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幕間:ソフィアの苦悩
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王宮内にある王妃殿からは、今日もエドワード王の怒鳴り声が漏れ聞こえている。
「何度言ったら分かるのだ。シアータを殺せば、パルマ家の残党も掌握出来るのだぞ」
シアータはパルマ家の女当主で、ソロの魔法使いとしては、王国内では最上級の実力者だ。だが、シアータをもってしても、ソフィア、エドワードのペア魔法には、手も足も出ない状況だった。
「そうは思いません。逆に最後まで抵抗されて、人族の戦力を著しく落とすことになります」
ソフィアは怯まず反論した。
「お前が妙に情けをかけるから、奴らが最後まで抵抗するのだ。殺されないとたかをくくっているのだ。シエルもそれで取り逃したのだぞ」
「陛下、私に人は殺せません」
「何をいう。散々魔族を殺しているではないか」
「あれは王国民のため、仕方なく……」
「もうよい。これ以上私に逆らうのであれば、王子を処刑する」
「何をおっしゃるのですっ!? あなたの子供でもあるのですよ」
「子供なら他にも沢山いる。別に王妃の子供にこだわってはいない。王女の方はお前に似て魔力が高いが、王子の方は凡庸だ。失っても痛くも痒くもない」
「人でなしっ」
「口を慎めよ。お前の魔力は確かに必要で、お前には手は出さないでいるが、お前の両親や兄弟などどうでもいいものは、お前の態度次第でいくらでも殺すからな。次にシアータに手を抜いたら、親兄弟か息子のいずれかを王命違反で逮捕してから処刑するぞ。いいな」
ソフィアは顔面蒼白だった。エドワードの言葉が脅しでないことは、ソフィアにはよく分かっているのだ。
「陛下、私の親類縁者に手を出したら、タダでは済ませませんわよ」
「ほう、言うではないか。どうすると言うのだ?」
「ペアを組んでも魔力を出さなければ、陛下を盾にして、陛下だけ殺させることも出来るのですよ」
「はっ、そのときは先にお前を殺して逃げるさ。その後、一族郎党全て皆殺しにしてやる。よく考えて行動するのだな」
ソフィアはソロではエドワードには全く敵わない。そのため、エドワードが本性を現した後も、今日までずるずるとエドワードに協力して来たのだ。
エドワードが本性を現したのは、シエルが魔国に亡命した直後だった。
最初、エドワードはソフィアにとても優しかった。シエルに失恋して傷心していたソフィアと、同じく婚約者に死なれて悲嘆していたエドワードが、お互いに慰めあう形で交際がスタートした。
エルザから聞かされていたエドワードの女癖の悪さは、シエルがエルザとソフィアを得るためにでっち上げた冤罪だとエドワードが主張して、エドワードを信じたかったソフィアは信じることにしたのだ。
エドワードが王太子に選ばれても、エドワードはソフィアを大事にしてくれて、ソフィアは王太子妃となり、一男一女を授かり、幸せの絶頂にあった。
だが、王位に就いた途端、エドワードは次々と側室を囲い出した。ソフィアが苦言を呈したところ、王室の継続のためには仕方ないと涙ながらにエドワードが訴えるので、ソフィアは我慢した。
シエルとアナスタシアと再会し、エドワードが彼らを何の躊躇いもなく、一方的に殺そうとしたときも、おかしいとは思ったのだが、ソフィアを傷つけたシエルを許せなかったと言われ、ここでもソフィアはエドワードを信じた。
だが、シエルが魔国に亡命した一報を聞いてから、エドワードは次第に本性を現し始めたのだ。
今日のような脅しはこれまでも何度かされており、実際にソフィアと仲の良かった侍女をソフィアの目の前でエドワードに殺された。
「陛下、魔国がまた攻撃を仕掛けて来ました。出動をお願いします」
報告官の切羽詰まった声で、ソフィアは回想を中断した。
「ちっ、まだパルマ家の一部が掌握できていないのに、せわしいな。分かった、出動する。ソフィア、用意しろ。王国の民を殺されたくなかったら、魔族を殺せ。戦争とは結局、そういうことだからな」
