『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。

さらさ

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64話 王子失格

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レオンハルト様の部屋まで辿り着くと、ジャスタ殿下の姿に気が付いた皆が頭を下げて通してくれた。

部屋の奥にあるもうひとつの部屋に入ると、そこには大きなベッドがあって、そのベッドにレオンハルト様の姿があった。

「レオンハルト様? 」

「ああ、エリシアさん・・・どうしてこんな事に・・・ 」

私の声に反応したのはリーリエ様だ。
私は差し出されたリーリエ様の手を取ってレオンハルト様の居るベッドに近づいた。

レオンハルト様の上半身には包帯が左肩から胸にかけて巻かれていて、目を閉じて眠っているようだった。

「・・・・・・何があったのですか? 」

「私のせいだ、私が居なければこんな事にはならなかったのに・・・ 」

聞き慣れた声にベッドの反対側を見ると、そこにはお兄様が今にも倒れそうな、蒼白な面持ちでベッドの脇に座りんこんでいた。

「お兄様、何があったのですか? 」

何だか皆話せるような状況では無いのだけど、何が起こったのか知りたい、お兄様の言葉からすると、お兄様が関係しているの?
何があって今の状況になったのか、誰か教えて欲しい。
そう思ってジャスタ殿下を振り返る。

「レオンハルトは毒矢に刺されたんだ。今は薬で眠っている 」

「毒矢? 一体どこで?  誰に? レオンハルト様は大丈夫なのですか?? 」

知りたい事が多すぎて一気に口をついて出る言葉を、ジャスタ殿下は真剣に頷いて一つ一つ返してくれた。

「ディアルドからの帰り道、アイスバーグに入ってしばらくした所で数人の賊に襲われた。レオンハルトを刺した毒はすぐに命を奪うものでは無いが、徐々に身体を硬直させ、心臓の動きを止めてしまう恐ろしい毒だ 」

「賊? レオンハルト様が賊なんかに遅れを取るはずないわ! 」

レオンハルト様の剣の腕は一流なのよ? レオンハルト様が傷を負うなんて考えられない。

「賊はラグマドルの刺客だ、もちろん、レオンハルトは刺客にも遅れを取るような力量じゃない。だけど・・・ 」

「まぁ!怪我人が居るのにこんな大人数で取り囲んで大騒ぎするなんて、どういうつもりかしら 」

ジャスタ殿下の言葉を遮るように声を張り上げて入ってきたのは王妃様だった。

「まあ、自分の盾となるべき部下を庇ってこんな事になるなんて、王族失格だわね、ある意味貴方の息子らしくてよ 」

王妃様はリーリエ様の隣まで来ると、鼻で笑いながらリーリエ様を見下す様に言葉を投げかけた。

「酷い、いくら王妃様でも言っていい事と悪い事があります!」

王妃様の態度に、頭で冷静になるより先に言葉が突いて出てしまっていた。
私の声に、王妃様はゆっくりと私の方を見やると、また見下す眼差しで私を捉えた。

「あら、いつかのレオンハルト殿下の遊び女じゃない、まだ居たのね、酷いですって? 王族は限られた存在なのよ、従者に守られる事があっても、決して自分の身を危険に晒して従者を助けるなんて行いはしてはいけない。そういう命なのよ、従者の命を犠牲にして生きる。それを理解しているか居ないかが王族としての覚悟なの、レオンハルト殿下はそれを理解していなかった。だから王族失格だと言ったのよ 」

なんか色々言いたいことがあるけど、王妃様の言う事も最もだわ。
確かに、王族を護るのが従者の務め、その従者を庇って自分が死の危機に陥るようでは王族として相応しくないかもしれない。
ここが戦場なら指揮者が居なくなれば敗戦は確実。

「・・・王妃様の仰る通りかもしれません。ですが、民を守るのもまた王族の役目では無いでしょうか? レオンハルト様は思いやりのある方なので、咄嗟に庇おうとされたのではないでしょうか? 」

自分で言ってて説得力無いわね・・・結局、命を落としてしまったらその後の民は統率力を失ってしまう。

「そんな甘いことを言っているから次期王にはなれないのよ、レオンハルト殿下はもう手遅れよ、この毒を打ち消す薬は無いわ、分かったら貴方もさっさと城から去りなさい 」

王妃様はそう言うと踵を返して出て言った。

「・・・・・・庇った従者って・・・まさかお兄様? 」

王妃様との話しで経緯がだいたい飲み込めた。今の状況からして、今にも倒れそうなお兄様はそういう事なんだろう。

「・・・・・・私がついて行かなければこんな事にはならなかったのに・・・」

「違う、お前が来てくれたから同盟の話もスムーズに纏まったんた。だからお前のせいでは無い。俺が・・・先見出来ていればこんな事は起きなかった。これは俺のせいだ 」

悔しそうに歯噛みするジャスタ殿下の言葉に少し驚く。

「先見? 」

「俺には未来を見る力がある。だが、断片的で、見えない事もある。見ようと思っても見えないし、突然見える事もある 」

「なら、ジャスタ殿下のせいでもありません。たまたま見ることが出来なかった事が起こっただけです 」

「・・・・・・そうか、・・・そうだな・・・ 」

ジャスタ殿下は私の言葉を噛み締めるように呟いた後、不意に顔を上げると、その瞳にはいつもの強気のジャスタ殿下が宿っていた。

「少し席を外す。ジル、お前も来い、国王様にお目通り願いたい 」

ジャスタ殿下は何かを思い至ったのか、お兄様を引っ張って出ていってしまった。
その後ろ姿を見送った後、レオンハルト様のベッドの横に座り込んだ。

詳しく聞くと、賊(刺客)は直ぐにジャスタ殿下に取り押さえて毒矢の事を聞き出したけど、毒の名前を言って解毒薬は持っていないとだけ言って自決してしまったらしい。
レオンハルト様は今は薬で眠らされているらしく、薬で眠るまでは酷い痛みに顔をゆがめて耐えていたと聞いた。
このまま数日で確実に死に至る薬。
今は穏やかに眠っているように見えるけど、痛みに耐えるくらいならこのまま目覚めない方がいいの?
・・・・・・そんなの嫌だ、レオンハルト様がこのまま居なくなるなんて考えたくない。
いつものように笑って欲しい。

「助ける術は無いの? 」






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