チート級に強い彼女の力の源は愛でした

てぃあな・るー

文字の大きさ
6 / 8
サラ・ローゼトーテ

4

しおりを挟む
「そういえばさ~」
 2層に入ったところでティルナがサラの周りを飛びながら言う。美味しそうな果実を食べている。
「サラのあの魔法、なんなの?」
「ああ、あれ?」
 目の前の岩を軽く飛び越えながらサラはひょいと首を傾げた。
「確かね…霊獣召喚サモンバーストとかそんな感じのやつ!ぼ…私の村に古くからあるっぽいよ!」
「サモンバースト?!」
「正確には武器に霊獣が宿ってる、っていうか…ほらほら」
 サラは腰の白い大きなベルト(ベルトを閉めているというか、ぶら下げていると言った方が正しい)を指す。金色の玉が3つくっついている。
「これがそう。だと思う」
「えっ絆玉?!」
 今度はセシルが割って入る。
 男3人は前を歩きながらそっと耳をたてた。
「これ、絆玉じゃないです。あなたの目は節穴なんですか?みんなのを見てご覧なさい。そもそも色が違う」
「えっそうなの?!あ、ほんとだ」
 セシルは得物の絆玉を掲げ、サラがびっくりしてのぞき込む。
「へぇ~。ぼ…私の村ではこの得物たちが祀られててね、数十年に1度の確率でどれか一つと絆を結べる人が現れるんだって。それが私、全部とできちゃったんだ~」
 けろっと言いやがる。
「そんでしきたり通りにこの子達と森やら山やら駆け回ってきたの~グラストは昨日貰ったんだ」
「そういえば、レベルは幾つなのですか?」
「え、どうやって見るの?」
「……貸しなさい」
 セシルはサラのグラストをいじり、空中に情報が映し出されるように設定する。
 いそいそと男3人も、寄ってくる。
 最初から話に加わっていれば良かったものを、とセシルが呟くが無視無視。
「レベルはっと…」
 セシルがステイタスの画面を開く。
「「は?!」」
 一番近くで覗いていたリルファナとギンダルが目を見開く。
 釣られるように他のメンバーも見やる。
「「はぁッ?!」」
「ぶふぅッ?!」
 キルアとセシルも奇声をあげ、ティルナにいたっては口いっぱいに頬張っていた果実を噴き出した。
 ぎゃあぁぁっとサラの悲鳴が散るが、今はそんなことではない。
「「「「「チートかよッ!!!!」」」」」
 サラのレベルは9。昨日の今日でこのレベルはチート以外何物ではないだろう。
「サラ、本当にグラスト昨日貰ったの?!最初Lv1だったよね?!」
 セシルは敬語さえ忘れ去っていた。
「そうだけど、皆どうしたの?」
「うわあああああチートだああチートがいるううぅ」
「それをいうなら昨日の魔法からチートだっただろ、ギンダル」
「冷静になるなキルアの生意気小僧おおぉぉ!」
「それにしてもウェアウルフの威嚇スレットってすごいね!2層じゃあもうモンスター来ないじゃん!」
「話を逸らすなあああぁぁ!お前の話だサラァッ!」
 ギンダルが喚く中、セシルとリルファナは額を合わせていた。
「リルファナ、どうしますか?サモンバーストのことといい、他の冒険者たちに公表しない方がいいのではないでしょうか」
「俺も、そう思う。下層でつかわれると、面倒だから、上層限定で使ってもらおう」
「了解です」
 確認し合い、頷く頭脳派。
 脳筋派はまだわちゃわちゃしている。
「ね、ギンダル、あっちの方がやけに明るいのはなんで?」
「あ、はい、もう1層だからです」
「え、じゃあ出口?」
「そうです」
「なんで敬語なの?」
「なんでだろ?なんとなく?」
「変なの」
「……」
 ごっついくせにナイーブなギンダルはかなりブルーに。
 そんなことに気づかないサラは出口に走っていこうとする。
「「まてまてまて」」
 キルアとリルファナがぐいっと引き止める。
「「およっ?」」
 あまり人に干渉しない、ましてや知り合って間もない人に自分から話しかけるキルアにには敏感なギンダルとティルナがにやっとする。
「え、なんで?」
「もう、出口だから」
「えわかんない」
「まあ、出たら、分かるから」
 話している間にもリルファナが華麗な手さばきでサラの長く、ぼさぼさな髪を整えていく。アホ毛もなんとかしまい込む。
「ぼ…私わけ分からないよ!なんで!」
「出たら分かるから少し黙っとけ」
 キルアはぶっきらぼうに言う。
「それから…」
「なに?!」
「無理して私、と言うこともないんじゃないか?」
 ぎく、と固まり、上目遣いでキルアを見上げる。
のこと、変に思わない?」
「思うわけないだろう。」
 キルアはわしゃっとサラの頭を撫でた。しまったアホ毛が飛び出す。
「よし、じゃあ、行こうか」
 リルファナが歩き出すと、残りのメンバーもそれにならう。
 澄ましたように顔を決めているギンダルとティルナだが。
『『キルア、サラに惚れてるキタァー!!』』


