幼なじみは鬼神。そして私は巫女でした

りーさん

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第一章 鬼神と巫女

第二十話 秘密の共有

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※間が空いてすみません!次をどうしようか悩んでいました。今日から再開します。

 郊外学習を終えて、翌日の午後の授業は、郊外学習でのレポートまとめである。
 同じ班でまとめて書くため、私たちは班で集まっている。
 ちなみに、書ききれなかったら放課後まで延長してしまうため、みんな真剣だ。

「そういえばさぁ、三咲と萩山さん、美術館で何があったの?急に距離が縮まってたけど」

 ただまとめているだけなのはつまらないのか、花音が話題を振ってくる。
 当事者である私と萩山さんは、思わず顔を見合わせたけど、すぐに花音のほうに向いた。

「う~んと……いろいろ?」
「私がちょっと……神野さんのことで誤解していただけだったので」
「なに?ファンクラブに悪口でも吹き込まれたの?」
「あっ、いえいえ。そんなことはありません。神野さんは何も悪くありませんから」

 萩山さんはふるふると首をふる。
 花音は、なぜか私のほうをじっと見てきたけど、私はレポートのほうに目を向けて、花音の無言は無視した。

◇◇◇

 放課後。レポートはなんとか書き終わったので、私はなにもすることがないのだが、美術館ではぐれていた萩山さんが終わっておらず、私と岩井くんが手伝うことになった。
 岩井くんだけでいいかなと思ったんだけど、なぜか二人が私も残れと言ってきたので、私も残っている。
 ちなみに、居残りになっているのは、私たち三人だけだ。終わったら、鍵を返すように言われているので、先生すらもいない状況。

「はぐれましたって書けばいいでしょ?」
「でも、そんなこと恥ずかしくて書けない……」
「そんな恥ずかしいことをやった萩山が悪いんだからさ」
「うう……」

 完全に岩井くんと萩山さん二人だけの空気になっていて、私は部外者どころか、いないものとして扱われているような気がした。
 それが嫌というわけではないけど、それなら私はいらなかったのでは?と思ってしまう。

「そういえば、神野さん」
「……あっ、な、なに?」

 完全に蚊帳の外だったので、呼びかけられたことに気づかず、反応が遅れてしまう。
 何か用があるんだろうか?いや、なかったら声をかけないか。

「神野さんって、赤城って人のことどのくらい知ってるんだ?」
「ど、どのくらいって……」
「結城!そんなこと聞かなくても……」

 私がどう答えようか迷っていると、萩山さんが岩井くんを制止しようとする。
 二人は、同じ中学校という関係だけではないみたいだ。なんか、私と夜見の関係に近いような気がする。

「だって、お前があの人のこと、あんな風に言ってたから……」
「そ、それはそうだけど……」
「あんな風って?」
「あ~……それは……」

 私が聞くと、岩井くんは言葉に詰まる。話しにくいことなんだろうか。
 すると、萩山さんが代わりに言葉を発した。

「……岩井くんに、赤城さまがあやかしのようだということを……相談していたんです」
「…………へっ?」

 時間を置いて、私はそれしか発言できなかった。理解が追いつかなくて。
 でも、理解が追いついてくると、私は驚愕した。

「岩井くん、夜見の正体を知ってるの!?」
「それだと、神野さんも知ってるのか?」

 私が大声を出したからか、耳を塞ぎながら岩井くんは聞き返す。
 私は、こくりと頷いて肯定した。

「うん、知ったのは最近だけど、夜見から直接」
「ふーん……幼なじみには内緒にしてたのか」
「そうみたい」

 知られたくなかったのか、聞かれなかったから話さなかっただけか、信じてもらえないと思ったのかはわからないけど。
 夜見は多分、聞かれなかったから話さなかっただけな気がする。普通、あなたって人間なの?って聞くことなんてないから、話す機会なんて訪れるわけもない。

「岩井くんはあやかしとか、そういうのは信じるの?」
「う~ん……あやかしであろうとなんであろうと、関係ないって感じかな~。人間でも嫌なやつはいるし、怖いとか思ったことはないよ」

 ずいぶんとあっさりした回答が返ってきた。
 それを聞くと、夜見のことでいろいろと悩んでいた私が馬鹿らしく思えてしまう。こういうところがあるから、萩山さんは岩井くんを信用しているのかもしれない。
 岩井くんの言うとおり、あやかしである前に、夜見は夜見なんだから、いつも通り接していればいいだけだ。
 嫌なことはいつものように嫌とか言えば、夜見も心がけてくれるかもしれない。

「あの……私も気になっていたのですが……」

 私たちに割って入るように、萩山さんが挙手をする。
 別に、そんなことしなくても話は聞いてあげるんだけど。

「なに?」
「神野さんは、霊力が制御できたのですか?できたのなら、最初から抑えてくださるとありがたかったのですが……」

 萩山さんは少しびくびくしながらも訴えてくる。私が怒ったりしないか心配しているのかもしれないけど、私の沸点はそんなに低くない。

「私はできないの。なんか、変なお姉さんが整理してくれて……」

 私は、当時のことを思い出しながら説明する。
 力の制御の知識を身につけるため、神社に行ったところ、そこにいたお姉さんが霊力を整理してくれたこと。

「怪しすぎないか?その人」
「うん、私もそう思うけど、やってくれたのは事実だし……」

 私がもて余していた力を、わざわざ抑え込んでくれたのに、不審者とかで片づけていいのかわからない。

「とにかく、それでへたに力を使ったりしなければ、特に霊力が漏れたりはしないみたい」
「……ですが、少し漏れているような気がします」
「えっ、うそ!?」

 霊力を使うようなことをやったのかと、私はお姉さんに整理してもらってから、今までのことを思い返す。
 そして、先日の侵入者への脅しに使ったのを思い出した。

「一回だけなのに……」

 私がしょんぼりと落ち込んでいると、萩山さんは私を励ましてくれる。

「だ、大丈夫です。赤城さまでも、触れなければそこまでの被害はないと思いますから!」
「逆に言えば、触れたらダメなくらいには垂れ流しているってことにならない?」

 夜見は、以前の私には近づくことさえ嫌悪していた。
 もし、触れられないくらいに漏れているなら、夜見は警戒して以前と同じくらいの距離まで離れてしまいそうだ。
 こうなったら、またあの人に頼ってみるしかない。
 怪しさ満点だけど、実力は確かなようだし。

「ごめん。私、先に帰るね」

 私は、二人にそれだけ言って、教室を出ていった。
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