15 / 34
haze
2-8
しおりを挟む
昂良がキスをしてきたのは、内玄関に入った直後の事だ。
彼のスキンシップはいつも急だが、今回ばかりは流石に驚く。しかしそれも一瞬の事で、朔斗は直ぐに自分から口を開いた。熱い舌が上顎の裏を舐める。見送る時よりもずっと激しい口付けに、早々と息があがった。
靴も脱がずにここでするつもりなのだろうか。コンドームとローションを常備している昂良なら、十分に有り得る。
考察し、口が離れたタイミングで彼を制止する。
「……待って、とりあえず荷物置いてこよう」
「その唾付けたまま?」
イタズラっぽく言われて、先程までの熱も一気に冷める。朔斗は返事をせずに、無造作に唾液を拭った。
二時間ほど空けた居間は、すっかり冷え切っていた。購入した弁当を机に置く。その数秒間、ずっと据えられていた視線に、自身の視線を返す。
「昂良も荷物下ろして、それからコートも脱いで」
彼は朔斗から視線を離さずに、荷物を下ろして、コートを脱いだ。
昂良は基本的に朔斗に対して従順だ。まるで小さな子供のように、言われた通りにする。ただし、それはセックスの時を除いての話なのだが。
「朔斗、良い匂いするな」
「行く前にシャワー浴びたから」
「もしかして準備してくれてたとか?」
朔斗は押し黙った。ここですぐに頷いてしまったら、自分が行為に対して乗り気になっていると勘違いされるに違いない。けれども『昂良がすぐしたいと思って』と口にするのも何だか癪に障る。
以前、朔斗が風邪を引いた時のことだ。咳と鼻水が止まらなくなって、とてもじゃないがセックス出来る状態では無かった。やむを得ず約一週間の“お預け”を食らった昂良は、病人の真横でずっと『やりたい』とぼやいていた。
その経験から――――出先で他の誰とも行為に及んでいなければ――――どうせ今回も性欲を溜め込んでいるのだろうと予想したのだ。
昂良に求められれば直ちに受け入れられるよう、いつもする準備のタイミングを早めた、ただそれだけの事だ。
彼は甘い視線で返事を催促する。仕方なく、まぁ、と小さく答える。
「じゃあ飯食う前にやろうぜ」
この台詞を何となく、予想していた。先に寝室へ向かう昂良の背を見て、鼓動は僅かにリズムを変えた。
彼のスキンシップはいつも急だが、今回ばかりは流石に驚く。しかしそれも一瞬の事で、朔斗は直ぐに自分から口を開いた。熱い舌が上顎の裏を舐める。見送る時よりもずっと激しい口付けに、早々と息があがった。
靴も脱がずにここでするつもりなのだろうか。コンドームとローションを常備している昂良なら、十分に有り得る。
考察し、口が離れたタイミングで彼を制止する。
「……待って、とりあえず荷物置いてこよう」
「その唾付けたまま?」
イタズラっぽく言われて、先程までの熱も一気に冷める。朔斗は返事をせずに、無造作に唾液を拭った。
二時間ほど空けた居間は、すっかり冷え切っていた。購入した弁当を机に置く。その数秒間、ずっと据えられていた視線に、自身の視線を返す。
「昂良も荷物下ろして、それからコートも脱いで」
彼は朔斗から視線を離さずに、荷物を下ろして、コートを脱いだ。
昂良は基本的に朔斗に対して従順だ。まるで小さな子供のように、言われた通りにする。ただし、それはセックスの時を除いての話なのだが。
「朔斗、良い匂いするな」
「行く前にシャワー浴びたから」
「もしかして準備してくれてたとか?」
朔斗は押し黙った。ここですぐに頷いてしまったら、自分が行為に対して乗り気になっていると勘違いされるに違いない。けれども『昂良がすぐしたいと思って』と口にするのも何だか癪に障る。
以前、朔斗が風邪を引いた時のことだ。咳と鼻水が止まらなくなって、とてもじゃないがセックス出来る状態では無かった。やむを得ず約一週間の“お預け”を食らった昂良は、病人の真横でずっと『やりたい』とぼやいていた。
その経験から――――出先で他の誰とも行為に及んでいなければ――――どうせ今回も性欲を溜め込んでいるのだろうと予想したのだ。
昂良に求められれば直ちに受け入れられるよう、いつもする準備のタイミングを早めた、ただそれだけの事だ。
彼は甘い視線で返事を催促する。仕方なく、まぁ、と小さく答える。
「じゃあ飯食う前にやろうぜ」
この台詞を何となく、予想していた。先に寝室へ向かう昂良の背を見て、鼓動は僅かにリズムを変えた。
応援ありがとうございます!
21
お気に入りに追加
127
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる