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第一章 人族の国
初めての部下
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「ちっ、何でこんなヤツ」
お嬢様らしからぬ口調だ。どうもお礼を言われる雰囲気ではなさそうだ。
「さっさと座んなさいよ。あなたが森にいた青年?」
俺は赤黒ドレスの女の子の正面に座った。ヴェールは脱いでいた。この子、おっかないが、すごい美少女だ。前の世界でいうと、高校生ぐらいだろうか。
「はい、そうです」
「森であなたを見つけて、あなたの部下になれって、お姉さまに頼まれたのよ」
「お姉さま、ですか?」
「聖女よ。神様から、今日森の中に現れる青年に、信頼出来る女性の部下をつけてやれとお告げを頂いたらしいのよ」
聖女って神様に祈った人か。彼女のせいで俺はここにいるともいえるな。でも、神様ってやはり色々とフォローしてくれてるようだ。
「それで、どなたが私の部下に?」
「私よ。不本意だけどね」
こんな美少女が俺の部下!?
ちょっと扱いに困ってしまうほど綺麗なんだが、頼りになる人が誰もいない今の俺には、とてもありがたい。
「それは助かります。この世界、よく分からなかったんですよ」
「どういうこと?」
あれ? どこまで知ってるんだろう。全部知ってるのかと思った。異世界から来たってのは隠しておくか。
「ちょっとオークの国で酷い目にあって、記憶がなくなっちゃったんです」
「そ、そうなの? それはお気の毒ね。私で教えられることであれば、何でも答えるわよ」
あれ? 突然優しくなったな。困った人には優しくするタイプの人なのか?
よ、よし。まずは最初に確かめておきたかったことを確かめてみよう。
「あの」
「何?」
「パンツ見せてもらえますか?」
パーンと平手打ちをくらった。だが、そんな平手打ちはどうでもいいぐらい、俺は痛烈な頭痛に襲われていた。
「サイッテイの上司ね。仕方ないわね。ちょっと待って、あれ? どうしたの?」
「い、今の命令は、と、取り下げます」
「あら、そう。良かったわ。変な命令しないでよね」
頭が割れるような頭痛といった生易しいものではなく、頭が割れて脳みそが出てきた幻影を見るほど頭が痛かった。
これがエッチな命令を与えたときの罰則か。でも、彼女、パンツ見せようとしていた。俺の指示を守るというのは本当のようだ。
「あなた、大丈夫? 」
あー、まだ頭痛え。もう絶対にエッチな命令はしないぞ。
「だ、大丈夫です。僕はノウキといいます。あなたのお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「エリザベートよ」
ヨーロッパ風の名前だな。ちょっといろいろと聞いてみよう。
「エリザベートさん、少し質問させてください。この金貨はどれぐらいの価値があるのでしょうか」
「エリザベートでいいわよ。どう答えればいいかしら。さっきあなたを案内したエマって子の給金半年分ぐらいかしら」
よくわからないな。取りあえず100万としておこうか。金貨100枚あるから、金貨だけで1億か。
「金貨より高額な硬貨はありますか?」
「白金貨ってのがあるけど、ほとんど使わないわよ。金貨100枚分よ」
「え? 100枚?」
1枚1億!? あの女神、何が当座のお金だよ。11億持ってるぞ、俺。
「そうよ。白金貨は私でも見たことないわよ」
「あの、人族が滅びそうってのは?」
「滅びるっていっても種が滅亡するわけではないわ。オークと戦争になっていて、人族区が占領されそうって話よ。そうそう、あなた、オークに捕まってたんでしょ? よく逃げられたわね」
なんだ。種が滅亡するかと思ってた。占領されるってのであれば、いつかまた独立できるかもしれないし、滅亡とはえらい違いだ。
「運がよかったんですよ。西はオークの国ですよね。北はどんな国ですか?」
