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第三章 魔王城
藪の神社
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果たして出来るのか?
キスをクリアした俺の頭の中は、もはやそのことでいっぱいだった。
ミサトからの許しがあるかどうかではない。許してもらえても、物理的に出来ないんじゃないかと思うのだ。
俺たちは、肌や唇の弾力は変わらないが、新陳代謝が全くないのだ。なぜか涙だけは出るが、鼻水も唾液も出ない。生理現象は全く発生しない。
ということで、ローションがないと出来ないはずだ。この世界にローションは売っているのか? 売っていたとして、俺たちに触ることができるのか?
エリコの所持品を俺もチェックすべきだった。異世界ものローションを持っていたかもしれない。いや、さすがに常時携帯はしていないか。
と不届きなことを考えていたら、ミサトがジト目で俺を見ていた。
「また、何か変なことを考えていたでしょう」
「あははは、相変わらず鋭いなあ」
「そんなに簡単に全部は許さないから、頑張ってよ。キスして分かったでしょう? ちゃんとゆうきに好意は持っているんだから、もっともっとゆうきのことを好きにさせてよ」
「はい。俺がミサトを好きなのと同じぐらい好きになってもらいます」
「そうなるよう祈ってるわ」
あれから、ときどきキスはしてくれるようになった。ねえ、もうこれって、完全に付き合っているよね。と俺は神社の狛犬に話しかけてみた。
そう、俺たちは竹藪の神社まで来ていたのだ。だが、残念ながら、やはり圏外だ。ところが、なんと無線LANの信号に反応があったのだ。
俺は急いでネットワークの設定を見た。
「フリーのWiFiスポットだ。おおっ、すげえ、インターネットだぞ、ミサト!」
「私の携帯にも設定してっ!」
「ちょっと見せてみな。えーとネットワークワークの設定はどこだ?」
「ここよ。ここ」
ミサトの顔が近いが、今はスケベ心を抑えよう。俺はミサトの携帯のネットの設定を保存した。
「ほら」
「ゆうき! ネットだよっ。私、ゆうきのこと大好きかもっ!」
「おう、いくらでも好きになってくれっ」
俺たちのテンションは上がりまくっていたが、じゃあ、このままベッドイン、というわけにはもちろん行かなかった。二人は狂ったようにネットサーフィンしまくった。そして、いくつか判明した。
まず、俺たちが前の世界にいた形跡が綺麗さっぱり消えていた。SNSなどのアカウントはなくなっているし、同窓会サイトにも名前がない、など徹底的に元からいなかったことにされている。
次にあの初詣での事件については、爆発などの報道はなかった。ただ、レンとエリコが行方不明という記事はあった。同じバイト先の仲間同士で初詣でに行き、二人だけ行方が分からなくなり、何らかの事件に巻き込まれたか、事故にあったかの両面から捜査中とあった。
「なにこれ……」
ミサトはショックだったようで、顔面蒼白だ。新陳代謝がないくせに、感情に応じた血の動きは機能するのだ。
「レンとエリコはバイト仲間だったのか?」
「ええ、私もよ。恐らく私の父が経営しているケーキ屋さんで、みんな働いていたの。でも、あの日はレンと二人の初デートだったのよ」
え? 初デート?
「クリスマスプレゼントのバッグは?」
「あれはバイト先のクリスマスパーティのビンゴの景品よ。私が景品を用意したの。嘘は言ってないわよ」
まあ、嘘ではないが、著しく誤解を生む表現だな。ミサトはレンとはつきあっていなかったんじゃないか?
「ちなみに俺なんか、どこにも記事がないぞ。いないことになっている」
「それは私も同じよ。携帯の連絡帳の名前を検索してわかったんだけど、どうやら私の父はかなり有名な実業家で色々と商売しているみたい。でも、子供は男二人って書いてあったわ」
そうだった。ミサトが転移して来たときの服の仕立てが、かなり良かった。俺の知らないブランドで、恐らくお金持ち御用達のブランドだと思う。
「私のこれまでのつながりは、全くなくなってしまっていたのね」
俺にはあまりというか、全くショックがない。関係のあった人の記憶はないし、俺には何よりミサトがいるからだ。やはり、ミサトにとっての俺はそんなには大きなものではないようだ。
「私には、ゆうきだけになっちゃった。責任重大だゾ」
あれ? そんなにショックを受けていないように思ったのは気のせいだろうか。気のせいじゃないように俺が頑張って行こう。
キスをクリアした俺の頭の中は、もはやそのことでいっぱいだった。
ミサトからの許しがあるかどうかではない。許してもらえても、物理的に出来ないんじゃないかと思うのだ。
俺たちは、肌や唇の弾力は変わらないが、新陳代謝が全くないのだ。なぜか涙だけは出るが、鼻水も唾液も出ない。生理現象は全く発生しない。
ということで、ローションがないと出来ないはずだ。この世界にローションは売っているのか? 売っていたとして、俺たちに触ることができるのか?
