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第2章 幼年編
429 それぞれの対応〜ノッカ村(のんのん村)
しおりを挟む「チャンちょっといいか?」
「ん?どうしたニャンタ」
「あいつらから話はあったか?」
「ん?あいつら?なんのことじゃ?」
「やっぱり‥‥」
「実は昨日な‥」
昨日「ダム」の開閉門を開けた村人を目撃したこと。その直後に魔獣に襲われていたので彼らを助けたこと。すぐに村長に話をしろと言ったら了解して逃げ帰って行ったこと。開閉門は壊されてかなりの量の水が放出されたこと等々を話すニャンタ。
「あいつらか‥‥」
「ああ‥‥」
「神父様もシスターナターシャもいない。これはいよいよわしらの村の問題をわしらが解決せねばならぬっていうことじゃな」
「ああ‥‥」
「よし。今夜主だった村の仲間を集めてあいつらから直接話を聴こう」
▼
その日の夜。村の集会所に集まる主だった役員15人と問題の4人が呼ばれた。
「お主らなぜ呼ばれたかわかるか?」
「「「「わからん!」」」」
「「「‥‥」」」
「昨日ダムの開閉門を勝手に開けたそうじゃな?しかもその直後を魔獣に襲われていたのを助けられたそうじゃな?」
「「知らん知らん!」」
「「ダムになど行っておらん!」」
「「魔獣にも襲われておらん!」」
「「そこの獣人ニャンタの嘘だ!」」
「「「そうだそうだ!
」」」
「お主ら村から出とらんのか?」
「「出とらん!」」
「「全部そこの獣人ニャンタの嘘だ!」」
「「「そうだそうだ!」」」
「そうか‥‥村から出とらんのじゃな」
「「「そうだ!それはニャンタの嘘だ。獣人は嘘ばかりをつくんだ!」」」
「「「そうだそうだ!」」」
「獣人は嘘ばかりをつくか。
よいかお主ら。まずわしはニャンタとは一言も言うとらんぞ」
「「「ハッ!!」」」
「その上で言うぞ。まず村から出たか出とらんかは門を守る騎士団員様の記録を見ればわかるぞ。
騎士団員様は真面目に我らを守って下さっておるからな。
時計のおかげで何時に誰が出て誰が帰ったのかもわかるぞ?」
「「「‥‥」」」
「それから魔獣に襲われとらんのなら、お主とお主、腕を見せてみい。噛まれた跡はないのじゃな」
「「「そ、そ、それは‥‥」」」
「よいか。この村は以前大勢の盗賊団に襲われとる。村の方針に逆らった者が中から手引きをして門を開けたからの。
だからそれ以来村人の絆は深いんじゃ。
仲間のニャンタの言うことを疑う者などここにおる者には1人もおらん。お主らのように獣人と言って差別する奴ら以外はな」
「「「ううっ‥‥」」」
「お主らは決まりを破ってダムの開閉門を勝手に開けたんじゃな」
「ち、違う。畠が渇ききっとるから水をやらないかんだろう!」
「そ、そうだ!それで門を開けて何が悪い!」
「俺たちが危険な魔獣に襲われながら門を開けてやったんだ!」
「「「そうだそうだ!」」」
「「「‥‥」」」
「皆どう思う?」
15人ほどの村人全員が天を仰いだ。
「話にならん」
「問題外じゃ」
「嘘がバレても平然と新たな嘘をつく」
「差別もしとる」
「俺も獣人だが気分が悪い」
「ああ人族でも気分が悪い」
「こんな奴らは追放だ!」
「ああ追放だ!」
「「そうだ追放だ!」」
「「「追放だ!」」」
「見てみい。これが村の総意じゃ」
ーーーーーーーーーーーーーーー
みんなは米1粒を種籾として植えればどのくらい増えるか知っているかな?
けっこう増えるんだよ。1粒の米が400粒にもなるんだ。
茶碗1杯1合のお米はだいたい150gで6500粒くらいって言うんだ。
今回デニーホッパー村のヨゼフ父さん、ニールセン村、のんのん村で栽培をお願いした稲。上手くいけばそれぞれ1反で400㎏くらいは採れるんじゃないかなって思ってるんだよね。
人族と狸獣人の半々が住むのんのん村の場合。
シスターサリーが休養日の教会ミサのあとみんなに話す。
「ヴィンサンダー領全体で春から雨が降ってないわよぉ。どこも干ばつでたいへんなのよぉ。収穫もぜんぜんないんだってぇ」
「「「そっかぁ‥」」」
教会ミサに参加しているのんのん村の村人みんなからため息とも安堵の声ともつかぬ声が漏れ出る。
「うちの村は幸せよねぇ。みんな」
「「「はいシスターサリー!」」」
「シスター、デニーホッパー村とニールセン村は大丈夫かなあ?」
「みんなどう思うのぉ?」
「「「絶対大丈夫だよ!」」」
「「「だって‥‥」」」
「そうよぉ。3村だけは干ばつの大きな被害を免れてるわよぉ」
「「「おぉー!!」」」
大きな歓声と拍手が起こる。
「雨が降るまで油断せずに畠を耕すんだよぉ」
「「「はいっ!」」」
元々地質が良かったノッカ村。そこに勤勉な性質を持つ狸獣人と人族がよく協力をした結果は明らかだった。
ヴィンサンダー領全体で干ばつの被害は甚大となった。
雨が降らない。降らないことによる農地の乾燥。乾燥が生み出す干ばつや火災。
荒廃した農地は人々の心も荒んだものにした。それは各地の農村から始まって街にも拡散していった。盗み、略奪も各地で起こり始めたのだ。
この負の連鎖がのんのん村には起こらなかった。それは深く掘り直した井戸と山の上流に造った貯水池の恩恵である。
25mプール4面の大きさがある貯水池は本来の湧水能力に加えて水の精霊ウンディーネに愛された故に、その水が永く枯れることがなかったのである。
こんこんと湧き出る水は高低差のある流れとなって各家々、津々浦々の畠に行き渡ったのである。
そしてそれは特に多くの水を必要としたポンコーの水田でさえも枯れなかったくらいに。
デニーホッパー村、ニールセン村、ノッカ村(のんのん村)3村では1番渇水の被害が少なかったのがノッカ村であった。
ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン
石造の平家建村舎の上に立つ時計塔から夕暮れの5点鐘を知らせる鐘が鳴った。
「今日も終わりだー!」
「次の休養日はデニーホッパー村に温泉に行く日だな」
「「「楽しみだなあ」」」
「ポンコー、そろそろ米の収穫だよな」
「ああ豊作だよ!」
「「「よかったなぁ」」」
1反400㎏も収穫できれば上々とアレクが思っていた米。
のんのん村では500㎏と大豊作となったのである。
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