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主様、親交を深める。2

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「初めまして、良い夜だね。」

「お初にお目にかかります。…左様です…ね?」


歯切れが悪いのは、全面の窓から見える外がまあまあの土砂降りになっていたからである。

…まあ、雨が好きな人なら、良い夜と言えなくもない…か?と、
精一杯の理解をしようとする俺。


微妙な気持ちになりながらソファに掛けていただくと、直ぐに草鹿が

「お飲み物は如何なさいますか?」

と聞いてきたので、お客様のご希望で紅茶をいれてもらったら、見た事もないカップで出された。

多分クソショタ殿下の手回しだな。
入寮してから俺が覚えの無い物や家具がかなりあったが、草鹿に聞けば今の所100%の確率で彼奴が用意させたものだと言われたから、きっとこれも間違いなく。



目の前で湯気の上がる紅茶の向こうで穏やかな笑顔のプラチナブロンドの王子様。

いやマジで王子様だな。
これは世の9割の女の子達が憧れるタイプの正統派王子様だわ。

どこかアクの強いとこのあるクソ殿下とは一線を画すロイヤリティを感じる。
マジで彼奴は何なんすかね?


「エリシアのアドリアだよ。よろしくね。」

「岩城雪長にございます。よろしくお見知り置きのほどを。」

ほんとはあんまりお見知り置かれたくはないが。


「存じています。ラディスラウス殿下のご正室になられるんだよね。」

アドリア殿下は優雅な仕草でカップを持ち上げると、少し揺らして香りを嗅ぎ、その琥珀色の液体を口に含む。

「あ、美味しいね。流石は草鹿。」

「痛み入ります。」

そのやりとりはホントに和やかで自然だ。下の者にこんなにもさらりとお褒めの言葉をかけるのか…。

うぬぅ…これは確かに、なかなかの人格者…。

あっついのでフゥフゥチビチビ品の無い飲み方をしながら2人を交互に眺める小者感満載な俺とは別世界だナー…。


「…それにしても、雪長様は、可憐だね。」

「ブフォ」



リアルに吹いた。

草鹿が慌ててナフキンを取り出し俺の口元と部屋着のシャツに宛てがう。
急いでアドリア殿下に粗相が行ってないか目で確認したが、大丈夫みたい…。キョトンとはしてるけど、かかってはいない。

あ~…良かった…。





いや良かったじゃねえわ。


「か、可憐、でございますか…?」

それは褒め言葉と受け取って良いのか…?


「可憐だよ。白雪姫のようだ。」

「ブ…」

今度は草鹿が迅速に俺の口元をナフキンで押さえ事なきを得た。

何コレすごいこんな体験初めて。
可憐とか言われる事、男の人生普通に生きてて、早々ある?
高貴な方々ってこんな感じなの?
クソショタ変態殿下といい、アンリ大公殿下といい、貴方様といいカジュアルに口説き文句みたいな語彙が出てくるよね。

照れない?


「…こ、光栄に…ございます…。」

黙っていては無作法というもの…と、断腸の思いでお礼を述べる俺。

「奥ゆかしいなあ。
伴侶の鏡だね。
ラディスラウス様もそういうところをお気に召されたのかな。」

「……恐縮です…。」


モウヤメテ…コロ…シテ…


俺が女の子に言いたい語録だわ。


アドリア殿下が入室してきて10分も経たない内に俺のメンタルは早くも瀕死になっていた。




あの、それ、ほんとに他意は無い?ナチュラルならナチュラルの方が更にきついんですけども。


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