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第二章 オークの国
奇襲攻撃
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オークの国の首都の夜空に浮かぶ二十数名の人影に気づくオークはいなかった。
標的は陸軍省だった。
陸軍省の建物にだけ震度8の地震が発生し、数百もの落雷があり、最後に竜巻が巻き起こって、遂には建物が倒壊してしまった。
当然中にいたオークは死亡したはずだが、死霊系魔法によりさまざまなアンデッドに変貌し、瓦礫の山から這い出て来て、首都の建物を手当たり次第に破壊し始めた。
直ぐに警官隊が出動し、アンデッドに対応するが、空から隕石が警官隊だけに次々に降り注ぎ、さらにアンデッドが増えていく。
遂には軍隊が出動するが、デスの魔法が吹き荒れ、兵士たちは命を落としていく。そして、またアンデッドと化す。
首都は大混乱だ。
***
ゼットンは国内に数人しかいない超希少種のオークジェネラルだ。陸軍トップの総司令官でもある。首都郊外の陸軍基地で参謀たちと作戦会議を行っていたところに、部下が飛び込んできた。
「首都が敵からの奇襲を受け、大混乱に陥っています!」
ゼットンは被害の詳細を聞き、魔法部隊による攻撃と判断し、すぐに魔法部隊を出動させた。
上空に浮かぶ多数の人影の目撃情報がようやくオークの上層部の耳に届いたのだ。
「人族の奇襲にしては報告される魔法のレベルがおかしいです。ドラゴンと同盟でも結んで、龍人が攻めて来たのではないでしょうか」
副官のコオロが不確かなことを言う。コオロの悪い癖だ。
「推測など口にするな。速やかに調査して、事実を報告しろ」
コオロは頭をかきながら退室した。すぐに精度の高い情報を持って来るだろう。
「アースクエイク、ビリオンサンダー、グレートトルネード、クリエイトアンデッド、メテオフォールにワイドエリアデスか。報告が事実だとすれば、超上位魔法のオンパレードだ。人族ではないと思うが、龍人であっても、我が魔法部隊に敗戦はあり得ない」
ゼットンは鍛えに鍛えたオークの魔法部隊に絶大なる自信を持っていた。オークの魔法部隊は500名。一人一人が人族の聖女に匹敵する魔法使いだ。魔法レベルの低い人族では相手にならない。龍人はレベルが高く手強いが、人数が少ないため、総合力ではオークの魔法部隊の方が勝っている。
魔法部隊を出撃させたことですっかり安心したゼットンは参謀たちと作戦会議を再開した。
***
首都の惨状ぶりを眼下に見て、ノウキはエリザベートに語りかけた。
「こんなものでいいですかね。アンデッドはオークを襲ってはいないようですね。あの数をコントロールできるなんて、エリザベートはやはり凄いですね」
エリザベートはノウキの右半身を抱えてくれている。ふんわりと薔薇のような香りがする。いつものエリザベートの香りだ。
「建物を壊せ、とだけ命令しているだけで、コントロールは不要なのよ。そんなに難しくないわよ」
エリザベートは照れを隠すようなぶっきらぼうな言い方をした。エリザベートらしい反応だ。
「私の出番がないのよね」
左半身を支えているマリエールが愚痴った。マリエールはうっすらと柑橘系の香りがする。
ああ、なんて幸せなんだ
ノウキが二人の美女に両脇を柔らかく抱えられて、幸せを噛み締めていたとき、マリエールが叫んだ。
「全員、タイムレジストして、後方からの魔法攻撃を急上昇して回避して!! いくわよ、ストップタイム!」
時空魔法の究極奥義ストップタイム。マリエールは5秒もの時間を止められるようになっていた。無詠唱で発動出来るが、味方がタイムレジストできるようにわざと詠唱している。
エリザベートとメイドメイジたちはタイムレジストに成功し、遠方からいつの間にか発せらた数百ものナパーム弾を回避するため、マリエールとともに急上昇する。
ノウキはレジストに失敗して置いていかれるが、瞬間移動で逃げられる。
5秒後、時間が動き出す。
ノウキはすぐに瞬間移動でマリエールとエリザベートに囲まれた幸せ空間に逃げ込む。
