとすごく面倒見が良くて、」

「スルー?

そうかな、普通じゃね?」

「優しくて笑顔が可愛くて、」

「……至って普通の笑顔にしか見えんがそんなに魅力的か?」

「フードから覗く首筋が何時もエロくて、」

「…年がら年中フードばっか着ててごめんなさいね。」

「あと、お昼も弁当作って来た時はわけてくれたり、」

「月末近くは仕送りもバイト代も使い切って懐寂しいから学食の素うどんすら食えなくなるからさ。ごめんな、純粋な塩にぎりのみで。こちらこそ何時も定食のおかずわけてくれてありがとな。」

「何時もいい匂いもするし…」

「…洗剤かシャンプーかファブじゃね?」

「一緒にゲームした日は泊めてくれるし、一緒に風呂も入ってくれるし、」

「いや入って来たらダメだっつってんじゃん、流石に男2人で入るのは狭いからって。」

「あと声がめちゃめちゃ綺麗で鳴かせたくなるくらいヤラしいし」

「それは想定外。」


止めないと延々と続きそうで段々羞恥に苛まれてきた俺は、もういいもういい、と風祭の口を両手で押さえた。手のひらをべろりと舐められて、びっくりして離す。

「とにかく、泰は魅力的。」

「…そ、か…アリガト…。」


とても魅力的とは思えない、どれも普通の大学生としての日常の一コマであるが。

俺には風祭の感覚の方がわからん。
風祭ってもしかして、好きになるハードル低くね?

困惑する俺。

だが、そんな俺を真っ直ぐ見据えて、風祭はハッキリとダメ押ししてきた。


「泰はよく自分の事を普通で平凡って言うけど、僕から見たら泰はすごく可愛い。」

「……ぉ、ぉぅ……。」

「可愛いし、中身は男前だし。
肌はすべすべだし、髪はツヤツヤだし、目は綺麗だし、ちっちゃい鼻も可愛いし、」

「あ、マジでもう大丈夫。」

キリが無い。照れる。恥ずかしくてメンタル持たない。
多分俺、今めっちゃ顔赤い。顔を片手で煽ぐ。



話を戻そう。

「で、何であの時本條といたの?」

よりによってあの日だったってのが、またなぁ…。

風祭はもそもそ話し出した。

「あの数週間前に、アイツに連絡取ったんだ。」


こっからは風祭の話の要約。

風祭は本條の良くない噂を聞いていた。
急に俺を取り上げられたようで本條を憎たらしく思っていた風祭は、本條の素行調査をしようと 俺といない時の本條を尾行する事が増えたという。
主に、俺がバイトの日を中心に。

その結果、本條は本当に適当に遊んでいたらしい。
風祭が確認しただけでも、5回は他の人間とホテルに入って行くのを見た、と。
内訳は男2人、女3人。

本條はゲイではなくバイだったようだ。
まあ、だろうとは思ってた。しかもガッツリ浮気はしてたって聞くと、気持ちが冷めたとはいえ流石にショックだ。
何処かでまだ、勘違いだと良かったとか、嘘だと思いたかったって気持ちがあった。
しかし風祭は尾行した時に、ホテルに入る迄の動画をスマホで録っていたらしい。
それを観せられた俺は、流石にもう天を仰ぐしか無かった。


本條はどういうつもりで俺と付き合ってたんだろうか。

あ~、俺って見る目ねえのかなあ。











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