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第2章 龍戦争編

第2話 ゲートを抜けて

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 チベットの 樟木ヅァンムー鎮にあるゲートに向かった。安全な影の世界を移動した。
「はぁ、結構動いたからお腹が空いたよ」
「待ってました」
 来夢はウキウキだ。かつては満たされない食欲の為に、手当たり次第に飲み込んでいた。しかし今は、瑞稀とのイチャイチャで心は満たされ、食欲は瑞稀が魔法で出す美味しい食べ物によって満たされていた。
上菜シィアンツァイ
 瑞稀が『魔法箱マジックボックス』から取り出したテーブルの上に、一瞬で料理が並んだ。
 唐揚げ、豚汁、焼き鮭、オムレツにハンバーグ、酢豚や卵焼き等、和洋中の食事が並んだ。勿論、私はこんなに食べられない。来夢の為に出したのだ。
 自分が食べる分を少しずつお皿に種類を取り分けた。残りは全て来夢に消化される。
「瑞稀の出す料理は美味しくて、しかも好きな人との食事は楽しいね」
 来夢には性別が無い為、男にも女にも自由に姿を変える事が出来る。今の瑞稀は女性である為、来夢は男性の姿になって瑞稀を抱く。抱いても精子など出ない為に、瑞稀の性欲が満足するまで抱いてあげるだけだ。来夢は瑞稀と肌を合わせているだけで心が満たされて満足している。
「ふぅ~食べた、食べた…」
 食事が終わると、決まって来夢と食後の運動を行う。つまりエッチする。
「あぁん、いい…来夢、来夢…イっちゃう…気持ちいい…はぁん、あん、あん、イクっ、イク、イク、イクぅっ…」
 来夢は、瑞稀の感じるポイントは把握しているので、集中的に攻め絶妙なタイミングで、リズムよく腰を動かしてあげる。
「気持ち良かった?」
「うん、来夢…愛してる…」
 抱き合って唇を重ねると、生きている実感が湧いた。幸福感で心が満たされて行く。それでも1回イったくらいでは満足出来ない。
「もっと…もっとちょうだい…」
 来夢は体位を変えると、瑞稀が満足するまで何度も腰を突いてあげた。
 瑞稀は全身が痙攣する様に身体を震わせると、脱力して何度目かのオルガズムを感じていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…ふふふふ…幸せ。本当はずっとこうしていたいね?」
「俺には龍と争う理由が無いからな」
「そうね…でも私にはある…」
 瑞稀は深い溜息を吐いた。
「お腹も満たされたし、性欲も満たされたし、心も満たされたし…トカゲ退治に行こうかしら…」
 本当は戦いなんてしたく無い。だが赤龍帝の顔を見た時、全身の血液が沸騰したみたいに感じた。身体がアイツを拒絶している。記憶に無い因縁を感じる。激しい嫌悪感をいだく所を見ると、恐らく私は昔、アイツに犯されたに違いない。
 ゲートを開きに来たが、物々しい数の龍人が周辺を守っていた。
「まさかゲートを開けられない様に守っているの?」
「ゲートの正確な場所までは分からないみたいだが、アタリをつけているんだろうな?」
 だが、まだ方法はある。天界と魔界はゲートで繋がっており、魔界と人間界のゲートは魔界から開く事が出来る。遠回りになるが、神々を人間界に連れて来る事は可能だ。
「仕方ない…魔界から天界に向かおう」
 影の世界に潜り、分厚い黒雲を抜けて魔界に達した。魔界のゲートに向かう。私が天界と魔界を統一した為に、行き来するゲートは解放されたままだ。
 すると、1人の大男がゲートを守っていた。
小虞シャオ・ユー、来る頃だと思って待っていた」
阿籍ア・ジー、どうしたの?」
 阿籍ア・ジーと呼んだ男は、瑞稀の前世が虞美人だった時の夫の項羽だ。
「赤龍帝が復活したそうだな?」
「知っているの?」
「知っているも何も、俺達の因縁の相手だ。奴は劉邦だ。今度こそ殺す!」
「劉邦…?」
 その名前を聞いても、何も思い出せなかった。人は心が壊れる程の精神的ダメージを受けると、身を守る為に記憶を封じたり、別人格を生み出して現実逃避したりする。私は、それほど嫌な目にあったのだろう。
「全く思い出せないけど、劉邦に出会った時に、動揺して戦えなくなるかも知れないから、何があったのか知ってたら教えて」
「…分かった」
 阿籍ア・ジーの話では、彭城が陥落した時に、城に残っていた私が劉邦に犯されたらしい。
「なるほど、その忌わしい記憶が、魂に刻み込まれていて、劉邦に出会った時に震えて戦えなかったかも知れないから、聞いてて良かったわ」
「気丈だな?」
「だって覚えて無いし、虞美人は、私であって私じゃないからね。虞美人に生まれ変わってた時に、アナトの私の記憶が戻っていれば、話は変わるんだけどね?全く戻っていないはずよ。自害して、そのまま死んじゃったんでしょう?私。生き返るはずなのに…」
 赤龍帝は人化し、天下を統一して人類を支配しようと目論んでいたのだろう。
阿籍ア・ジー、地上から全ての龍を駆逐するわよ」
「そのつもりだ」
 私と来夢と阿籍ア・ジーの3人は、ゲートを潜って天界へと向かった。
 龍は硬いが攻撃が通らない訳では無い。私のスキルに貫通が無いだけで、貫通効果のある呪文を唱えていれば、一撃で倒せたかも知れない。しかし何しろ、数が多い。完全に駆逐するなら、こちらも数を揃える必要があったのだ。

 
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