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第2章 幼年編
430 楽しい毎日
しおりを挟む「どうじゃお主ら。まだ弁解することはあるか」
「「「くっ‥‥」」」
「本来なら即刻この村から出て行ってもらうんじゃが‥‥今度だけは許す」
途端にほっとした表情になる4人。
「「「おいおい村長それはないぞ!」」」
「こいつら決まりを破ったんだぞ!」
「こんな奴ら村に置いといたらダメだ!」
「即刻放逐だ!」
「「「そうだそうだ!」」」
逆に村の役員たちからは反対の声が上がった。
「こんな奴らはいずれ大きな問題を起こすに決まっとる!」
「ああ。すぐに放逐だ!」
「「「賛成!」」」
「1度だけじゃ。みんな頼む。今回1度だけわしの顔を立ててはくれんか?頼む」
「「「‥‥」」」
結果からいえばこのときの4人はチャン村長の願いもあって許されたんだ。
でもこれが後々にさまざまな影響を村に及ぼすんだ。
チャンおじさんのこの決断(英断)がもたらす結果をまだ誰も知らないんだ。
七転び八起き、人生サイオーが馬だっけ?人生は何が起こるかわからないんだよね。
この話なんかまさにそうだ。
みんなが仲良くずーっと楽しい毎日が続けば嬉しいんだけどね。
後からこんなことがあったって俺はジャンから聴いたんだ……。
▼
米はどこもちゃんと採れたよ。とくにのんのん村なんかは豊作って言ってもいいんじゃない?1反あたり500㎏だもん。来年はこの4倍の水田、再来年は
15、6倍の水田。予定通りにいけば、3村ともすぐに村人全員の1年の食を賄えるはずなんだよね。
ーーーーーーーーーーーーーー
披露宴で毎日のようにご領主様のお屋敷に行ってたからね、その後もモーリスと過ごすことが増えたんだ。
今日もね……。
「なんだモーリス今日も『お出かけ』かよ?」
「ああ。帝国で出た新作の◯◯◯と◯◯◯の具合を試してみたいからな」
鏡の前で化粧をしながらモーリスが答えた。
そう、モーリスは趣味の女装を俺たち仲間の前では隠さなくなったんだ。今も俺とセバスの前で化粧してるし。
ああ、◯◯◯とか◯◯◯とかの名前はわかんねぇ。だって俺化粧品も服も興味ないから。女の人の着る服の名前はスカートとドレス以外の名称さえも知らないし。
「ところでアレク。お前の趣味って何なんだ?」
「えっ俺?うーん‥‥」
「モーリスは女装だろ?」
「ああ。俺はこれ1択だな。いかに美しく見えるのかが俺自身の永遠の課題だ」
「アーソウデスカ。ヨカッタデスネー」
モーリスの趣味は完全な美の追求らしい。だからレベッカ寮長みたいな不思議な性癖は分からないけどあの化粧法は参考にしているっていつも言ってる。
「セバス、お前の趣味は何だ?」
「俺か?俺の趣味は決まってる。モーリス様の素晴らしい成長をお側で見続けること、この1択だな」
「アーソウデスカ。ヨカッタデスネー。セバスはモーリス大好きだもんな」
「当たり前だ!」
「「お前(アレク)はどうなんだ?」」
「俺?うーん‥なんだろ?」
「剣か?」
「剣は大好きだけど趣味じゃないなぁ」
「魔法か?」
「魔法も大好きだけど趣味じゃないなぁ」
「料理か?」
「うーん。趣味じゃないんだよね‥」
「「わかった!!」」
モーリスとセバスが声を揃えて言ったんだ。
「「獣人の子どもの匂いを嗅ぐことだろ!?」」
「あーそれはそうかも‥」
「「やっぱりな‥‥」」
「アレク、俺の女装も人にはあんまり言えない趣味だがお前のそれは絶対に人には言えないからな!」
「なんでだよ!?」
「それはな誰が聞いても同じ反応をするからだ!」
「それって‥‥」
「「ああ」」
「「「変態だ」」」
「でもさ、趣味ってやめられないんだよなぁ」
「「そうだな‥‥」」
▼
冬休みまではミューレさんところにも行ってたよ。
ドワーフのミューレさんはヴィヨルド領刀鍛冶の至宝という2つ名もあるくらい、お兄さんのヴァルカンさんと2人、中原中にその名を知られた刀鍛冶の名工なんだ。
暑くて(熱くて)辛くて地味な仕事って世間では言われてるけど、俺好きなんだよね。あの雰囲気が。無心になれるんだ。
「アレク君今年は残念だったね」
「うん。あっという間に終わっちゃったもん」
「来年に向けて、まずは自分の防具から作ってみたら?」
「そっか。まずは自分の防具からか」
「ええ。まずは自分の防具からね」
ミューレさんの工房を借りて俺は自分自身の防具から作り始めたんだ。
この防具作りは最終的に6年1組になった最後のダンジョンで活きてくるんだ。
▼
そういや教会のバザーにも参加できたんだよ。コーエン神父様も喜んでくれたし。
「今年はアレク君も参加してくれるんだね」
「はいコーエン神父様。俺も今年は頑張りますね!」
去年のバザーで大人気となったシナモン焼は今年もすごい人気だったよ。何せ焼く前から行列になってたから。
「シナモン、めっちゃ手つきがいいよな」
「にゃぁー」
1年ぶりに焼くというシナモン焼をシナモンは慣れた手つきで焼いてたんだ。
バザーは大成功だったよ。
こんなふうに楽しい日々を俺は過ごしてたんだ。
そして冬休みの前。
「アレク君指名依頼が来てるわよ」
それは護衛依頼の件だった。
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