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反乱分子にはお仕置きします
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大陸の統一は、ソフィアの息子であるジョージ国王が十年後に退位し、魔国の皇帝が王国の国王に即位することで達成される。非常に平和的な方法であった。
しかも、政治的権限は各州に与えられるため、王国にとってすれば、自治権が保証され、軍事費の負担から解放され、かつ、安定的な平和を享受できるため、決して悪い話ではなかった。
だが、現在、中央の王政下で甘い汁を吸っていたものにとっては寝耳に水の話で、既得権益を守るため、事態の打開を画策した。
ジョージ国王は幼く、政治が素人のソフィア王妃に国政は任せておけないとのもっともらしい意見が、宰相のマルクスを中心にまとまり、マルクス一派が側室の子であるサージ王子を担いで、反乱を起こしたのだ。
後に「マルクスの反乱」と呼ばれるこの事件は、中央の官吏と衛兵が結託して決起したのだが、首謀者のマルクスには十分に勝算があった。
(警戒すべきは高位の魔法使いだ。王妃は魔力と魔圧は高いが、初級魔法しか使えない。パルマ家の主要メンバーは魔国に出張中だ。素早く王位を奪還して新王を立て、国内貴族の承認を得れば、パルマ家も新王を支援するしかあるまい)
ところが、マルクスの目論見は外れてしまう。
王妃が王宮に籠城し、非常に強固な結界魔法を張って来たのだ。
数百人で集中して数時間かけてようやくこじ開けても、すぐに別の結界が新たに張られてしまう。
(どうしたことだ? なぜこんな強固な結界が張れるんだ。魔法構文が複雑で難解だ。パルマ家の誰かが残っていたのか?)
実はソフィアが持ち帰った黒髪男子が、シエルから結界構文を伝授されていた。ソフィアを結婚式で取り巻いていたのは、ソフィアを守るために魔国が用意したエージェントであったのだ。ただ、ソフィアを傷つけないようソフィアのことだけを愛すると誓ったものたちだった。
(まあよい。少し計算違いだったが、一つずつ破って行けばいい)
マルクスは慌てなかった。ところが、破った後に張られる結界は、直径が短くなる分、強固になるようで、結界を破るために要する時間がだんだん長くなっていく。
そのうえ、魔国から軍が出動したという報告をマルクスは入手した。
(どうやって知ったのか分からんが、魔国から救援が向かっているだと!?)
反乱郡は魔国軍と対峙したことのない王都を警備している衛兵で構成されていたため、魔国の圧倒的な魔法を経験していない。王国軍から噂には聞いたことはあるが、負けた言い訳をしているのだと決めつけていた。彼らは魔国軍を見くびっていた。
(こうなったら、魔国とも一戦構えるか)
衛兵は王国軍の中でも精鋭が集まっている。魔力も魔圧も高い。マルクスは魔国軍が来ても蹴散らせばいいと考えていた。
(しかし、どれだけ固いのだ、この結界は。しかも、二週間以上も張り続けられるとは、さすが王妃の魔力量というべきか)
そして、遂に魔国軍が到着した。ただ、その数は二十名にも満たない。
(たったこれだけ? 何を考えているのだ、魔国軍は!?)
これがマルクスの最後の思考となった。
扇形の隊形から放たれた「神雷」は衛兵五千を麻痺させ、指揮官クラスを全員消し炭にした。
「兵隊さんは命令を聞いただけって人もいるだろうから助けてあげたけど、指揮官は許せないわ」
「エルザ、怒った顔も素敵だよ」
「もう殿下ったら……」
せっかくのいいムードに、またしても、アナスタシアが割って入ってきた。
「お二方、そういうのは後にして、早くソフィアを救い出して、安心させてやって下さい」
しかも、政治的権限は各州に与えられるため、王国にとってすれば、自治権が保証され、軍事費の負担から解放され、かつ、安定的な平和を享受できるため、決して悪い話ではなかった。
だが、現在、中央の王政下で甘い汁を吸っていたものにとっては寝耳に水の話で、既得権益を守るため、事態の打開を画策した。
ジョージ国王は幼く、政治が素人のソフィア王妃に国政は任せておけないとのもっともらしい意見が、宰相のマルクスを中心にまとまり、マルクス一派が側室の子であるサージ王子を担いで、反乱を起こしたのだ。
後に「マルクスの反乱」と呼ばれるこの事件は、中央の官吏と衛兵が結託して決起したのだが、首謀者のマルクスには十分に勝算があった。
(警戒すべきは高位の魔法使いだ。王妃は魔力と魔圧は高いが、初級魔法しか使えない。パルマ家の主要メンバーは魔国に出張中だ。素早く王位を奪還して新王を立て、国内貴族の承認を得れば、パルマ家も新王を支援するしかあるまい)
ところが、マルクスの目論見は外れてしまう。
王妃が王宮に籠城し、非常に強固な結界魔法を張って来たのだ。
数百人で集中して数時間かけてようやくこじ開けても、すぐに別の結界が新たに張られてしまう。
(どうしたことだ? なぜこんな強固な結界が張れるんだ。魔法構文が複雑で難解だ。パルマ家の誰かが残っていたのか?)
実はソフィアが持ち帰った黒髪男子が、シエルから結界構文を伝授されていた。ソフィアを結婚式で取り巻いていたのは、ソフィアを守るために魔国が用意したエージェントであったのだ。ただ、ソフィアを傷つけないようソフィアのことだけを愛すると誓ったものたちだった。
(まあよい。少し計算違いだったが、一つずつ破って行けばいい)
マルクスは慌てなかった。ところが、破った後に張られる結界は、直径が短くなる分、強固になるようで、結界を破るために要する時間がだんだん長くなっていく。
そのうえ、魔国から軍が出動したという報告をマルクスは入手した。
(どうやって知ったのか分からんが、魔国から救援が向かっているだと!?)
反乱郡は魔国軍と対峙したことのない王都を警備している衛兵で構成されていたため、魔国の圧倒的な魔法を経験していない。王国軍から噂には聞いたことはあるが、負けた言い訳をしているのだと決めつけていた。彼らは魔国軍を見くびっていた。
(こうなったら、魔国とも一戦構えるか)
衛兵は王国軍の中でも精鋭が集まっている。魔力も魔圧も高い。マルクスは魔国軍が来ても蹴散らせばいいと考えていた。
(しかし、どれだけ固いのだ、この結界は。しかも、二週間以上も張り続けられるとは、さすが王妃の魔力量というべきか)
そして、遂に魔国軍が到着した。ただ、その数は二十名にも満たない。
(たったこれだけ? 何を考えているのだ、魔国軍は!?)
これがマルクスの最後の思考となった。
扇形の隊形から放たれた「神雷」は衛兵五千を麻痺させ、指揮官クラスを全員消し炭にした。
「兵隊さんは命令を聞いただけって人もいるだろうから助けてあげたけど、指揮官は許せないわ」
「エルザ、怒った顔も素敵だよ」
「もう殿下ったら……」
せっかくのいいムードに、またしても、アナスタシアが割って入ってきた。
「お二方、そういうのは後にして、早くソフィアを救い出して、安心させてやって下さい」
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