『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。

さらさ

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18話 深夜の出来事

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コツコツと部屋の外を誰かが歩く音がする。
レオンハルト様が帰ってきたのかしら。
そんなにうるさくない、静かな足音なのに目が覚めるなんて、眠りが浅かっのね。
何故だかその足音が無性に気になって、ベッドを降りるとドアまで行ってそっと開けて覗いてみる。

そこには自分の部屋の前に立って鍵を開けようとしているレオンハルト様が居た。

やっぱりレオンハルト様だわ。 今何時かしら? 時計を見ると深夜の1時を回ったところだった。こんな時間まで飲んでいたの?
そう思いながら時計からレオンハルト様に視線を戻すと、レオンハルト様がこちらを見ていた。
ドアを半分開けた所で止まってこちらを見ている。まさか見つかると思っていなかったのドキッとする。

「なんだ、起きてたのか? 」

「いえ、今目覚めました。足音が聞こえたので、レオンハルト様かと思いまして・・・ 」

深夜に大声で話す訳に行かず、扉を出てレオンハルト様の元へ向かい、ひそひそと話す。

「ああ、すまん、起こしてしまったか 」

「いえ、大丈夫です 」

それにしても、王子様が夜中に一人で歩き回るなんて、大丈夫なのかしら・・・

「レオンハルト様、近侍の方を伴われなかったのですか? 」

「ああ、さっきまで居たよ、そこで別れた 」

ああ、そりゃそうよね、さすがに一人で出歩くなんてことは無いわね。

「それより、何か用事があったのか? 」

そう言ってかがんで私の顔を覗き込む。

「レオンハルト様・・・お酒臭いです 」

どれだけ飲んできたのか、かかる息がお酒くさい。

「あはは、かなり飲んだからな・・・ 久しぶりに酔った 」

そう言ってドアに寄りかかりながら私を憂いを帯びた瞳で見つめる。レオンハルト様、顔近いです。好みの顔がすぐ近くにある。これは照れる。そんな目で見ないでください。

「あの、レオンハルト様、お止めして申し訳ございませんでした。お疲れでしょうから早くお休みください 」

「うん? 何か言いたげに俺を見てたと思ったけど? 」

「いえ、要件は明日で結構ですので、どうぞお休みください 」

何故かじっと見つめるレオンハルト様。
照れるので見ないで下さい。

「分かった、エリシアの部屋着姿にはそそられるけど、今日はやめておこう、お休み 」

レオンハルト様はそう言って私の頬にキスをした。

「っ? 」

突然の事にびっくりしてレオンハルト様を見上げると、クスッと笑って部屋へと消えていった。

・・・・・・またからかわれた!

私は今レオンハルト様の唇が触れた頬を手で押さえながら、耳まで熱が上がるのを感じて悔しい思いと共に部屋に戻った。

ベッドに戻ったけど、なかなかさっきの熱が引かない。
何あれ、いくら王子様だからって、酔った勢いであんな事するなんて失礼よ! やっぱり女慣れしてるんだわ。私をその辺のしっぽ振って着いていく女と一緒にしないで欲しいわ!
頬に残った唇の感触、早く忘れよう。
そんな事を考えているとなかなか寝付けないまま、朝を迎えてしまった。


「エリシア、調子悪そうだけど大丈夫か? 」

5日目の朝、馬車に乗り込むとレオンハルト様が話しかけてくる。
昨日の事は覚えていないのか、全然気にする素振りも悪びれた素振りもない。

ええ、あなたのせいでほとんど寝てませんから調子悪いですわね。とは言えない。
そんな事言ったらレオンハルト様の事をずっと考えてたとバレるじゃない。

「大丈夫です。少し寝不足なだけですわ 」

そういえば、レオンハルト様は昨日遅くに帰っていらっしゃったのに元気そうだわね。

「レオンハルト様は二日酔いは無いのですか? 」

昨日結構酔ったって言ってたもの、お酒が残ってたりしないのかしら。

「ああ、大丈夫だ。昨日俺の事が気になって眠れなかったか? 」

「なっ! そんなことありません!  」

レオンハルト様の口から出た私の心を読んだかのような言葉に焦って思わず大きな声を出してしまった。これじゃあ、そうですと言ってるようなものだわ。

レオンハルト様はそんな私を見てクスクスと楽しそうに笑っている。

「・・・・・・レオンハルト様、いくら私がレオンハルト様に興味が無いと分かってるからとはいえ、からかうのもいい加減にしてください 」

「昨夜の事怒ってるのか? 」

「別に怒ってなどいません 」

怒ってるのか素直に聞かれると、思わず怒ってないと答えてしまう。私って天邪鬼だったのかしら・・・って言うか、お酒に酔った勢いで覚えてないのかと思ったらしっかり覚えてたのね、なんだか恥ずかしくてそっぽを向いてしまう。

「令嬢に対して失礼なことをした。すまない 」

レオンハルト様の口から出たとても素直な言葉にびっくりして、レオンハルト様を見る。
まさか素直に謝るとは思っていなかったので意表を突かれてしまった。
レオンハルト様はまっすぐ私を見つめて、目が合うと少し視線を落とす。その仕草がとても綺麗で、男前って何やっても様になっていて羨ましいと思ってしまう。

「・・・そんなに素直に謝られると拍子抜けします 」

私は素直なレオンハルト様に、なんだか居心地悪さを感じて窓の外を眺める素振りをした。レオンハルト様はそんな私をクスクスと楽しそうに見つめていた。



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