ナパーム弾の奇襲攻撃をかけたオークの魔法部隊もフライの魔法で飛行中だった。前方に見えていた敵の魔法部隊の姿が急に消えて、ナパーム弾が誰もいない空間を突き抜けて行く。
「もう一度、タイムレジストして、今度は後方の魔法部隊に反転して攻撃して。いくわよ、ストップタイム!!」
ノウキ以外の全員が反転し、敵を捉えた。燃えさかる首都の炎で暗闇が照らし出され、数百ものオークの魔法部隊が夜空に浮かび上がる。ストップタイム発動中のため、首都の炎もオークたちも写真のように動かない。
ノウキはまたもやレジストに失敗しており、彼の時間は止まったままだ。ノウキはこの中では魔法使いとしてのレベルが最も低く、レジスト出来る確率は高くないのだ。
エリザベートがワイドエリアデスを発動させる。デスは術者が発動させるときに死のオーラが出るため、上位者にはレジストされやすい。だが、タイプストップ中に発動させると、時間が動き出してから、術者の雰囲気が変わらないまま魔法が突然相手に襲いかかるため、レジストしにくい。
メイドメイジたちもそれぞれの得意の魔法を発動させた。
5秒後、時間が動き出す。
気配が全く感じられないワイドエリアデスがオークの魔法部隊に炸裂した。即死耐性のあるもの以外は墜落して行き、地上でアンデッドの魔法使いであるリッチへと変貌する。
生き残った五十人ほどには、雷、炎、風などの属性の超上位魔法が雨あられと降り注いだ。
それでも何人かは耐えたようだが、もう魔法戦を行う気力は残ってはいなかった。次々と戦線を離脱して、下の方に逃げ落ちていく。
ノウキはもう一度、首都の状況を見た。教会から神官が出て来たようで、アンデッドは浄化され始めたようだ。今回はこれぐらいでいいだろう。ノウキは部下たちに指令を下す。
「奇襲は成功です。さあ、もう帰りましょう。私は先にカトリーヌ将軍に報告を入れます。マリエールは万一に備えて、エリザベートたちと一緒に帰還してください」
そう言い残して、ノウキの姿が消えた。
マリエールとエリザベートはお互いに微笑みあってから、ベース基地に向かって飛行を開始した。
メイドメイジ部隊はノウキの命令をそつなくこなしていることに無情の喜びを感じながら、二人に続いた。
標的は陸軍省だった。
陸軍省の建物にだけ震度8の地震が発生し、数百もの落雷があり、最後に竜巻が巻き起こって、遂には建物が倒壊してしまった。
当然中にいたオークは死亡したはずだが、死霊系魔法によりさまざまなアンデッドに変貌し、瓦礫の山から這い出て来て、首都の建物を手当たり次第に破壊し始めた。
直ぐに警官隊が出動し、アンデッドに対応するが、空から隕石が警官隊だけに次々に降り注ぎ、さらにアンデッドが増えていく。
遂には軍隊が出動するが、デスの魔法が吹き荒れ、兵士たちは命を落としていく。そして、またアンデッドと化す。
首都は大混乱だ。
***
ゼットンは国内に数人しかいない超希少種のオークジェネラルだ。陸軍トップの総司令官でもある。首都郊外の陸軍基地で参謀たちと作戦会議を行っていたところに、部下が飛び込んできた。
「首都が敵からの奇襲を受け、大混乱に陥っています!」
ゼットンは被害の詳細を聞き、魔法部隊による攻撃と判断し、すぐに魔法部隊を出動させた。
上空に浮かぶ多数の人影の目撃情報がようやくオークの上層部の耳に届いたのだ。
「人族の奇襲にしては報告される魔法のレベルがおかしいです。ドラゴンと同盟でも結んで、龍人が攻めて来たのではないでしょうか」
副官のコオロが不確かなことを言う。コオロの悪い癖だ。
「推測など口にするな。速やかに調査して、事実を報告しろ」
コオロは頭をかきながら退室した。すぐに精度の高い情報を持って来るだろう。
「アースクエイク、ビリオンサンダー、グレートトルネード、クリエイトアンデッド、メテオフォールにワイドエリアデスか。報告が事実だとすれば、超上位魔法のオンパレードだ。人族ではないと思うが、龍人であっても、我が魔法部隊に敗戦はあり得ない」
ゼットンは鍛えに鍛えたオークの魔法部隊に絶大なる自信を持っていた。オークの魔法部隊は500名。一人一人が人族の聖女に匹敵する魔法使いだ。魔法レベルの低い人族では相手にならない。龍人はレベルが高く手強いが、人数が少ないため、総合力ではオークの魔法部隊の方が勝っている。
