幼なじみは鬼神。そして私は巫女でした

りーさん

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第一章 鬼神と巫女

第十二話 悪鬼がやってきた

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 家に帰って、久しぶりにのんびりとごろごろする。
 夜見は、今ごろ何をしているのだろうか。もうとっく帰ろうとしているのか。それとも意外と長居しているのか。
 夜見は、私の霊気で私がいるのがわかると言っていたけど、私はまったくわからない。夜見は、力を駄々漏れにしたりはしてないからかな?
 私は、部屋の窓から顔を出し、病院の方向を見る。

「ーーうん?」

 ふと、遠くのほうに何か黒いものが見える。
 異形の黒いもやに似ているけど、なんかちがう。見た目はほとんど同じなんだけどーーって、こっちに来る!?

「わぁっ!!」

 私は瞬時に顔を引っ込めて、窓から離れる。
 黒いものは、窓をすり抜けて、私の部屋に入ってきた。
 そして、壁にぶつかると、「アダ!」という声と共に、地面に落っこちる。
 理解が追いつかない。なんか痛そうだなという感想しか出てこない。

「えっと……だいじょうぶ?」

 それがなんなのかよくわからないけど、壁にぶつかったみたいなので、私は確認の言葉をかける。
 というか、窓をすり抜けたくせに、なんで壁にはぶつかるの?

「ナンダ、オマエモボクガミエルノカ?」

 喋ったああああ!!?
 今まで、こんな霧が喋ったりしたのは見たことがなかったため、声にならない叫びをあげてしまった。
 人って、本当に驚くと声は出ないんですね。
 でも、片言だから、何を言っているのか理解するまで時間がかかる。オマエモボクガミエルノカだから……お前も僕が見えるのか?かな。

「見えるよ。ある人いわく、私は巫女らしいから。それで、あなたは?」
「ボクハアッキダ。ミコナラシッテルダロウ」

 え~っと、僕はアッキだ。巫女なら知ってるだろう……だな。
 うん、すみません。まったくわかりません。アッキって何ですか?名前?種族?

「わかんない……かな」

 私がそう言うと、目なんて見当たらないのに、じっと見られているように感じる。

「オマエ、ホントウニミコカ?」
「だから、私は名乗ってるんじゃなくて、あやかしや異形にそう言われてるの。だから、そういうものの知識なんてほとんどないよ」

 そりゃあ、ろくろ首とか、それくらいの有名なあやかしならなんとなく想像できるけど、アッキなんて聞いたこともない。
 夜見の鬼神というのもよくわからないし。

「それで、アッキって異形の一種?それともあやかし?」
「ボクハアヤカシダ!イギョウゴトキトイッショ二スルナ!」

 どうやら、アッキにとっては、異形と一緒にされることは怒りの対象みたいだ。
 でも、見た目が異形なんだから仕方ない。

「見た目の問題だって。夜見みたいに人型なら間違えないのに……」
「ナラ、ナッテヤル」

 アッキはそう言うと、もやを圧縮し始める。
 そして、そのもやは人の形をとり始めた。
 それは、数秒ほどで人の形になる。私は予想外のその姿に固まってしまう
 その姿は、頭に小さめの角が生えているものの、それ以外は人間とほぼ変わらず、黒髪に赤い瞳を持った男の子。
 人間で例えるなら、小学生くらいだ。

「これでいいーー」
「かーわいいーー!!」

 私は、抱きつきたくなるのを堪えながら、そう叫んだ。
 抱きつかないのは、アッキがあやかしだとするなら、私の霊力が毒となりかねないからだ。
 もし霊力の問題がなければ、私は思いきり抱きついていただろう。

「な、なんだ、急に……」

 アッキのドン引きしている様子を見て、私は現実に帰る。
 危ない危ない。危うく、渡っては行けない橋を渡るところだった。

「ごめんごめん。それで、アッキはなんで私の家のほうに来たの?」

 一直線に勢いよく飛んできたところを見ると、まるでーーと思ったところで、アッキが説明してくれる。

「こちらの方角に来たのは偶然だが、移動していたのはある奴から逃げるためだ」
「逃げる?なんで?」

 私がそう聞くと、アッキは先ほどまでの出来事を説明してくれる。
 内容は、ある女の子に憑いて、その子の中でのんびりと力を蓄えていたら、あるあやかしが無理やり引きずり出したらしい。
 あやかしは、お互いのことには不干渉というのが暗黙の了解らしく、相手はそれを破ってきたとのこと。

「あなた、何か悪いことしちゃったんじゃない?」

 そのあやかしのことはよくわからないけど、暗黙の了解ならば、あやかしの間では常識なんだろう。
 その常識を破るほどならば、怒りとか恨みとか、そんな感情的になるような事柄があったんだと思う。

「それはしらない。あいつが言うには、邪魔だからだそうだ」
「えー……そんな理由なの?」

 それならば、かなり横暴だ。一体どこの誰なんだろう。
 でも、あやかしはそういうものなんだろうか。人間と一緒の感覚で考えないほうがいいのかもしれない。
 夜見にちょっと聞いてみようかな?

「まぁ、それならここにいたら?私はかまわないけど」
「ふん。巫女と一緒になんていられるか。すぐにでもーー」

 アッキは窓のほうに移動していたけど、すぐに後ろ歩きして離れる。
 そして、体を震わせ始めた。

「どうしたの?」
「奴の気配だ。同じ妖力を感じる」

 えっ?そんなのわかるの?
 私はそう思ったけど、すぐにあのときの夜見の言葉を思い出す。
 夜見は、私を霊力で識別することで、私が見えない位置にいてもどこにいるのかわかると言っていた。
 夜見ができるのなら、他にできる存在がいてもおかしくない。
 どんなあやかしなんだろうと怖いもの見たさで、私は窓から覗いてみようと窓に近づく。

「おい巫女。なにをする気だ」
「ちょっとね」

 私は、そっと窓から覗く。
 すると、人が歩いているのが見える。うん、あれは……

「夜見だ……」

 夜見は、私のほうをちらりと見る。
 私がやっほーと手を振ると、夜見はそれを無視して家のほうへと向かう。おいこら。絶対に気づいてるだろ。

「あれは夜見と言うのか?」

 アッキは、いつの間にか私の側に近づいてきて、そう尋ねてくる。

「えっ?ほんとに夜見がやったの?」
「お前よりも少し背丈が高くて、あやかしで、妖力と霊力を持ち、黒髪黒目ならそうだろうな」

 うん。すべて、夜見の特徴だ。
 妖力の話は聞いたことないけど、あやかしなら持っているだろう。
 でも、夜見がそんな身勝手な理由でアッキを退治するとは思えない。何か別に理由はあるはずだ。

「ちょっと夜見に聞いてきてみるから、あなたはここにいて」
「は?おいーー」

 アッキが何か言っていたけど、私はそれを気にせずに外に出る。

「なんだ?あの巫女ーー」

 残された悪鬼は、そう呟くしかできなかった。
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