文字の大きさ
大
中
小
24 / 26
五個目の車輪と蛇の足
ひっそり静かな生活(主観的には)***白銀の竜と
そろそろこのくらいが丁度いい季節だろうかと用意してあった部屋着用の貫頭衣は、人化したシルヴァにぴったりだった。ほんの少し袖丈が足りないだけ。やっぱり男の子だから肩幅分だと思う。
床に届いて余る長さの尻尾が、裾からゆらゆらご機嫌に振れている。
「明日、村でシルヴァのお洋服買おうね。尻尾もちゃんと出せるようになってるのがあるはず」
村には隣国の獣人たちがたくさん出入りしてるから、尻尾がでるつくりの服だって売ってるに違いない。
「ん」
「今編んでるケープはどうしよう。こっちの身体に合わせる?竜のほう?あ、でも首回りにギャザーいれて調整したら……あれ、竜に戻れるもの、ね?」
シルヴァの襟元を整えながら、ちょっと不安になって聞いたら「ん」と返ってきた。
嬉しくて嬉しくて口元がほころんでしまう。
「……う」
「ん?」
「しゃう、ぉっと」
「!!」
うまく発音できないのが悔しいと、眉間の皺と瞳が語ってる。
「あのね、あのね、だったら、ロッティ、は?」
「……ろてー」
「そう!シャルロットの愛称なの。でもロッティって呼ぶ人はいないから」
「ろてい、ろてぃ……ロッティ」
口に含んだ飴玉を大切に舌の上で転がすように、シルヴァが私の名前を呼ぶ。
案外低めの声で、ちょっと掠れてるのはまだ人の声帯に慣れていないからかもしれない。
「ロッティ」
何度も確かめるように呼んでくれるから、嬉しさがとまらない。
嬉しくて、でもくすぐったくて照れくさくて、そわそわしてしまう私の両肩に手をおいて、シルヴァは竜のときと同じに柔らかく目を細めて。
「ロッティ」
ちゅ、と微かな音を立てて唇同士がくっついた。
我が家の食卓は元々テーブルと椅子ふたつのセットだったのだけど、竜の姿の時には必要なかったから、椅子ひとつは今まで使わずに花瓶置きにしていた。
それを小さなテーブルを挟んだ向かい合わせに置いてカトラリーをとりにいって振り向いたら、ぴったり隣同士に並んでて笑う。
いつも通り一緒に食事して、一緒にお片付けして、一緒にお風呂にはいって一緒にベッドに入る頃には、シルヴァは随分と流暢に話せるようになっていた。うちのシルヴァはかわいいのにやっぱりすごい。
今夜の私の枕はシルヴァのおなかではなく、ふたつ枕を並べて向かい合わせにおでこをくっつけあっておしゃべりしてる。
「……そういえばシルヴァって、なんで森に結界はってたの?」
「ん、最初は俺、ちがう」
「そうなの?」
「ずっと前の、やつ」
そうね、シルヴァはまだ仔竜ですものね。言われてみれば。
サザンランド建国の頃からあったみたいですし。
「でもなんでかは、知ってる。俺つよい」
「うん」
「エサみんな逃げる。本気で逃げる」
「あ、うん、そうね」
かふ、とシルヴァが小さくあくびした。目尻がちょっと蕩けてきてる。
「追っかける、の、めんどくさい」
「……牧場!?」
え、ちょっとびっくりして目が覚めましたわ。
でもシルヴァはなんということはないといった感じでいるし、真の強者たるにふさわしいから当然なような気もしてきました。
「結界はる、と、そしたら魔素、たまる。俺いるし、いっぱい」
「う、うん」
「エサうまくなる」
「優良牧場!?」
そりゃ守護獣だなんて初耳なわけですよね。
王都の守護も何も普通にシルヴァが自給自足してただけですもの……。
でもあの方たちが今頃シルヴァの牧場を恐れて色々右往左往してるかと思うと、いい気分ですわね!メシウマっていうんですよ知ってますわ私!
床に届いて余る長さの尻尾が、裾からゆらゆらご機嫌に振れている。
「明日、村でシルヴァのお洋服買おうね。尻尾もちゃんと出せるようになってるのがあるはず」
村には隣国の獣人たちがたくさん出入りしてるから、尻尾がでるつくりの服だって売ってるに違いない。
「ん」
「今編んでるケープはどうしよう。こっちの身体に合わせる?竜のほう?あ、でも首回りにギャザーいれて調整したら……あれ、竜に戻れるもの、ね?」
シルヴァの襟元を整えながら、ちょっと不安になって聞いたら「ん」と返ってきた。
嬉しくて嬉しくて口元がほころんでしまう。
「……う」
「ん?」
「しゃう、ぉっと」
「!!」
うまく発音できないのが悔しいと、眉間の皺と瞳が語ってる。
「あのね、あのね、だったら、ロッティ、は?」
「……ろてー」
「そう!シャルロットの愛称なの。でもロッティって呼ぶ人はいないから」
「ろてい、ろてぃ……ロッティ」
口に含んだ飴玉を大切に舌の上で転がすように、シルヴァが私の名前を呼ぶ。
案外低めの声で、ちょっと掠れてるのはまだ人の声帯に慣れていないからかもしれない。
「ロッティ」
何度も確かめるように呼んでくれるから、嬉しさがとまらない。
嬉しくて、でもくすぐったくて照れくさくて、そわそわしてしまう私の両肩に手をおいて、シルヴァは竜のときと同じに柔らかく目を細めて。
「ロッティ」
ちゅ、と微かな音を立てて唇同士がくっついた。
我が家の食卓は元々テーブルと椅子ふたつのセットだったのだけど、竜の姿の時には必要なかったから、椅子ひとつは今まで使わずに花瓶置きにしていた。
それを小さなテーブルを挟んだ向かい合わせに置いてカトラリーをとりにいって振り向いたら、ぴったり隣同士に並んでて笑う。
いつも通り一緒に食事して、一緒にお片付けして、一緒にお風呂にはいって一緒にベッドに入る頃には、シルヴァは随分と流暢に話せるようになっていた。うちのシルヴァはかわいいのにやっぱりすごい。