魔法部隊を出撃させたことですっかり安心したゼットンは参謀たちと作戦会議を再開した。
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首都の惨状ぶりを眼下に見て、ノウキはエリザベートに語りかけた。
「こんなものでいいですかね。アンデッドはオークを襲ってはいないようですね。あの数をコントロールできるなんて、エリザベートはやはり凄いですね」
エリザベートはノウキの右半身を抱えてくれている。ふんわりと薔薇のような香りがする。いつものエリザベートの香りだ。
「建物を壊せ、とだけ命令しているだけで、コントロールは不要なのよ。そんなに難しくないわよ」
エリザベートは照れを隠すようなぶっきらぼうな言い方をした。エリザベートらしい反応だ。
「私の出番がないのよね」
左半身を支えているマリエールが愚痴った。マリエールはうっすらと柑橘系の香りがする。
ああ、なんて幸せなんだ
ノウキが二人の美女に両脇を柔らかく抱えられて、幸せを噛み締めていたとき、マリエールが叫んだ。
「全員、タイムレジストして、後方からの魔法攻撃を急上昇して回避して!! いくわよ、ストップタイム!」
時空魔法の究極奥義ストップタイム。マリエールは5秒もの時間を止められるようになっていた。無詠唱で発動出来るが、味方がタイムレジストできるようにわざと詠唱している。
エリザベートとメイドメイジたちはタイムレジストに成功し、遠方からいつの間にか発せらた数百ものナパーム弾を回避するため、マリエールとともに急上昇する。
ノウキはレジストに失敗して置いていかれるが、瞬間移動で逃げられる。
5秒後、時間が動き出す。
ノウキはすぐに瞬間移動でマリエールとエリザベートに囲まれた幸せ空間に逃げ込む。
ナパーム弾の奇襲攻撃をかけたオークの魔法部隊もフライの魔法で飛行中だった。前方に見えていた敵の魔法部隊の姿が急に消えて、ナパーム弾が誰もいない空間を突き抜けて行く。
「もう一度、タイムレジストして、今度は後方の魔法部隊に反転して攻撃して。いくわよ、ストップタイム!!」
ノウキ以外の全員が反転し、敵を捉えた。燃えさかる首都の炎で暗闇が照らし出され、数百ものオークの魔法部隊が夜空に浮かび上がる。ストップタイム発動中のため、首都の炎もオークたちも写真のように動かない。
ノウキはまたもやレジストに失敗しており、彼の時間は止まったままだ。ノウキはこの中では魔法使いとしてのレベルが最も低く、レジスト出来る確率は高くないのだ。
エリザベートがワイドエリアデスを発動させる。デスは術者が発動させるときに死のオーラが出るため、上位者にはレジストされやすい。だが、タイプストップ中に発動させると、時間が動き出してから、術者の雰囲気が変わらないまま魔法が突然相手に襲いかかるため、レジストしにくい。
メイドメイジたちもそれぞれの得意の魔法を発動させた。
5秒後、時間が動き出す。
気配が全く感じられないワイドエリアデスがオークの魔法部隊に炸裂した。即死耐性のあるもの以外は墜落して行き、地上でアンデッドの魔法使いであるリッチへと変貌する。
生き残った五十人ほどには、雷、炎、風などの属性の超上位魔法が雨あられと降り注いだ。
それでも何人かは耐えたようだが、もう魔法戦を行う気力は残ってはいなかった。次々と戦線を離脱して、下の方に逃げ落ちていく。
ノウキはもう一度、首都の状況を見た。教会から神官が出て来たようで、アンデッドは浄化され始めたようだ。今回はこれぐらいでいいだろう。ノウキは部下たちに指令を下す。
「奇襲は成功です。さあ、もう帰りましょう。私は先にカトリーヌ将軍に報告を入れます。マリエールは万一に備えて、エリザベートたちと一緒に帰還してください」
そう言い残して、ノウキの姿が消えた。
マリエールとエリザベートはお互いに微笑みあってから、ベース基地に向かって飛行を開始した。
メイドメイジ部隊はノウキの命令をそつなくこなしていることに無情の喜びを感じながら、二人に続いた。
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