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episode 5
彼女の刃
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私の背に回っていた柴垣くんの腕がゆっくりと解かれる。
柴垣くんの胸から頬が離れると、なんだかまた心が離れていくような気がして。
なかなか動くことができなかった。
「スマホ…鳴ってるぞ」
「……うん」
名残惜しい空気を断ち切ってスマホを取り出すと、コールの主は。
「津田さん……」
このタイミングで津田さんだなんて…。
出ないわけにもいかず、私は慌ててスライドして耳に当てた。
「はい、三崎です」
『あ、津田です。ごめんね、今、大丈夫?』
チラリと柴垣くんを見上げると、すぐ側にいる彼には聞こえているようで、苦笑しながら頷いた。
「大丈夫です。先程はありがとうございました」
『それは大丈夫だよ。柴垣のサポートのおかげでスムーズに進んだからね。それよりも…』
「……」
『三崎さんが落ち込んでないか気になって』
「わざわざすみません。もう大丈夫です。ちゃんと明日は切り替えて出社しますので…」
上司の心配が有り難くて申し訳なくて。
心配かけまいとそう答えた。
『ごめん。間違い』
「え?」
『本当は俺が三崎さんの声を聞きたかっただけなんだ』
津田さんは上司のトーンとは違う、とても優しい声で私にそう言った…。
柴垣くんの胸から頬が離れると、なんだかまた心が離れていくような気がして。
なかなか動くことができなかった。
「スマホ…鳴ってるぞ」
「……うん」
名残惜しい空気を断ち切ってスマホを取り出すと、コールの主は。
「津田さん……」
このタイミングで津田さんだなんて…。
出ないわけにもいかず、私は慌ててスライドして耳に当てた。
「はい、三崎です」
『あ、津田です。ごめんね、今、大丈夫?』
チラリと柴垣くんを見上げると、すぐ側にいる彼には聞こえているようで、苦笑しながら頷いた。
「大丈夫です。先程はありがとうございました」
『それは大丈夫だよ。柴垣のサポートのおかげでスムーズに進んだからね。それよりも…』
「……」
『三崎さんが落ち込んでないか気になって』
「わざわざすみません。もう大丈夫です。ちゃんと明日は切り替えて出社しますので…」
上司の心配が有り難くて申し訳なくて。
心配かけまいとそう答えた。
『ごめん。間違い』
「え?」
『本当は俺が三崎さんの声を聞きたかっただけなんだ』
津田さんは上司のトーンとは違う、とても優しい声で私にそう言った…。
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