未冠の大器のやり直し

Jaja

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第3章 秋までの道程

閑話 ウルと神奈

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 今話は神奈視点からお届け!

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 今日は小学生の頃から気になっていたウル君と初めて2人っきりでお出かけだ。
 朝からお兄ちゃんの視線が鬱陶しかったけど、いつもの事だ。
 愛されてると思って許しておく。

 朝10時に駅前に待ち合わせで30分前に着いたんだけどウル君はもう既に待っていた。

 「ウル君! お待たせ!」

 「いや、僕が早く来すぎちゃっただけだから。おはよう、神奈ちゃん」

 「おはようございます!」

 「今日の服可愛いね。神奈ちゃんに合ってると思うよ」

 「ほんとですか? ありがとうございます!」

 お気に入りの服を着て来て良かったです!
 こういうさらっと言っちゃう所がグッときちゃいますね。
 ウル君は計算じゃなくて天然でやってるのでたらしの才能があると思います。

 「どこに行こうか? 一応この辺で遊べる所とかは調べてきてあるけど」

 「じゃあウル君のプロデュースでお願いします」

 「プロデュース? …僕が案内するって事でいいのかな?」

 ああ。ウル君はちょっと頭が弱いんでした。
 流石にプロデュースはわかって欲しい所ですね。


 
 ウル君が連れて来てくれた所は、水族館やプラネタリウム、ショッピングセンター等がある複合施設でした。

 「ネットで調べてたら色んな施設が混ざっててお得だなって思って」

 なんともウル君らしい理由ですね。
 私もここに来た事は無かったので楽しみです。

 「ウル君は、高校生活はどうですか?」

 「うーん。僕は中学とそんなに変わってないかな? あ、勉強は難しくなったね。神奈ちゃんは、もう高校はどこに行くか決めてるの?」

 「勿論、龍宮です! お兄ちゃんがいるし、渚ちゃんも一緒なので! マネージャーをしようか迷ってます」

 「そうなんだ! 楽しみだなあ。神奈ちゃんがマネージャーやってくれるなら僕はその時までに頼れる先輩になってなくちゃね」

 「今でも充分頼れる先輩ですよ!」

 「いやあ、僕ってちょっと馬鹿だから」

 それはそう。
 流石の私も擁護できないよ。


 そんな事を話しながら、水族館に向かう。
 水族館なんて久々だなあ。

 「はい、これチケットね。ネットで予約出来るみたいだからしておいたんだ」

 「わっ! ありがとうございます! いくらですか?」

 「いいよいいよ。ここで男らしい所を見せておかないとね。パンのおかげでお小遣いには困ってないし」

 そういえば、高校に入ってからお兄ちゃんは株取引を自分のお小遣いでやってるらしく、シニアの人達と扶養が外れない範囲で稼いでるらしい。
 前から思ってたけどお兄ちゃんって何故か賢いんだよね。
 あんなちゃらんぽらんな感じなのに不思議。

 「じゃあ今日はお言葉に甘えますね」

 「任せといてよ!」

 
 それからは、ウル君と時間を忘れる程水族館を楽しんだ。

 「わあー! 見て下さい! アシカが凄い体勢で寝てますよ!」

 「コウテイペンギン! 可愛い!」

 「あっちで餌やりが出来るみたいですよ! 行ってみましょう!」

 「カワウソだー! なんか落ち着きますね」


 楽しい時間はあっという間に過ぎるもので気付けば帰る時間になっていました。

 「なんか、私ばっかりはしゃいじゃって…ごめんなさい」

 「そんな事ないよ。僕もかなり楽しかったし、はしゃいでる神奈ちゃんはとても可愛かったよ」

 またまた、そんなこと言っちゃって。
 まあ普通に嬉しいんですが。

 「あの、また練習が休みの時は誘ってもいいですか?」

 「もちろん! 次は僕から誘うよ」

 「ほんとですか! じゃあ楽しみに待ってますね!」

 ギリギリまでお喋りしながら家に辿り着く。

 「それじゃあ、今日はありがとうございました!」

 「こちらこそありがとう。楽しかったよ」

 ウル君とお別れして家に入る。

 「ただいまー」

 「お、おかえりー! どうだった? ウルに泣かされたりしてないか?」

 私が家に入ると、ドタドタと焦った様にお兄ちゃんがリビングから走ってきた。

 「そんな訳ないじゃん。滅茶苦茶楽しかったよ」

 「そ、そうか」

 「じゃあ私お風呂入ってくるねー」

 ホッとしたような、それでいて複雑そうな顔をしてますね。
 お兄ちゃんは過保護なんです。
 私もちょっとツンケンしちゃいますが、なんだかんだ応援してくれるので良い兄だと思います。

 あー、今日は楽しかったなー。
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