地図を見る限り、東と南は海だ。人族区は、西と北に国境がある。
「エルフの国よ。人族の難民を受け入れているけど、実態は奴隷として使役されているのよ。多くの人は知らないけどね」
何だよ、人族ってやられ放題じゃないか。
「人族は弱いんですか?」
「人族はオークにもエルフにも個の力で劣るのよ。チームを組んでやっと勝てるって感じね。繁殖力が高いぐらいかな、人族が勝ってるのは。年中繁殖期だからね、人族は」
なるほど。数の力でしか対抗出来ないのか。でもさ、サラリーマンの俺がこの状況をどうしろってんだよ。また過労死したくないし、11億もあるなら、スローライフを堪能したい。
早くいい上司を見つけて、丸投げすべきだ。
ただ、こんなに美しくて高貴な女の子が、初対面の俺のことを信じて、部下になると覚悟を決めている。流石に逃げたりは出来ない。
「着いたわよ。続きの話は屋敷でしましょう」
馬車を降りたら、イギリスのバッキンガム宮殿のようなお屋敷の前に使用人たちがずらりと勢ぞろいしていた。メイド服のメイドさんが大半だった。
俺は非常に豪華な客室に通された。驚いたことに、ここで暮らしていいという。
夕食のときに呼びにきてくれるそうで、それまでは客室で休むことにした。
両親に会うのかと聞いたところ、両親はここにはいなくて、王都の本邸にいるという。え? これで別邸!? 本邸はこれ以上なのだろうか。
エリザベートは姉の支援のために、しばしばこの別邸を訪れるのだそうだ。
姉のことを尊敬していることが、ヒシヒシと伝わってくる。
エリザベートが去って、俺は天蓋付きのゴージャスなベッドにダイブした。思った以上に緊張していたようで、精神的にクタクタだ。そして、俺はそのまま眠ってしまったようだ。
「ノウキ様、ノウキ様、お食事のお時間です」
んあ、誰だ?
やばい、今日納期だっ
今日が納期だと前世の記憶を引きずっていて、眠気が一気に覚めたが、自分のいる部屋を見て、だんだんと思い出して来た。そうだ、俺は異世界に転生したんだった。
ん、俺を起こしたキレイなお姉さんはどなた?
「えっと、どなたでしょうか?」
「メイド長のリリアナと申します。お嬢様が廊下でお待ちです」
ドアを開けて廊下に出ると、エリザベートが迎えに来てくれていた。赤いワンピースに着替えている。家ではカジュアルな衣装のようだ。
しかし、この子は本当に綺麗だな。
「私に見惚れてないで、さっさと行くわよ」
あ、図星をつかれた。
でも、エリザベートは上機嫌で、ダイニングルームに俺を引っ張って行った。
お嬢様らしからぬ口調だ。どうもお礼を言われる雰囲気ではなさそうだ。
「さっさと座んなさいよ。あなたが森にいた青年?」
俺は赤黒ドレスの女の子の正面に座った。ヴェールは脱いでいた。この子、おっかないが、すごい美少女だ。前の世界でいうと、高校生ぐらいだろうか。
「はい、そうです」
「森であなたを見つけて、あなたの部下になれって、お姉さまに頼まれたのよ」
「お姉さま、ですか?」
「聖女よ。神様から、今日森の中に現れる青年に、信頼出来る女性の部下をつけてやれとお告げを頂いたらしいのよ」
聖女って神様に祈った人か。彼女のせいで俺はここにいるともいえるな。でも、神様ってやはり色々とフォローしてくれてるようだ。
「それで、どなたが私の部下に?」
「私よ。不本意だけどね」
こんな美少女が俺の部下!?
ちょっと扱いに困ってしまうほど綺麗なんだが、頼りになる人が誰もいない今の俺には、とてもありがたい。
「それは助かります。この世界、よく分からなかったんですよ」
「どういうこと?」
あれ? どこまで知ってるんだろう。全部知ってるのかと思った。異世界から来たってのは隠しておくか。
「ちょっとオークの国で酷い目にあって、記憶がなくなっちゃったんです」
「そ、そうなの? それはお気の毒ね。私で教えられることであれば、何でも答えるわよ」
あれ? 突然優しくなったな。困った人には優しくするタイプの人なのか?