(魔族も勝ち目がないのに、なぜ攻めてくるの? エドワードの言うように、王国を守るためには手加減出来ないわよ)
ソフィアは黙々と戦闘準備に着手した。
「何度言ったら分かるのだ。シアータを殺せば、パルマ家の残党も掌握出来るのだぞ」
シアータはパルマ家の女当主で、ソロの魔法使いとしては、王国内では最上級の実力者だ。だが、シアータをもってしても、ソフィア、エドワードのペア魔法には、手も足も出ない状況だった。
「そうは思いません。逆に最後まで抵抗されて、人族の戦力を著しく落とすことになります」
ソフィアは怯まず反論した。
「お前が妙に情けをかけるから、奴らが最後まで抵抗するのだ。殺されないとたかをくくっているのだ。シエルもそれで取り逃したのだぞ」
「陛下、私に人は殺せません」
「何をいう。散々魔族を殺しているではないか」
「あれは王国民のため、仕方なく……」
「もうよい。これ以上私に逆らうのであれば、王子を処刑する」
「何をおっしゃるのですっ!? あなたの子供でもあるのですよ」
「子供なら他にも沢山いる。別に王妃の子供にこだわってはいない。王女の方はお前に似て魔力が高いが、王子の方は凡庸だ。失っても痛くも痒くもない」
「人でなしっ」
「口を慎めよ。お前の魔力は確かに必要で、お前には手は出さないでいるが、お前の両親や兄弟などどうでもいいものは、お前の態度次第でいくらでも殺すからな。次にシアータに手を抜いたら、親兄弟か息子のいずれかを王命違反で逮捕してから処刑するぞ。いいな」
ソフィアは顔面蒼白だった。エドワードの言葉が脅しでないことは、ソフィアにはよく分かっているのだ。
「陛下、私の親類縁者に手を出したら、タダでは済ませませんわよ」
「ほう、言うではないか。どうすると言うのだ?」
「ペアを組んでも魔力を出さなければ、陛下を盾にして、陛下だけ殺させることも出来るのですよ」
「はっ、そのときは先にお前を殺して逃げるさ。その後、一族郎党全て皆殺しにしてやる。よく考えて行動するのだな」
ソフィアはソロではエドワードには全く敵わない。そのため、エドワードが本性を現した後も、今日までずるずるとエドワードに協力して来たのだ。
エドワードが本性を現したのは、シエルが魔国に亡命した直後だった。
最初、エドワードはソフィアにとても優しかった。シエルに失恋して傷心していたソフィアと、同じく婚約者に死なれて悲嘆していたエドワードが、お互いに慰めあう形で交際がスタートした。
エルザから聞かされていたエドワードの女癖の悪さは、シエルがエルザとソフィアを得るためにでっち上げた冤罪だとエドワードが主張して、エドワードを信じたかったソフィアは信じることにしたのだ。
エドワードが王太子に選ばれても、エドワードはソフィアを大事にしてくれて、ソフィアは王太子妃となり、一男一女を授かり、幸せの絶頂にあった。
だが、王位に就いた途端、エドワードは次々と側室を囲い出した。ソフィアが苦言を呈したところ、王室の継続のためには仕方ないと涙ながらにエドワードが訴えるので、ソフィアは我慢した。
シエルとアナスタシアと再会し、エドワードが彼らを何の躊躇いもなく、一方的に殺そうとしたときも、おかしいとは思ったのだが、ソフィアを傷つけたシエルを許せなかったと言われ、ここでもソフィアはエドワードを信じた。
だが、シエルが魔国に亡命した一報を聞いてから、エドワードは次第に本性を現し始めたのだ。
今日のような脅しはこれまでも何度かされており、実際にソフィアと仲の良かった侍女をソフィアの目の前でエドワードに殺された。
「陛下、魔国がまた攻撃を仕掛けて来ました。出動をお願いします」
報告官の切羽詰まった声で、ソフィアは回想を中断した。
「ちっ、まだパルマ家の一部が掌握できていないのに、せわしいな。分かった、出動する。ソフィア、用意しろ。王国の民を殺されたくなかったら、魔族を殺せ。戦争とは結局、そういうことだからな」
(魔族も勝ち目がないのに、なぜ攻めてくるの? エドワードの言うように、王国を守るためには手加減出来ないわよ)
ソフィアは黙々と戦闘準備に着手した。
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