転生チートは家族のために ユニークスキル『複合』で、快適な異世界生活を送りたい!

りーさん

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第三章 探る者たち

51. 協力者 1

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 どう答えるべきか。レオンのことを正直に伝えれば、この男はまた僕の家を訪ねてくる可能性もある。
 だからといって、夜中に貧民街に出入りしている理由として他に納得できる説明ができるほど僕の想像力は豊かではない。

 なら、あの方法しかないか。念のために持ってきておいて正解だった。

「話すのは構いませんが、僕と会ったことを口外しないと契約してくれますか」

 僕は貴族用の銀色のコントラクトカードを相手に示す。
 相手はぎょっとした顔で僕を見る。

「それは銀のコントラクトカードじゃないか!なぜ君が持っている!」

 男の指摘は当然のことといえる。
 銀のコントラクトカードは貴族だけが使うもの。平民の子どもが持っているようなものではない。これだけでも僕が普通の平民の子どもではないと思っていることだろう。

「聞きたいことがあるなら契約してください。そうでなければお話しすることはありません」

 僕が目をそらすことなくそう言うと、男は少し戸惑っているような様子は見せながらも、懐からコントラクトカードを取り出す。
 その色は銀色だった。こいつも貴族か、その関係者なのか。

 僕は男とカードを合わせる。

「僕と関わったことを口外しないこと」
「私の質問に嘘偽りなく答えること」

 お互いに契約内容を告げ終わる。契約しろといったのは僕だけど、僕が守る契約内容がだいぶ厳しくない?口外さえされなければ知られて困ることはないし、別にいいけどさ。

 あっと、忘れてはいけない。

「あなたも僕の話を聞くなら契約してください」

 僕は尾行していたほうの男にコントラクトカードを向ける。今約束したのは僕の家を訪ねてきた男のほうだけであって、この男は対象外。この男が口外してしまう可能性もある。

「すまないが、彼は平民だ。そのコントラクトカードでの契約はやめてもらいたい」

 平民の黒いコントラクトカードは力が弱く、銀のコントラクトカードと契約すると一方的な契約となってしまうって領主さまが言っていた。
 一方的な契約というのがどういうものなのかは知らないけど、止めに入るということはそれなりに厄介なのだろう。

「……あなたと不利な契約を結んであげたんですからこれくらいはいいのでは?」

 今気づいたけど、この契約って結構不便かもしれない。
 契約書と違って、契約内容は本人が勝手に決めて契約してしまうわけだから、とんでもない条件の契約を結ばされてしまう可能性もある。
 それとも、契約内容を告げてからカードを合わせることもできるのだろうか。

「わかった。それなら私が契約を行うから、君は仕舞ってくれ」
「……仕方ありませんね」

 僕がカードを仕舞うと同時に、契約を行ってくれている。内容は自分の指示に従うという内容だけど、これで僕のことを口外するなという指示に逆らうことはないだろう。
 怪しい黒いフードの人物ということで警戒心を抱いていたけど、話は通じるようだ。

「これで問題ないだろう。話してくれ」
「まずは何からお話ししましょう」
「君がここに来た理由と、銀のコントラクトカードを持っている理由から話してくれ」

 僕がここに来た理由に関しては予想ついているだろうにと思いながらも、僕は一から説明をする。
 レオンが失踪し、この建物から見つかったこと。犯人が捕まっていないのでその手がかりを探しに来たこと。領主さまの指示で銀のコントラクトカードを持っていること。

「なぜ領主はそのような指示を?」
「わかりません。スキルの詳細が見られるためという話を神官から聞きましたが、それだけです」

 嘘はついてない。おそらくはユニークスキルや『複製』に関したりすることだろうけど、はっきりと言われたわけではない。
 嘘偽りなく答えているので契約違反でもないし。

「スキルを見せろというなら、お二人の者も見させていただきます」

 僕が先手を打つと、ちょうどそのことを聞こうとしたのか、開きかけていた口が閉じる。僕に情報を知られたくはないようだ。
 僕は『契約』によって男の質問に嘘偽りなく答えないといけないのだから、聞けばいいだけなんだけど、そうしないだけの良心はあるのか、それとも気づいてないのか。

 どちらにしても、悪知恵が働くようなタイプではない。レオンを誘拐したのは、この人たちではなさそうだ。
 だとするなら、一体誰なんだろう?黒いフードの集団以外で不審人物の話は聞かなかったけど。

「事情はわかった。ならば、我々に協力してもらいたい」
「……何でしょう」

 僕が警戒しながら聞き返したことに気づいたのか、男は安心させるような声色と言葉遣いでいう。

「そう難しいことではない。この建物の案内を頼みたいんだ。一度入ったのなら覚えているだろう?」
「……あなた方と一緒に入るのですか?」

 もしこの男が貴族なら、僕の貴族式話法に気づくだろう。
 契約をかわして情報交換をしたとはいえ、僕からすれば男たちはまだ得体の知れない存在。レオンを誘拐した者ではないとしても、敵ではないとわかったわけではない。
 拓けているような場所ならともかく、四方を囲まれた建物の中に入りたくはない。僕と関わったことを口外しないという契約は交わしたけど、危害を加えないという契約は交わしていないのだから。

「君にとって悪いことではないはずだ。我々と目的は同じなのだから」
「志が違えばいらぬ諍いを招きましょう」

 敵の敵は味方というのはフィクションだから通じるのであって、共通の敵がいようと協力してくれるとは限らない。
 僕は家族がこれ以上危険な目に合わないためにレオンを誘拐した者たちを捕えたい。その過程でこの人たちが家族に手を出したりしないと断定できる根拠は何もない。
 本来なら危険な場所から遠ざけるべき子どもに道案内させようというのだ。手段は選ばない可能性がある。僕に言うことを聞かせるために家族に手出しする可能性は充分にある。

「……君は何歳だ?」
「六歳ですけど」
「とても六歳とは思えん言動だが……」

 まぁ、前世は二十年以上生きてきましたしね。でも、この世界では生まれてからまだ六年しか経っていなくて、家族が大好きな子どもだから、こういう反応をされるのは複雑だ。

「君の言いたいことはわかった。ならば、危害を加えないという契約をしても構わない」
「……わかりました。あなただけなら構いませんよ」

 さすがに大勢をぞろぞろ引き連れたくはないけど、それなりに話が通じそうなこの男だけならいいだろう。
 建物の案内を頼むということは、この建物が危険かもしれないという意識はあるということだ。そんな中で建物の構造を把握している僕をどうこうするとは思えない。

 僕の言葉に男は即答した。

「わかった。私だけがついていこう」
「それはーー」

 僕を尾行していた男が何か言いかけていたけど、貴族らしき男に手で制止される。

「この子どもは奴らの手の者ではない。二人きりになったところで問題はない」

 奴ら……?それがレオンを誘拐した者たちなのだろうか。

「では、案内してもらえるか」
「わかりました。こちらです」

 僕は男を連れて建物の中に入った。
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