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ラクリア国・王城にて
しおりを挟む「…今日は良い天気だね。そう思わないかい?レグニス」
執務の手を止め、そう穏やかにエリーゼの父・レグニスに問い掛けたのはラクリア国の王、アディル・ラクリアである。
「…確かに今日は良い天気ですが…俺は、そんな話をしにここに来たわけじゃないのだが?」
「ははっ、そんなに不機嫌そうにするな。ほら敬語、取れてるぞ。まぁ今はお前と俺しかいないから構わないけどな」
「…陛下…!俺の可愛い可愛いエリーゼの所にグレン王子を向かわせたそうですね?…どういう事か説明して貰いましょうか…!」
ゴオォオオとレグニスの背後に炎が昇る。
その顔は全く笑っていない。
「…事後報告になって悪かったとは思っている。…レグニス、俺のユニークスキルは知っているよな?もちろん、秘匿されている方の、だ」
「…あぁ。未来予知、でしたね…って、まさか…」
「__そのまさか、だ」
アディル国王には公言されているスキルの他に、もう一つ、秘匿されているユニークスキル、未来予知を持っていた。
そしてそのスキル、未来予知の存在は国家機密の一つとなっている。
「その予知の内容だが、“近い未来、伝承に残る災害級モンスターの再来”だ。それがどこで起きるとまでは分からなかったが、その被害は…この国にも及ぶ程だ」
「…は?」
「まぁそうなるよな。…予知は予知であって絶対ではない。__けれど、俺の未来予知が高い確率で当たるのも知っているだろう?」
「…そうですね」
あまりにも壮大な事象にレグニスは肯定する事しか出来なかった。
けれど実際、アディル陛下は幾度となく、この国をその未来予知で救って来たという実績がある。
「そこで、だ。グレンにのみこの事を話し、エリーゼ嬢と共にその調査に当たって貰う事にした。まぁ、いわゆる極秘任務だな」
「確かに…冒険者としてなら、集められる情報も多いでしょうし。だから、エリーゼにマジックバッグをあげたのですね、」
「あぁ、そうだ。国としても情報は集めているが情報は多いに越した事はない。…それとグレンをエリーゼ嬢に向かわせたのにはもう一つ、理由があってな、」
「…もう一つ、ですか?」
「…幼少の頃からエリーゼ嬢に好意を寄せているのはレグニス、お前も知っているだろう?」
「…それは、あれ程、エリーゼにだけ素を見せて心を許しているのを見たら…エリーゼが冒険者になったのを知って、グレン王子も冒険者になっていた様ですし。
まぁ…エリーゼが婚約してからは話す機会自体、減った様でしたがね」
「…いやー、エリーゼ嬢が婚約したと知った時からグレンが被る、王子としての仮面は更に厚くなっていったな。
__しかし、今回、良くも悪くもエリーゼ嬢の婚約は解消となった。その己の心に未だに気付かない哀れな息子、グレンに親としてたまには、お節介をな」
「…エリーゼの中ではグレン王子は友人止まり、の様でしたがね」
「知っている。…そこはグレンの頑張り次第だ」
「それじゃあ、少し休憩、お茶にするとしようか。レグニス、付き合ってくれるだろう?」
「…分かりました。少しだけならお付き合いします」
こうして二人は仲の良い友人として、お茶と共に昔話へと花を咲かせるのだった。
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