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心配する婚約者

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残ったユリウス様は私のベッドサイドに座っている。
私はフワフワとユリウス様の顔を覗き込むと、本当に心配そうにしている顔に気付いた。

こう見ても、やっぱり顔が整っているわ。

…少しあの人に似ている気がする。
でも髪の色が違うわね。
彼は真っ黒の髪だったから。
彼が二十歳になったら迎えに来ると言って下さったのだから、私はあの人を待つわ。

「イーディス、早く目を醒ましてくれ。」

きゃああ!!

ユリウス様が、両手で私の頬に触れ、額と額があたっている。

私の顔に近づかないで下さい!

ポカポカ叩いても、ユリウス様は全く気付かない。

気付かなくてもいいから触らないでほしい!

私は二十歳になったら迎えに来ると言ってくれた黒髪の彼を待っているのよ。

私の必死の抵抗もむなしく、ユリウス様は私の手を握りしめていた。


夜にはまた、ユリウス様は来ました。
何故1日に二度も来るのですか。

窓の外の馬車には、今日は女はいない。
今夜はご自宅で待ち合わせかしら?それともこれから会いに行くのかしら。

ガタガタッとドアの変わりの板をのけ、ユリウス様が入って来ました。

ユリウス様、あなたが壊したのですよ。
早く直して下さい。
乙女の部屋のドアですよ。

眠っている私に近付くユリウス様は心配している顔が明らかにわかった。
どうしてそんなに心配するのかわからない。
ユリウス様が解除の魔法をかけるがやっぱり目を醒まさない。

きっと私がここにいるから、目を醒まさないのね。
ずっとこのままかしら。
二十歳になってもこのままならどうしましょう。

何だか涙が出てしまった。

すると、私の眠っている体も涙を流した。

ユリウス様は私の涙をそっと拭きながら悲しい顔になっていた。
そんな顔をみると、罪悪感が出てきた。

「イーディス…」

ユリウス様は本当に私を心配しているのがわかった。

でも政略結婚ですよね。
どうしてそんなに心配するのですか?
本当に私がいいのですか?
どうしてですか?

今さらながら、ユリウス様にきちんと聞いておくべきだと思った。

ベッドサイドに座るユリウス様は本当に愛しい人を心配している姿そのものに見えた。

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