よ、よし。まずは最初に確かめておきたかったことを確かめてみよう。
「あの」
「何?」
「パンツ見せてもらえますか?」
パーンと平手打ちをくらった。だが、そんな平手打ちはどうでもいいぐらい、俺は痛烈な頭痛に襲われていた。
「サイッテイの上司ね。仕方ないわね。ちょっと待って、あれ? どうしたの?」
「い、今の命令は、と、取り下げます」
「あら、そう。良かったわ。変な命令しないでよね」
頭が割れるような頭痛といった生易しいものではなく、頭が割れて脳みそが出てきた幻影を見るほど頭が痛かった。
これがエッチな命令を与えたときの罰則か。でも、彼女、パンツ見せようとしていた。俺の指示を守るというのは本当のようだ。
「あなた、大丈夫? 」
あー、まだ頭痛え。もう絶対にエッチな命令はしないぞ。
「だ、大丈夫です。僕はノウキといいます。あなたのお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「エリザベートよ」
ヨーロッパ風の名前だな。ちょっといろいろと聞いてみよう。
「エリザベートさん、少し質問させてください。この金貨はどれぐらいの価値があるのでしょうか」
「エリザベートでいいわよ。どう答えればいいかしら。さっきあなたを案内したエマって子の給金半年分ぐらいかしら」
よくわからないな。取りあえず100万としておこうか。金貨100枚あるから、金貨だけで1億か。
「金貨より高額な硬貨はありますか?」
「白金貨ってのがあるけど、ほとんど使わないわよ。金貨100枚分よ」
「え? 100枚?」
1枚1億!? あの女神、何が当座のお金だよ。11億持ってるぞ、俺。
「そうよ。白金貨は私でも見たことないわよ」
「あの、人族が滅びそうってのは?」
「滅びるっていっても種が滅亡するわけではないわ。オークと戦争になっていて、人族区が占領されそうって話よ。そうそう、あなた、オークに捕まってたんでしょ? よく逃げられたわね」
なんだ。種が滅亡するかと思ってた。占領されるってのであれば、いつかまた独立できるかもしれないし、滅亡とはえらい違いだ。
「運がよかったんですよ。西はオークの国ですよね。北はどんな国ですか?」
地図を見る限り、東と南は海だ。人族区は、西と北に国境がある。
「エルフの国よ。人族の難民を受け入れているけど、実態は奴隷として使役されているのよ。多くの人は知らないけどね」
何だよ、人族ってやられ放題じゃないか。
「人族は弱いんですか?」
「人族はオークにもエルフにも個の力で劣るのよ。チームを組んでやっと勝てるって感じね。繁殖力が高いぐらいかな、人族が勝ってるのは。年中繁殖期だからね、人族は」
なるほど。数の力でしか対抗出来ないのか。でもさ、サラリーマンの俺がこの状況をどうしろってんだよ。また過労死したくないし、11億もあるなら、スローライフを堪能したい。
早くいい上司を見つけて、丸投げすべきだ。
ただ、こんなに美しくて高貴な女の子が、初対面の俺のことを信じて、部下になると覚悟を決めている。流石に逃げたりは出来ない。
「着いたわよ。続きの話は屋敷でしましょう」
馬車を降りたら、イギリスのバッキンガム宮殿のようなお屋敷の前に使用人たちがずらりと勢ぞろいしていた。メイド服のメイドさんが大半だった。
俺は非常に豪華な客室に通された。驚いたことに、ここで暮らしていいという。
夕食のときに呼びにきてくれるそうで、それまでは客室で休むことにした。
両親に会うのかと聞いたところ、両親はここにはいなくて、王都の本邸にいるという。え? これで別邸!? 本邸はこれ以上なのだろうか。
エリザベートは姉の支援のために、しばしばこの別邸を訪れるのだそうだ。
姉のことを尊敬していることが、ヒシヒシと伝わってくる。
エリザベートが去って、俺は天蓋付きのゴージャスなベッドにダイブした。思った以上に緊張していたようで、精神的にクタクタだ。そして、俺はそのまま眠ってしまったようだ。
「ノウキ様、ノウキ様、お食事のお時間です」
んあ、誰だ?
やばい、今日納期だっ
今日が納期だと前世の記憶を引きずっていて、眠気が一気に覚めたが、自分のいる部屋を見て、だんだんと思い出して来た。そうだ、俺は異世界に転生したんだった。
ん、俺を起こしたキレイなお姉さんはどなた?
「えっと、どなたでしょうか?」
「メイド長のリリアナと申します。お嬢様が廊下でお待ちです」
ドアを開けて廊下に出ると、エリザベートが迎えに来てくれていた。赤いワンピースに着替えている。家ではカジュアルな衣装のようだ。
しかし、この子は本当に綺麗だな。
「私に見惚れてないで、さっさと行くわよ」
あ、図星をつかれた。
でも、エリザベートは上機嫌で、ダイニングルームに俺を引っ張って行った。
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