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反撃の準備
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ヒューイが現状を教えてくれ、私を暗殺しようと暗躍しているのは、恐らくお母様の仕業であることを話してくれた。
トーマス中尉は実の母親が殺そうとしていることを私に伝えにくかったのだろう。
確かにショックだが、そうなるのも仕方ないという諦めの方が強かった。
「ゾルゲは母に騙されたのだと思うの。現状を説明すれば、保身のため、寝返ると思うわ」
「俺もそう思う。この先の酒場がヒューイたちの拠点になっている。まずはそこに行こう」
化粧をしたヒューイがキレイで困ってしまう。
「あの、ヒューイ」
「どうした?」
「襲われて怖かったの」
リリアが呆れた顔をしているが、知ったことか。私はヒューイにハグして欲しいのだ。
「そうか。頑張ったな」
ヒューイは優しくハグしてくれた。いつものヒューイの香の匂いがする。随分と懐かしい気がする。
私は人を初めて殺した。さっきは殺されかけたから夢中だったが、落ち着いてくると、後悔に似た気持ちになってくる。
だが、兄のため、自分のため、そして、ヒューイのために、私は前に進まないといけない。
自分とヒューイを邪魔するものは排除するのみだ。
「多分、お母様はもうインシュランにはいないと思う」
「そうだな。今後の立案は、マリアンヌが敵対していることを計算に入れるようにしてくれ」
「うん……。もうしばらくこうしていていい?」
「もちろんさ、カトリーヌ」
しばらくヒューイを堪能していたら、オホン、とリリアが咳払いする音がした。
分かったわよ。
「ヒューイ、ありがとう。落ち着いたわ。トーマスたちの酒場に行きましょう」
私はヒューイと腕を組んで、酒場まで歩いて行った。
「なあ、カトリーヌ。なぜトーマスの名前を覚えていたんだ?」
ヒューイが奇妙な質問をして来た。
「あなたへの忠誠度が百点だって、将校たちのプロフィールに書いてあったからよ。百点は彼だけだったし、最初に私に質問したのも彼よね」
兄に似ていると言ったら、ヒューイが気にしそうなので、黙っておいた。
「そうか、そういうことか」
何だヤキモチを妬いていたのか。
途端に明るくなったヒューイを見て、私はぎゅっとヒューイの腕を握った。
酒場は歩いてすぐだった。
部屋には女性の部員が連絡役として残されていた。
サーシャと名乗った女性から状況の説明を受けた。
「コーキーには会わなかったな。すれ違いだったのかな」
サーシャがヒューイを見て少し赤くなっている。気持ちは分かる。ヒューイは美人すぎるのだ。
「まずはゾルゲの調略が先ね。もう私を殺そうとはしないわね。ダンブルの皇太子と皇太子妃として面会を求めるのがいいと思うのだけど、話も出来ずに人質にされてしまう危険性があるわ」
「俺はカトリーヌを殺そうとした奴を許す気はないぜ」
「命令に従っただけと思うわ。今は上手く使うことを考えて」
「カトリーヌがそう言うなら、とりあえずは我慢するが……」
「呼び出しても警戒するだろうから、ゾルゲにはやはり娼館から働きかけるのがいいのよ。トーマスたちと合流してから、もう一度、さっきの娼館に行きましょう」
ミーシャに警備隊施設近くに潜んでいるトーマスたちを呼びに行ってもらった。
「なあ、もう女装は解いていいんじゃないか」
「念のため、ゾルゲが寝返るまでは続けた方がいいわ」
私はもう少しだけ美人なヒューイを見ておきたかった。
トーマス中尉は実の母親が殺そうとしていることを私に伝えにくかったのだろう。
確かにショックだが、そうなるのも仕方ないという諦めの方が強かった。
「ゾルゲは母に騙されたのだと思うの。現状を説明すれば、保身のため、寝返ると思うわ」
「俺もそう思う。この先の酒場がヒューイたちの拠点になっている。まずはそこに行こう」
化粧をしたヒューイがキレイで困ってしまう。
「あの、ヒューイ」
「どうした?」
「襲われて怖かったの」
リリアが呆れた顔をしているが、知ったことか。私はヒューイにハグして欲しいのだ。
「そうか。頑張ったな」
ヒューイは優しくハグしてくれた。いつものヒューイの香の匂いがする。随分と懐かしい気がする。
私は人を初めて殺した。さっきは殺されかけたから夢中だったが、落ち着いてくると、後悔に似た気持ちになってくる。
だが、兄のため、自分のため、そして、ヒューイのために、私は前に進まないといけない。
自分とヒューイを邪魔するものは排除するのみだ。
「多分、お母様はもうインシュランにはいないと思う」
「そうだな。今後の立案は、マリアンヌが敵対していることを計算に入れるようにしてくれ」
「うん……。もうしばらくこうしていていい?」
「もちろんさ、カトリーヌ」
しばらくヒューイを堪能していたら、オホン、とリリアが咳払いする音がした。
分かったわよ。
「ヒューイ、ありがとう。落ち着いたわ。トーマスたちの酒場に行きましょう」
私はヒューイと腕を組んで、酒場まで歩いて行った。
「なあ、カトリーヌ。なぜトーマスの名前を覚えていたんだ?」
ヒューイが奇妙な質問をして来た。
「あなたへの忠誠度が百点だって、将校たちのプロフィールに書いてあったからよ。百点は彼だけだったし、最初に私に質問したのも彼よね」
兄に似ていると言ったら、ヒューイが気にしそうなので、黙っておいた。
「そうか、そういうことか」
何だヤキモチを妬いていたのか。
途端に明るくなったヒューイを見て、私はぎゅっとヒューイの腕を握った。
酒場は歩いてすぐだった。
部屋には女性の部員が連絡役として残されていた。
サーシャと名乗った女性から状況の説明を受けた。
「コーキーには会わなかったな。すれ違いだったのかな」
サーシャがヒューイを見て少し赤くなっている。気持ちは分かる。ヒューイは美人すぎるのだ。
「まずはゾルゲの調略が先ね。もう私を殺そうとはしないわね。ダンブルの皇太子と皇太子妃として面会を求めるのがいいと思うのだけど、話も出来ずに人質にされてしまう危険性があるわ」
「俺はカトリーヌを殺そうとした奴を許す気はないぜ」
「命令に従っただけと思うわ。今は上手く使うことを考えて」
「カトリーヌがそう言うなら、とりあえずは我慢するが……」
「呼び出しても警戒するだろうから、ゾルゲにはやはり娼館から働きかけるのがいいのよ。トーマスたちと合流してから、もう一度、さっきの娼館に行きましょう」
ミーシャに警備隊施設近くに潜んでいるトーマスたちを呼びに行ってもらった。
「なあ、もう女装は解いていいんじゃないか」
「念のため、ゾルゲが寝返るまでは続けた方がいいわ」
私はもう少しだけ美人なヒューイを見ておきたかった。
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