エリコの所持品を俺もチェックすべきだった。異世界ものローションを持っていたかもしれない。いや、さすがに常時携帯はしていないか。
と不届きなことを考えていたら、ミサトがジト目で俺を見ていた。
「また、何か変なことを考えていたでしょう」
「あははは、相変わらず鋭いなあ」
「そんなに簡単に全部は許さないから、頑張ってよ。キスして分かったでしょう? ちゃんとゆうきに好意は持っているんだから、もっともっとゆうきのことを好きにさせてよ」
「はい。俺がミサトを好きなのと同じぐらい好きになってもらいます」
「そうなるよう祈ってるわ」
あれから、ときどきキスはしてくれるようになった。ねえ、もうこれって、完全に付き合っているよね。と俺は神社の狛犬に話しかけてみた。
そう、俺たちは竹藪の神社まで来ていたのだ。だが、残念ながら、やはり圏外だ。ところが、なんと無線LANの信号に反応があったのだ。
俺は急いでネットワークの設定を見た。
「フリーのWiFiスポットだ。おおっ、すげえ、インターネットだぞ、ミサト!」
「私の携帯にも設定してっ!」
「ちょっと見せてみな。えーとネットワークワークの設定はどこだ?」
「ここよ。ここ」
ミサトの顔が近いが、今はスケベ心を抑えよう。俺はミサトの携帯のネットの設定を保存した。
「ほら」
「ゆうき! ネットだよっ。私、ゆうきのこと大好きかもっ!」
「おう、いくらでも好きになってくれっ」
俺たちのテンションは上がりまくっていたが、じゃあ、このままベッドイン、というわけにはもちろん行かなかった。二人は狂ったようにネットサーフィンしまくった。そして、いくつか判明した。
まず、俺たちが前の世界にいた形跡が綺麗さっぱり消えていた。SNSなどのアカウントはなくなっているし、同窓会サイトにも名前がない、など徹底的に元からいなかったことにされている。
次にあの初詣での事件については、爆発などの報道はなかった。ただ、レンとエリコが行方不明という記事はあった。同じバイト先の仲間同士で初詣でに行き、二人だけ行方が分からなくなり、何らかの事件に巻き込まれたか、事故にあったかの両面から捜査中とあった。
「なにこれ……」
ミサトはショックだったようで、顔面蒼白だ。新陳代謝がないくせに、感情に応じた血の動きは機能するのだ。
「レンとエリコはバイト仲間だったのか?」
「ええ、私もよ。恐らく私の父が経営しているケーキ屋さんで、みんな働いていたの。でも、あの日はレンと二人の初デートだったのよ」
え? 初デート?
「クリスマスプレゼントのバッグは?」
「あれはバイト先のクリスマスパーティのビンゴの景品よ。私が景品を用意したの。嘘は言ってないわよ」
まあ、嘘ではないが、著しく誤解を生む表現だな。ミサトはレンとはつきあっていなかったんじゃないか?
「ちなみに俺なんか、どこにも記事がないぞ。いないことになっている」
「それは私も同じよ。携帯の連絡帳の名前を検索してわかったんだけど、どうやら私の父はかなり有名な実業家で色々と商売しているみたい。でも、子供は男二人って書いてあったわ」
そうだった。ミサトが転移して来たときの服の仕立てが、かなり良かった。俺の知らないブランドで、恐らくお金持ち御用達のブランドだと思う。
「私のこれまでのつながりは、全くなくなってしまっていたのね」
俺にはあまりというか、全くショックがない。関係のあった人の記憶はないし、俺には何よりミサトがいるからだ。やはり、ミサトにとっての俺はそんなには大きなものではないようだ。
「私には、ゆうきだけになっちゃった。責任重大だゾ」
あれ? そんなにショックを受けていないように思ったのは気のせいだろうか。気のせいじゃないように俺が頑張って行こう。
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