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6話 それでもやっぱり関わりたくありません。
しおりを挟むえ? 今レオンハルト様はなんと言ったの?
「私に婚約者は居ないけど? 」
私が意味がわからないでいると、レオンハルト様がもう一度言う。
「え? 」
「何故私に婚約者がいると思ったの? 」
「え? でも、クリスティーナ様は? 」
「クリスティーナ嬢? ヴォルド侯爵家の? 」
「はい 」
「確かに、そんな話はあったけど、お断りしたよ? 」
私はしばらくレオンハルト様の言葉を飲み込むのに固まってしまう。
ちょっと待って? 婚約していない? どういう事?
「エリシア、レオンハルト様が婚約したなんて、なんで思ってたの? 」
お兄様に突っ込まれて回答に焦る。
だって、小説の中ではレオンハルト様の婚約者はクリスティーナ様だったから、当然そうだと思ってた。まさか婚約してないなんて思わないじゃない!
「あの・・・社交界でそんな噂を聴いたので・・・そうだと思ってました・・・失礼致しました 」
勝手な思い込みでさっきの言葉を発してしまったと思うと、恥ずかしくてレオンハルト様の顔が見れない。
俯いて言い訳をしたけれど、お兄様、これ以上突っ込まないでね!
「いや、気にしてないからいいよ 」
良かった、レオンハルト様はあまり気にしてないみたい。
でも、ちょっと待って、レオンハルト様がクリスティーナ様と婚約していないってことは? どういう事?
確かに、小説の中のゲームは恋愛ゲームなので色んな御相手の方が居たけれど、そのうちの一人はお兄様だし。違う方と恋に落ちていらっしゃるの?
て事はレオンハルト様は今フリーなの?
いやいや、だからってこんな女タラシっぽい人と恋愛なんてしないけど、ここは小説ではなく、その中のゲームの世界って事? だとしたら私が主人公? いやいや、有り得ないわ、私に主人公要素なんて無いもの、それに私は静かに暮らせれば良いんだから、表舞台に出るつもりは無いわ。
状況がよく飲み込めないけど、とにかくレオンハルト様には関わらない方がいいわね。
「レオンハルト様程の方ならすぐにご結婚のお相手も見つかるのでしょうね、私は静かに本に囲まれて暮らせるのが幸せなので、レオンハルト様のような高貴な方とこうしてお会いする事も、とても恐縮ですわ 」
私は早く本の世界に戻りたいのよ!
そんな事を思っていると、レオンハルト様がクスクスと笑う。
「エリシア嬢は相変わらずだな 」
「相変わらず? 私何処かでレオンハルト様とお会いしたことありましたかしら? 」
レオンハルト様は何を仰っているのだろう?
レオンハルト様と私は昨日初めてあったばかりなのに。
そう思って問いかけたのに、レオンハルト様はしばらく私を見つめて逡巡しているように見える。
ん? また何か変なことを言ったかしら?
私がレオンハルト様の返事がないのを首を傾げて考察していると、レオンハルト様はふっと微笑む。
「いや、気にしないで、私が勘違いしたようだ 」
勘違い? 明らかに何かありそうだったけれど、まあ、深く追求するつもりは無いので軽く流しておきましょう。
「大丈夫ですわ、誰にでも間違いはありますもの 」
にっこり社交辞令の笑顔を浮かべて、特に興味は無いのだと分かるよう匂わせる。
「エリシア嬢は本が好きなんだね 」
「はい、大好きですわ、今も読んでいる本がありまして、続きが気になって仕方ないのです 」
だから早く帰ってくださいね! と、心の中で付け加える。
「エリシアは変わった子でね、本なら何でも読んで吸収してしまうから私もエリシアの知識には叶わないんだ 」
「まあ、お兄様ったら、そんな事ありませんわ 」
お兄様、私はレオンハルト様によく思われたくないんだから、そんな余計な情報はいらないのよ! でも、変わった子っていうのはポイント高いわね!
「ジルも優秀で、その知識にはいつも驚かされるのに、そのジルに叶わないって言わせるエリシア嬢は本当に凄いって事だね、女性にしておくにはもったいないな、何かその知識を役に立たせることは出来ないのかな 」
「レオンハルト様、そうなんだよ! 妹は家に篭もってばかりなんだけど、妹の能力を埋もれさせるには惜しいと思ってたんだよ!」
くっ・・・「変わった子」に反応しないでそっちに反応したか・・・
お兄様も何嬉しそうに被せに行ってるのよ!
「お兄様、私は本を読むのが好きなだけで、そんな能力なんてありませんわ、買いかぶるのはよしてください 」
ついお兄様を睨みつけてしまう。
すると、お兄様の隣でレオンハルト様がククッと声を殺して笑う。
「どうやらエリシア嬢の読書の邪魔をしてしまったようだね、エリシア嬢の元気そうな顔も見れたし、私はこれで失礼するよ 」
そう言って、レオンハルト様は帰って行った。二度と来ないで欲しい。
さあ、やっと本の続きに没頭出来るわ!
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