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五個目の車輪と蛇の足
ひっそり静かな生活(主観的には)***白銀の竜と
そろそろこのくらいが丁度いい季節だろうかと用意してあった部屋着用の貫頭衣は、人化したシルヴァにぴったりだった。ほんの少し袖丈が足りないだけ。やっぱり男の子だから肩幅分だと思う。
床に届いて余る長さの尻尾が、裾からゆらゆらご機嫌に振れている。
「明日、村でシルヴァのお洋服買おうね。尻尾もちゃんと出せるようになってるのがあるはず」
村には隣国の獣人たちがたくさん出入りしてるから、尻尾がでるつくりの服だって売ってるに違いない。
「ん」
「今編んでるケープはどうしよう。こっちの身体に合わせる?竜のほう?あ、でも首回りにギャザーいれて調整したら……あれ、竜に戻れるもの、ね?」
シルヴァの襟元を整えながら、ちょっと不安になって聞いたら「ん」と返ってきた。
嬉しくて嬉しくて口元がほころんでしまう。
「……う」
「ん?」
「しゃう、ぉっと」
「!!」
うまく発音できないのが悔しいと、眉間の皺と瞳が語ってる。
「あのね、あのね、だったら、ロッティ、は?」
「……ろてー」
「そう!シャルロットの愛称なの。でもロッティって呼ぶ人はいないから」
「ろてい、ろてぃ……ロッティ」
口に含んだ飴玉を大切に舌の上で転がすように、シルヴァが私の名前を呼ぶ。
案外低めの声で、ちょっと掠れてるのはまだ人の声帯に慣れていないからかもしれない。
「ロッティ」
何度も確かめるように呼んでくれるから、嬉しさがとまらない。
嬉しくて、でもくすぐったくて照れくさくて、そわそわしてしまう私の両肩に手をおいて、シルヴァは竜のときと同じに柔らかく目を細めて。
「ロッティ」
ちゅ、と微かな音を立てて唇同士がくっついた。
我が家の食卓は元々テーブルと椅子ふたつのセットだったのだけど、竜の姿の時には必要なかったから、椅子ひとつは今まで使わずに花瓶置きにしていた。
それを小さなテーブルを挟んだ向かい合わせに置いてカトラリーをとりにいって振り向いたら、ぴったり隣同士に並んでて笑う。
いつも通り一緒に食事して、一緒にお片付けして、一緒にお風呂にはいって一緒にベッドに入る頃には、シルヴァは随分と流暢に話せるようになっていた。うちのシルヴァはかわいいのにやっぱりすごい。
今夜の私の枕はシルヴァのおなかではなく、ふたつ枕を並べて向かい合わせにおでこをくっつけあっておしゃべりしてる。
「……そういえばシルヴァって、なんで森に結界はってたの?」
「ん、最初は俺、ちがう」
「そうなの?」
「ずっと前の、やつ」
そうね、シルヴァはまだ仔竜ですものね。言われてみれば。
サザンランド建国の頃からあったみたいですし。
「でもなんでかは、知ってる。俺つよい」
「うん」
「エサみんな逃げる。本気で逃げる」
「あ、うん、そうね」
かふ、とシルヴァが小さくあくびした。目尻がちょっと蕩けてきてる。
「追っかける、の、めんどくさい」
「……牧場!?」
え、ちょっとびっくりして目が覚めましたわ。
でもシルヴァはなんということはないといった感じでいるし、真の強者たるにふさわしいから当然なような気もしてきました。
「結界はる、と、そしたら魔素、たまる。俺いるし、いっぱい」
「う、うん」
「エサうまくなる」
「優良牧場!?」
そりゃ守護獣だなんて初耳なわけですよね。
王都の守護も何も普通にシルヴァが自給自足してただけですもの……。
でもあの方たちが今頃シルヴァの牧場を恐れて色々右往左往してるかと思うと、いい気分ですわね!メシウマっていうんですよ知ってますわ私!
床に届いて余る長さの尻尾が、裾からゆらゆらご機嫌に振れている。
「明日、村でシルヴァのお洋服買おうね。尻尾もちゃんと出せるようになってるのがあるはず」
村には隣国の獣人たちがたくさん出入りしてるから、尻尾がでるつくりの服だって売ってるに違いない。
「ん」
「今編んでるケープはどうしよう。こっちの身体に合わせる?竜のほう?あ、でも首回りにギャザーいれて調整したら……あれ、竜に戻れるもの、ね?」
シルヴァの襟元を整えながら、ちょっと不安になって聞いたら「ん」と返ってきた。
嬉しくて嬉しくて口元がほころんでしまう。
「……う」
「ん?」
「しゃう、ぉっと」
「!!」
うまく発音できないのが悔しいと、眉間の皺と瞳が語ってる。
「あのね、あのね、だったら、ロッティ、は?」
「……ろてー」
「そう!シャルロットの愛称なの。でもロッティって呼ぶ人はいないから」
「ろてい、ろてぃ……ロッティ」
口に含んだ飴玉を大切に舌の上で転がすように、シルヴァが私の名前を呼ぶ。
案外低めの声で、ちょっと掠れてるのはまだ人の声帯に慣れていないからかもしれない。
「ロッティ」
何度も確かめるように呼んでくれるから、嬉しさがとまらない。
嬉しくて、でもくすぐったくて照れくさくて、そわそわしてしまう私の両肩に手をおいて、シルヴァは竜のときと同じに柔らかく目を細めて。
「ロッティ」
ちゅ、と微かな音を立てて唇同士がくっついた。
我が家の食卓は元々テーブルと椅子ふたつのセットだったのだけど、竜の姿の時には必要なかったから、椅子ひとつは今まで使わずに花瓶置きにしていた。
それを小さなテーブルを挟んだ向かい合わせに置いてカトラリーをとりにいって振り向いたら、ぴったり隣同士に並んでて笑う。
いつも通り一緒に食事して、一緒にお片付けして、一緒にお風呂にはいって一緒にベッドに入る頃には、シルヴァは随分と流暢に話せるようになっていた。うちのシルヴァはかわいいのにやっぱりすごい。
今夜の私の枕はシルヴァのおなかではなく、ふたつ枕を並べて向かい合わせにおでこをくっつけあっておしゃべりしてる。
「……そういえばシルヴァって、なんで森に結界はってたの?」
「ん、最初は俺、ちがう」
「そうなの?」
「ずっと前の、やつ」
そうね、シルヴァはまだ仔竜ですものね。言われてみれば。
サザンランド建国の頃からあったみたいですし。
「でもなんでかは、知ってる。俺つよい」
「うん」
「エサみんな逃げる。本気で逃げる」
「あ、うん、そうね」
かふ、とシルヴァが小さくあくびした。目尻がちょっと蕩けてきてる。
「追っかける、の、めんどくさい」
「……牧場!?」
え、ちょっとびっくりして目が覚めましたわ。
でもシルヴァはなんということはないといった感じでいるし、真の強者たるにふさわしいから当然なような気もしてきました。
「結界はる、と、そしたら魔素、たまる。俺いるし、いっぱい」
「う、うん」
「エサうまくなる」
「優良牧場!?」
そりゃ守護獣だなんて初耳なわけですよね。
王都の守護も何も普通にシルヴァが自給自足してただけですもの……。
でもあの方たちが今頃シルヴァの牧場を恐れて色々右往左往してるかと思うと、いい気分ですわね!メシウマっていうんですよ知ってますわ私!
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