幼なじみは鬼神。そして私は巫女でした

りーさん

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第一章 鬼神と巫女

第十一話 お祓い

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 夜見は、星宮のほうに近づいていく。
 星宮の体に手が当たるほどの距離に近づいても、異形は何もしてこないようだ。

「赤城さま?」

 夜見の異様な雰囲気に、二人はそれだけ呟いて見守っている。
 夜見は、二人の声で、この部屋に部外者がいたのを思い出した。
 別に、自分のことを知られるのはいいが、三咲に迷惑をかけられたら堪らない。
 だが、この二人は、中途半端な理由では、この部屋を出ていこうとしないだろう。

(眠らせておくか)

 夜見は、二人のほうに少しばかりの妖力を送る。
 耐性がない二人に多くの妖力を送り込めば、毒となり得るため、微調整を丁寧に行う。
 夜見の視点からは、妖力がもやのように見えているが、おそらく二人には見えていないはずだ。
 もやが二人に触れると、二人はその場に倒れ込んだ。
 後は、前後の記憶を弄っておけば、特に違和感も感じないはずだ。
 改めて、星宮に向き直る。
 眠らせるくらいならば触れなくてもできるが、今回のような体の奥に入り込むような存在は、直接触れなければ不可能だ。
 夜見は、星宮の手首に触れ、微量の妖力を送る。
 祓うには異形がどこに潜んでいるのか探らなければならないが、霊力であれば、吸収される恐れがあるためだ。
 体をゆっくりと巡らせ、居場所を探った。
 そこで、夜見は違和感に気づく。まったく気配が感じ取れない。
 瘴気は感じるが、その本体を見つけられない。

(異形ではないのか……?)

 異形は、生物に憑き、力を溜め込み、瘴気をばらまくが、身を隠したりはしないため、このように探れば簡単に見つかる存在だ。
 そして、異形は分裂したりもしないため、本体が体の中にいないことはない。
 夜見が疑問に思っているうちに、送り込んだ妖力が吸収されるのを感じた。
 そこで、夜見は確信を得る。

(憑いてるのはあやかしか……!)

 あやかしは、他のあやかしの妖力を吸収できる。
 もちろん、吸収しすぎると危険なため、自分が吸える量だけだが、夜見が送った妖力は、星宮に害を与えないために、微量な量だった。あれくらいの量であれば、ほとんどのあやかしは取り込める。
 だが、それでも相性の問題がある。鬼神である夜見の妖力を問題なく取り込めるのは、夜見と同じく鬼系統のあやかしだ。
 鬼系統のあやかしであり、人に憑くことがあり、異形と近い力を持つのは一種類のみ。

(悪鬼だな)

 悪鬼は、大きく分けて二つの能力を持つ。
 人の精神に干渉し、人の負の感情を倍増させ、犯罪などを起こさせる。
 もう一つは、瘴気を発し、人の体を不調にする。
 引ったくり犯に憑いていたときは前者、星宮は後者のようだ。
 だが、本体は奥に潜り込んでしまっている。引きずり出すには、今よりも強い力で無理やり引きずり出すしかない。

(悪く思うなよ)

 夜見は、今よりも多めの妖力を送り込む。

「うっ……ぐっ……」

 妖力に蝕まれて、星宮は意識を失いながらも呻き声をあげる。
 夜見は、それを特に気にすることもなく、悪鬼を探る。
 数分探り、ようやく見つけた。夜見は、その一点に集中するように力を込めて、妖力を操り、悪鬼を引っ張る。

「うぐ……が……あっ……」

 体の中をかき回しているからか、妖力に蝕まれているのか、星宮の苦しみは増しているようだ。
 夜見は、特に顔色も変えずに勢いよく引きずり出した。
 その瞬間、星宮の周りに纏っていた瘴気は、夜見が引きずり出したものに引っ張られる。
 星宮は、自分に巣食っていたものが取り払われたからか、呻き声をあげることもなく、落ち着きを取り戻している。
 夜見は、引きずり出したものは地面に置き、星宮の様子を見る。

「もう平気か」

 別に星宮のことを心配していたわけではないが、顔色が落ち着いているのを見ると、少し安心だ。

「オマエ!ハナサナイカ!」

 引きずり出した悪鬼が暴れだす。だが、強さは雲泥の差だ。夜見の妖力による拘束からは逃れられない。

「うるさい。お前のせいで面倒な祓いをさせられてイライラしているんだ。少しは黙ってろ」
「オマエガカッテ二ヤッタコトダロ!」

 悪鬼の指摘に、夜見は素知らぬ顔をする。
 それどころか、夜見はさらに悪鬼に要求した。

「人間の姿に実体化しろ。このままでは虚空に話しかける危険人物に見られる」

 今の悪鬼は、瘴気を纏っていて、体が霧のようになっているため、姿が見えないあやかしの姿だ。
 悪鬼は、巫女のような霊能力者でもない限り、人に姿が見えることはない。だが、人の形に姿を取れば、一般人でも視認可能だ。

「ダレガオマエノイウコトナド……」
「なら、俺がやってやる」

 夜見は、悪鬼に妖力を送り込む。本来ならば、これは悪鬼に力を与えてしまうことになるが、流した妖力も制御すれば問題ない。
 先ほど吸収されたのは、流した魔力を追っていただけで、盗られないように制御はしていなかったからだ。
 ついでに、周りの瘴気も神通力で飛ばしておいた。
 ものの数秒もかからず、瘴気は失せ、子どもの姿をした悪鬼が現れる。だが、変わらず拘束したままだ。

「おまえ、なんなんだ?祓い師か?なぜ妖力をもっているんだ」

 悪鬼は、あやかしとして強い力を持っていないため、夜見の正体には気づいていないようだった。
 夜見は、特に隠すこともなく伝える。

「俺はお前と同じあやかしだ。妖力を持っているのはあやかしだから当然だろう」
「あやかしだと?なぜあやかしがボクの邪魔をするんだ!」

 悪鬼の指摘は最もだと言える。
 基本、あやかしは他のあやかしの祓いや退治を行ったりはしない。
 利害の一致で協力したりはあったとしても、邪魔立てを行うことはない。
 お互いのことには不干渉。
 それが、あやかしの間での暗黙の了解となっていた。

「お前が邪魔だったからだ。祓うのにこれ以上の理由はない」

 夜見はそう言うと、拘束を解いた。
 悪鬼は、その場を動かない。
 夜見は、座り込んだままの悪鬼を見下ろしながら言う。

「今回はこれくらいにしておいてやるが、次に俺の前をうろついたら消滅させる。どこにでも行け」
「おまえが勝手に来たくせに……」

 悪鬼はぶつぶつと悪態をついているが、夜見と争う気はなかったようで、霧化し、外へと出ていった。
 夜見は、悪鬼が出ていった窓の外を見つめる。その方向は、三咲の家の方向だ。

「消滅させるべきだったか……?」

 そう考えたが、どうせ今から家に帰るつもりでいたので、そのときにまた現れたら消滅させればいいだけだ。
 向こうも、夜見の妖力の気配を覚えているはずなので、消滅が怖ければ、向こうから離れていくだろう。
 病室から出ていこうとしたところで、夜見は眠らせた二人の存在に気づく。

「こいつらのこと忘れてたな……」

 夜見は、少し記憶を弄り、妖力を取り出して眠りを解く。
 二人が完全に目覚める前に、夜見は病室から出ていった。
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