今夜の私の枕はシルヴァのおなかではなく、ふたつ枕を並べて向かい合わせにおでこをくっつけあっておしゃべりしてる。
「……そういえばシルヴァって、なんで森に結界はってたの?」
「ん、最初は俺、ちがう」
「そうなの?」
「ずっと前の、やつ」
そうね、シルヴァはまだ仔竜ですものね。言われてみれば。
サザンランド建国の頃からあったみたいですし。
「でもなんでかは、知ってる。俺つよい」
「うん」
「エサみんな逃げる。本気で逃げる」
「あ、うん、そうね」
かふ、とシルヴァが小さくあくびした。目尻がちょっと蕩けてきてる。
「追っかける、の、めんどくさい」
「……牧場!?」
え、ちょっとびっくりして目が覚めましたわ。
でもシルヴァはなんということはないといった感じでいるし、真の強者たるにふさわしいから当然なような気もしてきました。
「結界はる、と、そしたら魔素、たまる。俺いるし、いっぱい」
「う、うん」
「エサうまくなる」
「優良牧場!?」
そりゃ守護獣だなんて初耳なわけですよね。
王都の守護も何も普通にシルヴァが自給自足してただけですもの……。
でもあの方たちが今頃シルヴァの牧場を恐れて色々右往左往してるかと思うと、いい気分ですわね!メシウマっていうんですよ知ってますわ私!
感想
あなたにおすすめの小説
完【恋愛】婚約破棄をされた瞬間聖女として顕現した令嬢は竜の伴侶となりました。
梅花侯爵令嬢であるフェンリエッタはこの国の第2王子であるフェルディナンドの婚約者であった。
16歳の春、王立学院を卒業後に正式に結婚をして王室に入る事となっていたが、それをぶち壊したのは誰でもないフェルディナンド彼の人だった。
卒業前の舞踏会で、惨事は起こった。
破り捨てられた婚約証書。
破られたことで切れてしまった絆。
それと同時に手の甲に浮かび上がった痣は、聖痕と呼ばれるもの。
痣が浮き出る直前に告白をしてきたのは隣国からの留学生であるベルナルド。
フェンリエッタの行方は…
王道ざまぁ予定です
王妃教育の謎~婚約破棄?大歓迎です!
柚屋志宇王太子の婚約者となった公爵令嬢フェリシアは王妃教育を受けることになった。
厳しい王妃教育にフェリシアはすり減る。
しかしある日、フェリシアは気付いてしまった。
王妃教育の正体に。
真実に気付いたフェリシアは、王子と婚約を解消するために王子妃にふさわしくない行動をとると決めた。
※小説家になろうにも掲載しています。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
かわいそうな私をやめることにしました。
石河 翠ドローレスは、かつて魔物に襲われた影響で耳がよく聞こえない。そのため屋敷内でできる執務を担っていたが、社交を控えているせいで、婚約者と妹に関する良くない噂が広がってしまっていることに気づく。
婚約者と妹の不名誉な噂を払しょくしたい。そう願ったドローレスは耳の手術を受けることを決める。これですべてがうまくいくと思いきや、婚約者も妹も主人公の身体に負担をかけるようなことばかりしでかしてくる。このままでは再び耳が聞こえなくなる可能性が高い。
家族のことを思うばかり、いろいろなことを呑み込んでいた彼女だったが……。
可哀想な自分をやめたヒロインと、ヒロインが前を向けるように見守るヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:4470778)をお借りしております。
【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
【完結】今さら執着されても困ります
リリー「これから先も、俺が愛するのは彼女だけだ。君と結婚してからも、彼女を手放す気はない」
婚約者・リアムが寝室に連れ込んでいたのは、見知らぬ美しい女だった――
アンドレセン公爵令嬢のユリアナは、「呪われた子」として忌み嫌われながらも、政略結婚によりクロシェード公爵家の嫡男・リアムと婚約し、彼の屋敷に移り住んだ。
いつか家族になれると信じて献身的に尽くすが、リアムの隣にはいつも、彼の幼馴染であり愛人のアリスがいた。
蔑まれ、無視され、愛人の引き立て役として扱われる日々。
ある舞踏会の日、衆前で辱めを受けたユリアナの中で、何かがプツリと切れる。
「わかりました。もう、愛される努力はやめにします」
ユリアナがリアムへの関心を捨て、心を閉ざしたその夜。彼女は庭園で、謎めいた美しい青年・フィンレイと出会う。
彼との出会いが、凍りついていたユリアナの人生を劇的に変えていく。
一方、急に素っ気なくなったユリアナに、リアムは焦りと歪んだ執着を抱き始める。
・全体的に暗い内容です。
・注意喚起を含む章は※を付けています。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
五度目の人生でも「君を愛することはない」と言われたので、私も愛を捨てました
たると「ルチア、私は君を愛することはない。この婚約は単なる義務だ」
冷徹な公爵、アルベルトの声が夜会会場の片隅で響く。
これで、五度目だ。
私は深く、そして軽やかに一礼した。
「承知いたしました。では、今後はそのように」
これまでは泣いて縋り、彼を振り向かせようと必死に尽くしてきた。
だが、死に戻りを五回も繰り返せば、流石に飽きる。
私は彼を愛することを、きっぱりと辞めた。