『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。

さらさ

文字の大きさ
61 / 71

61話 訪問者2

しおりを挟む



「それにしても、クリスティーナ様は何故ここへ? 」

クリスティーナ様でもここまで入ってくる事は出来ないはず。どうやってきたのかしら。

「ああ、レオンハルト様がね、私の所に手紙を送って下さったの、エリシア様が寂しい思いをすると思うから遊びに行ってやって欲しいって、レオンハルト様の許可書付きでね 」

クリスティーナ様はヒラヒラと許可書を私に見せながらウインクしてみせる。

「レオンハルト様が? 」

「ええ、レオンハルト様は本当に優しいわね 」

優しい・・・確かに、こうして先回りして私の事を考えてくれるレオンハルト様は優しいと思う。けど、違う面のレオンハルト様も知ってるから何とも言えない・・・

そこまで考えて、レオンハルト様の告白を思い出してしまった。

「どうしたの? 顔が赤いわよ? 」

「な、何でもないわ 」

クリスティーナ様に言うわけには行かない。
って、そう思ってる時点でレオンハルト様の求婚を受け入れることは出来ないんだけど、何故か思い出すと顔が火照る。

「そう? 様子がおかしいわよ? レオンハルト様に告白でもされたのかしら? 」

「なっ! 何故分かったの?? 」

さらりと見抜かれてめちゃくちゃ焦る。
そんな事ないと誤魔化すことも忘れてしまうくらいに。

「やっぱり、そうなのね 」

「あっ、」

嘆息して私を見るクリスティーナ様に、しまったと今更口を塞ぐ。

「ご、ごめんなさい 」

「何を謝るの? 謝る必要なんて無いわ 」

「で、でも、私はクリスティーナ様に協力するって言ったのに・・・ 」

「ああ、そんなことを気にしてたの? 」

「そんなことって、クリスティーナ様もレオンハルト様が好きなんでしょ? 」

「そうね、初めはそんな目で見てたわ 」

クリスティーナ様は口角を上げてほのかに微笑みながら遠くを見るような目をする。

「初めは? 」

「今はなんとも思ってないわ 」

「え? そうなの? 」

「って言うか、改めて一緒に仕事をするようになって、あれだけあからさまにエリシア様を優しい眼差しで見ているのを見せつけられたら想いも冷めるわ、私はどう頑張ってもそんな風には見て貰えないもの 」

嘆息しながら話すクリスティーナ様を思わず凝視していまう。

「え? 」

「何? 貴方気付いてなかったとか言うの? 」

クリスティーナ様は何を言っているのだろう。頭がついて行かない。

「私はクリスティーナ様に協力するって言ったのよ? 」

「ええ、そうね、だから遠慮してたの? どう考えてもレオンハルト様はあなたの事が好きなんだと思うけど 」

「ええっ? 」

「・・・・・・そこ、そんなに驚くこと? 告白されたんでしょ? 」

そう言われればそうだった。
あまりの事に忘れようとしていたけれど、レオンハルト様に告白・・・求婚されたのよね・・・

「・・・・・・あれは本気だったのかしら? 」

「冗談でそんな事言わないでしょ 」

「いえ、何度かからからかわれた事があったの、だから今回もそうなのかと疑ってたのよ 」

実際、何度も好きだと言われては私の反応を見て笑う姿を見ているので今更信じられるはずがない。

「そうなのね、それもエリシア様だからよね 」

「私だから? 」

「私にはそんな冗談も、砕けた話し方もして下さらないもの。距離を置かれてるのは分かるから私には気がないって分かるし、エリシア様だからからかいたくなるんじゃないかしら? 」

「それ、どういう事? 」

「あら、昔から好きな子はいじめたくなるって言うじゃない、それと同じでしょ 」

あっけらかんと話すクリスティーナ様の表情に、そんな単純・・・っていうか、レオンハルト様ってそんなに幼稚だったの? と内心思う。

「貴方に素直に言わない理由、何か訳があるように思えたけどね 」

そういうクリスティーナ様は意外と人の事をよく見てると思う。
素直に好きだと言えない理由・・・そう言われて心当たりが一つ思い浮かぶ。

「クリスティーナ様の言うことが本当ならもしかして・・・ 」

「何か心当たりでもあるの? 」

不確かなことなので言うべきか悩む。
もしかしたら、レオンハルト様は私の身分を気にしているのかもしれない。
それは自分に身分の低い娘は相応しくないと言うのではなく、私が嫌な思いをすることになるのが見えているから躊躇っているのかもしれない。
ご自分のお母様のように・・・

「何? 何か心当たりあるんじゃないの? 」

しばらく黙り込んでいると、クリスティーナ様が小首を傾げて問いかけてくる。

「憶測でしかないけど・・・レオンハルト様は私の身分を気にされてるのかも・・・ 」

「あら、そんなの気にするかしら、王位を次ぐのなら気になるかもしれないけれど・・・・・・ひょっとしてレオンハルト様は王位を狙ってるの?? 」

「いえ、それはないと思うわ。前にはっきり言ってたもの。兄のサポートをする為に今の立場に居るって、レオンハルト様はご自分の立場を正しく理解して、王族としての役割を全うしている素晴らしい方だと思うわ  」

そうだ、つい最近、レオンハルト様の本音を垣間見ることが出来た。
お母様の前だから話した内容、それはとても素晴らしい考え方で、兄を蹴落として自分が王位を手に入れようとか邪な気持ちを一切感じることは無かった。

・・・・・・改めて気が付いた。レオンハルト様はとても素晴らしい方なんだわ。




しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...