 サラはリルファナ・ダンパの最後尾につき、ダンジョンの出口へと歩いていった。
 リルファナたちがどんどん光の中に吸い込まれていくような錯覚。サラも光の中に踏み込むと、明るすぎる光が目をさす。
 目を瞬かせながら進むと…わあっ!と、歓声が上がる。
「お帰りなさい、リルファナ・ダンパ!!」
 思わず、はたと立ち止まった。
 そこには沢山の人々が。出てきた彼らを取り囲む。
「リルファナ様、おかえりなさぁい!お怪我はございませんかぁ?」
「だ、大丈夫、です…」
「セシル様、こちらを向いてくださいッ俺を御身の下に引いてくださいぃ」
「恥を知りなさい、ゲス野郎。こちらにこないでください」
「マイラブリーティルナちゃーん!!」
「いえーい!ティルナだよー!」
「キルア君、今日も可愛い!むっつり素敵!」
「…」
「ギンダルにぃちゃん!今回のお土産なあに!!」
「おう、お前ら!ほら見ろよこれ!クラウドバードのクラウドフェザーだ!」
「え、ださ。もっとカッコイイのがいー!!」
「………」
 色気を漂わせる風妖精フェアリー、たくさんの獣人シアンスロープ、子供たち。珍しいことに人間ヒューマンの姿も多い。
 そんな中でも彼らは(一人除き)堂々と、胸を張っている。サラの目には彼らは目を刺した陽の光より輝き、眩しく思えた。
 自分とは、違う。
 サラは余計出にくくなった。が、
「サラ、おいで?」
 リルファナがすこし微笑んで手を伸ばした。
 サラは恐縮しながらリルファナに駆け寄る。
 途端にざわめく周囲の人々。空気が少し張り詰める。
「新入りか…?」
「胸でかッ」
「小さいな…リルファナ・ダンパに見合う実力があるのか?」
「細すぎやしねぇか?すぐモンスターにやられそうだ」
「胸でかッ」
「リルファナ様がスカウトしたの?あの娘、小賢しい真似でもしたのかしら」
「胸で
「「うるせぇーよッ!!」」
 一人がズバンッと思い切り叩かれる。
 どっ、と笑いが起こり、空気が一気に和らいだ。
「彼女は、サラ・ローゼトーテ。新しくリルファナ・ダンパに入った、ニューメンバー。ダンジョンで、俺がスカウトした。みんな、よろしく」
「サラです。よろしくおねがいしますッ」
 サラはばっと頭をさげた。長い髪がぶんっと前に飛び、周囲の人に襲いかかる。
「うおぁっ?!」
「いてぇ?!」
「わあああああごめんなさいッ!!」
 サラが悲鳴に近い声で謝り、また笑いがおこる。
「お前可愛いなあ!ほれ新入り、これ持ってけ!」
「えっありがと!」
「私からもこれをあげるよ!」
「ええっ?!」
 サラにどんどんと食べ物やら衣服やらが渡されていく。
「サラちゃん、ティルナちゃんよりボンキュッじゃねぇか?!」
「まて、そもそもティルナちゃんはキュッキュッだろ?!」
「こらああああ!!お前らそれを言ったらいけないだろおおお!!」
「すみませええぇん!!」
 暖かい空気に包まれ、サラはにこやかにニューメンバーとして迎えられたのだった。

「僕、リルファナ・ダンパでよかったあ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...