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第二章 学校生活

学校に行く

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 この国の話し言葉はほぼ日本語なのだが、文字は全く違う。また外来語は通じない。

 文字は「テンゼン」と呼ばれる表音文字に声調記号を組み合わせた中国語のピーインのような仕組みだ。

 ただ、日本語の場合は声調はそんなには重要ではないので、多少間違っても、文脈で意味は通じる。

 ミサトも俺も「テンゼン」は割と簡単に身に付けたが、その後も毎日学校に行っている。子どもたちが可愛いというのもあるが、文化に触れられるという点が大きい。

 俺たちはどうせならということで、名門中の名門で、貴族しか通えないという「聖プレアデス学園」という学校に通っていた。五歳から成人の十五歳までの一貫校で、今は十歳クラスに無断参加している。

 俺はこのクラスの学級委員長のメルサちゃんにデレデレだ。ミサトはゲンムくんが推しだと言っている。

 小学生は神秘的な現象への抵抗が少ない。そのため、俺はメルサちゃんとすでに何度か地面を使って交信していた。ミサトもゲンムくんと何度かやり取りしているらしい。

 十歳ともなると女子は誰が誰を好きだとか、そんな話ばかりだ。今日、メルサちゃんは俺と交信したいようで、彼女が考えた俺の召喚呪文を口にした。

「ゆうくん、メルサの祈りに応えて下さい。ここにいらしてください」

 霊媒者の自動書記やこっくりさんやチャーリーゲームのようなインチキではなく、俺との交信は本物だ。最初はメルサも驚いて、俺との交信を人に見せようとしたが、メルサには人に言うなら、さよならだよと注意した。

『メルチン、何ですか?』

 メルサにメルチンと呼べと言われたからで、俺が呼び始めたのではない。

「ティムくんの好きな人を教えて下さい」

『それは教えられない。ティムくんに直接聞きなさい』

 そうなのだ。甘やかしてしまうと、何でもゆうくんに聞けばいい、ということになってしまい、メルサ本人にとってよくないのだ。

「メルサの大事な蝶のペンダントをお供えします。どうか教えてください」

 ゆうくん、蝶のペンダントは要らないかな。でも、教えちゃうか。

『3組のローザちゃんです』

「え? あんな表面だけいい子ぶってる女のどこがいいの!?」

 メルサが悪態をついてメラメラしている。俺はこういう気の強い女の子が大好きだという困った性格があった。ちなみにミサトはドストライクだったりするが、恋敵がいない状態で告るのはちょっと違うような気がして、恋心は出さないようにしている。

『男はそういうのに簡単に引っかかるから、メルチンもそういうスキルを身につけた方がいいよ』

「はいっ」

「あいたたた」

 俺の大事な交信タイム中に、耳を背後からつまんで邪魔する奴がいる。こんなことが出来るのはこの世でただ一人、ミサトだけだ。

「あなたは何教えてんのよ。メルサちゃんをどう育てたいわけ!?」

「いや、ミサトだって、ゲンムくんに女の子には優しくしないといけない、って書いてたじゃないか」

「それとこれとは全く違うでしょう!?」

「そうかな?」

 俺には違いがよくわからなかった。
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