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第3章 老害

第58話 性癖暴露

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 老害の家にお話しに行った翌日。
 俺と桜は北海道に戻ってきて、ホテルで朝食を食べていた。

 「SNSでトレンドになってるよ~」

 「ぶふっ! 乗っ取りとか思われてるじゃん」

 桜がご飯を食べながらスマホを見せてくる。
 それは今朝ポストされた老害の書き込みだった。

 「急にこんな事をポストしたらそうなるでしょ~」

 「なになに? 『今日からわしの性癖を一日一つずつ暴露していく。記念すべき一日目はこれだ』」

 男の娘か。可愛い男性が女装してる姿にたまらなく興奮する事を文字数制限もあるのにいくつかに分けてポストしている。

 「まだ可愛いもんだな。もっとえげつないのを期待してたんだけど」

 「男の娘が好きなんて人は結構いそうだよね~」

 なんかもっと社会復帰が出来ないようなネタを求めてたんだけど。
 これじゃあ逆に男の娘好きから支持を集めてしまうかもしれない。

 「それにしても精神操作はとりあえず成功してるみたいだな」

 「今頃老害さんは訳分からない事になってそ~」

 俺がした精神操作その一。
 毎日、何かしらの方法で自分の性癖を一つは暴露する事。
 まぁ、普通の人なら一週間ぐらいで終わりそうだけど。流石に10個も20個も性癖はないだろう。ないよね?

 因みに、老害に精神を弄られた記憶はない。何故自分が性癖を曝け出してるのか分かってないだろう。何故か暴露したくなるように弄ったからな。
 今頃悶えて苦しんでくれてると嬉しい。

 「まだまだこんなもんじゃないぞ。少しずつ壊していってやる。最初から飛ばし過ぎると変に思われるからな」

 「急に性癖暴露もたいがいだけどね~」

 まぁね。それでアカウント乗っ取りを疑われてる訳ですし。

 「とりあえず数日の間はこれで楽しませてもらおう。俺達は北海道観光の続きでもしようぜ!」

 「ザンギ食べた~い」

 あ、俺も。唐揚げとの違いがいまいち分からないけど名物なら食べてみたい。
 石狩鍋も食べたい。北海道は美味しいものばっかりで困っちゃうな。



 それから三日後。
 俺と桜は北海道から東京に帰還した。
 もう一度ラーメン屋にも行けたし、他にも色んなのを食べれたから大満足な遠征になったな。

 「ふむ。思ったより反響が少ない」

 せっかく老害が恥を晒してくれてるのに、2級攻略の動画が上がったせいで、話題をそっちに持っていかれてしまっている。

 「傲慢な性格そのままに性癖を語るもんだから、クスリやってるんじゃないかって囁かれてるな」

 もっと騒ぎになる予定だったのに。大炎上とは程遠い。

 「露出癖があったり寝取られ願望があったりで結構やばいと思うけどね~」

 露出狂の男の娘好きで寝取られ願望。
 極まった性癖してるよな。それが騒ぎにならないんだから、2級攻略がどれだけ偉業か分かるってもんだよ。俺の1級攻略も大概だったけど、他のギルドでも一つ上の狭間を攻略出来たもんだから、日本はお祭り騒ぎだ。

 「だんちょ~どうするの~?」

 「第二波に期待だな」

 性癖暴露でジャブを放ち、次はストレート。
 自分のタイプの人間を見ると、口説かずにはいられなくなる。

 「男の娘を口説くって事~?」

 「どうだろうな。普通に女も好きっぽいけど」

 女性遍歴を見る限りではだけど。普通に結婚とかもしてたらしいし。離婚してるけど。

 「そこまで精神を弄れるもんなの~?」

 精神操作は嫉妬レヴィアタンの専売特許ですからねぇ。
 老害も自分がなんでこんな事をしてしまうのか、理解出来ないだろう。
 でもせざるを得ない。自分の評判が落ちる事は分かりきってるのに、やらないといけない強迫観念に駆られる。

 「俺なら自殺したくなるね。まだ性癖暴露程度じゃ、顔真っ赤にする程度だろうけど」

 これからは口説く。捕まるを繰り返すだろう。
 その度に恥を晒してもらう。

 「それだけ~?」

 「それだけとは? 俺的には充分じゃないかと思ってるんだけど」

 「いや~。暗殺者を差し向けられたりされてるのにこれだけじゃ生温いかな~って」

 え。そうかな。社会的な死だと思うけど。
 もう表世界ででかい顔をする事はないから満足なんだけど?

 「あたしはもっと追い詰めた~い。全国放送で靴を舐めるぐらいはしてもらいた~い」

 あ、それはやってもらいたい。
 テレビで出演者全員の靴を舐めないと気が済まない精神操作をかけてやろうかな。

 「人前で漏らすとか~もっと社会的に殺すにしてもやりようはあると思うんだよね~」

 おやおや。どうやら俺より桜さんの方が怒ってる様子? そんな風に見えなかったから意外だぜ。
 俺はなんかもう一回すっきりしちゃった感があるんだけど。

 「老害さんに結構時間取られちゃったも~ん。なんか物凄く時間を無駄にした気がするんだよね~」

 ふむ。ご機嫌斜めですな。ここは一つ吉野さんにでも行ってご機嫌回復してもらおう。
 そう思って、ホテルから出て歩いて吉野さんに向かう。
 まだプリプリしてらっしゃるけど、牛丼食べたら忘れるだろ。

 「織田天魔ー!!!」

 「んあ?」

 歩いてると、後ろから大声で名前を呼ばれる。
 厄介なファンかなと思って振り返ってみると、そこに居たのはなんと老害。

 「わしと一晩共にしてくれー!!」

 おおふ。
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