幼なじみは鬼神。そして私は巫女でした

りーさん

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第一章 鬼神と巫女

第九話 尋問

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 学校に行く。
 それは、私が平日の五日間、繰り返しているルーティンである。
 学校に行って、お友達とわいわいして、授業を受けて、家に帰る。それがいつも行われている事柄だ。
 そんな事柄が、どうやらいつものようには行われないらしい。
 私は、目の前の光景に目を向ける。
 それは、私の所属するA組の様子だ。ざわめいてはいるのだけど、以前のざわめきとは別な空気を感じる。
 あれは、各々がざわめいていた感じだったけど、今は不思議と一体感を感じるのだ。

「えっと……どうかしたんですか?皆さん」

 私はこの空気にびびりながらも、おそるおそる声をかけた。
 クラスメイトの首が、一斉に私のほうを向くのは、ちょっとしたホラーだった。
 そのホラーを醸し出している中には、花音の姿もある。
 花音は、そろそろと私のほうに来て、事情を説明してくれる。

「実は、星宮さんが学校を休んだのよ」
「えっ?なんで?風邪?」

 私は、その場でぱっと思いついた休みの理由を言ってみるけど、花音はふるふると首を振る。

「なんかね、風邪じゃないみたい。意識不明らしいよ。それで入院中」
「えっ!?」

 私は、心底驚いた。
 だって、先週は普通に家に帰宅していたのだから。確かに、元気はなさそうだった。でも、それは引ったくりの被害にあって怯えていたからだと思っていたのに。
 もしかして、あのときから体調は良くなかったのだろうか?

「今日は何のざわめきだ?」

 また時間差で夜見が登校してきた。もう普通に接することはできるけど、また私の霊力が溢れたときのために、行動を変えるつもりはないらしい。
 夜見の声に反応し、無意識に夜見に視線を向けた。
 夜見も視線に気づいたようで、私と目が合う。
 夜見は、少しだけ私たちのほうに近づいてきた。
 今はお姉さんのお陰で霊力が溢れていないとはいえ、まだ警戒心は解けていないらしい。

「三咲、何かあったのか?」
「星宮さんが入院したらしいの」
「星宮……?ああ、あいつか」

 一瞬、誰だかわからなかったみたいだけど、すぐに思い当たったらしい。
 というか、覚えててやれ。あんたのファンクラブの中でも同級生の筆頭なんだから。
 さすがに星宮さんが可哀想になった私は、あることを提案する。

「夜見、お見舞いに行ってあげたら?」

 私がそう言うと、夜見は嫌そうな顔で返す。

「はぁ?なんで俺が」

 夜見はそう言うけど、私が言葉を続ける前に、星宮さんの取り巻き兼ファンクラブ会員の子が、珍しく私に賛同する。

「そうですわ!赤城さまがお見舞いに来てくださったら、きっと麗さまもお喜びになられます!」
「ぜひ私たちと共に行きましょう!」
「いや、星宮は意識ないんだろ……?」

 夜見が何とか反撃するけど、そんな弱々しい反撃でこの人たちは怯まない。

「意識があろうがなかろうが関係はないのです!麗さまのお見舞いに赤城さまがいらっしゃったという事実が大切なのですから!」
「それに、きっと麗さまも、赤城さまがいらっしゃったらお目覚めになるにちがいありませんわ!」
「そうか……?」

 夜見は戸惑っている。
 一部のクラスメイトも苦笑いしているけど、花音と私を含めた、紅月中学校出身の子たちは、日常の光景として受け止めている。
 『あっ、また始まった』という目で三人のやり取りを見ていた。
 あの二人……高田たかだ愛梨あいりさんと、いぬい佳奈かなさんは、星宮さんとは幼なじみらしく、昔からあんな感じらしい。
 星宮さんの何もかもが尊敬できるというか、崇拝できるらしく、夜見のファンクラブも、星宮さんが入っているからというのも大いにありそうなくらいだ。
 二人は私のほうに視線を向けると、クスッと笑う。

「あなたもたまにはいいことを言うじゃない」
「ええ。よろしければ、あなたにも麗さまへのお見舞いに同行する栄誉を与えましょうか?」
「はぁ……ありがとうございます」

 もう夜見は行くことは決定しているみたいな言い方に、慣れているはずの私も苦笑いしてしまう。
 二人と一緒なんて精神に大きな負担がかかることは容易に想像できたので、私は横に首を振る。

「ですが、私は花音と帰りますから、また機会があれば……」
「あら、そう?では、赤城さまは私どもと行きましょう!」
「いや、俺はまだ行くとは言ってなーー」
「さぁ、授業が始まりますわよ!」
「おい、だからーー」

 諦めろ、夜見。星宮さんフィーバーになっている二人は誰も止められないから。
 夜見が私のほうを見てきたけど、いってらっしゃいの意を込めた笑みを向けた。

◇◇◇

 放課後、なんだかんだお人好しの夜見は、乾さんと高田さんに連行されるようにそのままお見舞いに向かった。
 私は、宣言した通り、花音と一緒に下校している。
 特に約束したわけでもないのに、私の言い訳に付き合ってくれる花音は、本当に優しい子だ。

「さーて、二人きりになったことだし、そろそろ聞かせてもらおうかな?」
「聞かせてもらおうって……何を?」

 私が聞き返すと、花音は不敵な笑みを浮かべる。

「決まってるじゃん。赤城くんとの間に何があったのかだよ。私が気づいてないと思った?」

 私は、その言葉に体が硬直する。
 うすうす感じていたことではあったけど、やはり怪しまれていたらしい。

「い、いつから……?」  

 もうこの発言で、何かあったことは認めているようなものだけど、どうせ花音には下手なごまかしは通じないから仕方ない。

「そりゃあ、あんなあからさまに赤城くんを避けてたら疑うよ。で、何があったの?」
「私の一存ではお話できませんので、赤城さんに許可を取ってきてください」

 私は、他人行儀にそう返した。
 でも、勝手に話していいことではないと思う。私が巫女というのは、私がいいと思ったら話せばいいだけだけど、夜見があやかしというのは、勝手な判断で話していいものではない。
 信じてもらえないと思って話していないだけならまだしも、あやかしだというのを知られたくないという思いもあるかもしれない。

「……なんか複雑な事情があるみたいだね。なら聞かないよ」

 花音もいろいろ察してくれたのか、これ以上聞くことはしないようだった。
 花音は、こうやって人のゴシップを面白がるところはあるけど、最低限のモラルは守る。
 気になることでも、相手が嫌がれば無理に聞き出したりはしないし、人の不幸を笑ったりはしない。
 そんな優しい友だちと一緒に帰る下校の時間は、私にとっては最高の時間だった。
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