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2 道すがら教えてもらう
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へヴガイドル王国の、メイコスの森から一番近いギルドのある町は「ノーティウス」だそうで、歩きで2・3日ほどかかるらしい。
ちなみにギルドは大きめの町には大抵あって、あれだ、ほら、身分証明書みたいなの出してくれる役所と、職業斡旋所?が合わさったみたいな感じ。
一晩寝ても、状況が変わらなかったので、もうここでどうにかしていくしかないんだと覚悟を決めて、俺はダグラスの好意に甘えた。
幸いにも頭は大きな傷にはなっていなくて、たんこぶがあるだけだった。
ダグラスは素晴らしい事に氷が出せる魔法ってやつを使えたので、しばらく冷やして一晩寝たらだいぶマシになった。
「ソウタ、そろそろ行くぞ」
「うん。あ、ダグラス、これ、これって薬草?」
「ああ?よく見つけたな。これはこっちより高く買い取ってもらえる」
「マジか!これあそこに沢山ある。もう少し採ってきてもいい?えっと、これは上の部分だけでいいんだよね?」
「ああ、葉と茎の部分だけで買い取ってもらえる。根はそのままにしておかないと次が生えないからな」
「わかった!ありがとう」
うん。やっぱり俺の視界に映っている情報は間違いがないらしい。
お金がないって言ったら、足しにはなるだろうって、ギルドに行くまでの間、俺は教えられるままに薬草を摘んでいる。
で、何でか知らないけど、見えるんだよね。草の名前が。
まるでゲームとかの画面みたいに、これなに?とか、薬草どれ?とか思うとタグみたいな感じに情報が視界に出てくるんだ。
これって、もしかして転生のおまけみたいなやつなのかな。
ほんとに俺、異世界転生とか、異世界転移とかってやつなのかな?
大体、基本的な事として俺は俺のままなのかな。
鏡がないからよくわからないんだよね。
だって、俺は元の世界でそんなに子供に見られたことはない。
もしかしたらこの世界の子供が、ものすごく大人びているのかもしれないけど。
でもそうしたら30代に見えているダグラスはもっと若いのかな。
そんな事を考えながら、ダグラスが貸してくれたマジックポーチとかいう収納入れの中に採った薬草を入れて、俺はダグラスの所は戻った。
「ごめん、時間かかって」
「いや、どのみち今日中にはノーティウスにもその手前の村にも着けないから同じだ」
ダグラスはそう言って歩き出した。
俺もその隣に並んで歩き出す。
「ねぇ、メイコスの森みたいにこの辺には小屋とかはないの?」
「ない。この辺りはそれほど強い魔物は出ないから、わざわざ除ける術を施したような小屋は必要ないんだ」
「え?あの小屋って魔物除けの術がかかっていたの?」
「ああ、言ってなかったか。そうだ。そのおかげで見張りを立てなくても眠ることができる。この辺りは野宿だな。この先に商隊が休むようなところがあるから、今日はそこまで行く。うまく商隊が居れば交代で見張りが出来るからな」
「ふぅん。そっか。わかった」
本当は分かったような分からないような感じだけど、とにかく安心して?野宿が出来る場所まで歩かないと駄目なのは分かった。
ダグラスは俺が本当に何も知らない事が分かると、歩きながらこの世界の事を教えてくれた。
今俺たちがいるへヴガイドル王国は、東を海、西をサダルシア王国、南をエステイド王国とマルメリアン王国、北をミルダン国とボルジダン王国で海以外の外側はものすごい高い山に囲まれていて、他の国はよくわからないんだろうだ。
海の向こうにも山の向こうにも他の国が存在するかもしれないが、交流はない。
ようするにこの6か国で事足りているというか、成り立っている世界なんだな。
北のミルダン以外は王政。どこも統治は安定して比較的穏やか。他の国とも友好的な関係らしい。
ミルダンは民主主義の国で、ここもまたそれなりに平和。
まぁ6つの国で回っている世界なんだから、そんなにやんちゃな国もないって事なのかな。
戦争がない国から来た俺にとってはそれだけでもありがたい。
へヴガイドルは海があるためか、商業が盛んな国でもあるそうで、商隊が行き来をしていることが多い。
ちなみに海があるのはへヴガイドルの他は南のエステイド王国とマルメリアン王国。
そんな感じで国の話、通貨の話、それから魔法の話を聞きながら歩いて、疲れてくると休んで、薬草摘んで、歩いて………。
そんなことをしていると、夕暮れ色の先にいくつかの馬車が見えた。
「ああ、ツイてるな。商隊がいる。うまくいけば保存食じゃないものが食えるぞ」
「え?マジ?やった!」
ダグラスの言葉に俺は思わずガッツポーズをしていた。
だってしょっぱくて固い干肉?は本当に顎が疲れるから、それじゃないのがあったらすごく嬉しい。
さすがに痛み始めている足に最後の力を入れるようにして、俺は、それでもきっと加減をして歩いているだろうダグラスの横に並んだ。
-*-*-*-*-*-*-
「馬だ~」
ダグラスが商隊の隣にテントを張らしてもらってもいいか聞きに行っている間、俺は並ぶ馬車を眺めていた。
大きな商隊なのか馬車は5台もあって、馬は2頭だて。
つまり10頭の馬が飼葉をもらって休んでいる。
「すげー。っていうか、馬は変わらないんだな」
自分の知っている馬と見た目は変わらない。
サラブレッドというよりは道産子系のどっしりとした感じだ。
「なんだ、坊主。馬が珍しいのか?」
商隊の人なのか、髭の生えたオヤジが話しかけてきた。
「あ、はい」
「どこからきたんだ?」
「えっと、東の方」
「東?」
「ああっとこれからノーティウスのギルドに行くんだ」
「ノーティウスのギルド?じゃあお前冒険者なのか?登録できないだろう?」
男は眉を寄せていぶかし気な表情を浮かべた。
「え?なんで?」
「ギルドに登録できるのは15歳以上だ」
「俺、19だし」
「はぁ!?」
ああ、またもやでかい「はぁ?」をいただきましたよ。
俺一体何歳に見えてるんだろう?
「ええと、俺、何歳に見えますか?」
「ああそうだな。12か13か………」
顔を覗き込むようにして言いながら、なんだか髭オヤジの様子が変。
え?何?ちょっと顔近くない?
そんなに見なくてもわかるよね?
ギルドに登録できないと思ったって事は、15には見えないって思っていたってことでしょう?
ちょちょちょ、肩を掴むのやめてくれ!
それともこの国のスキンシップってこんな感じなの???
「ちょっと!何すんだよ!近いって!!」
近づいてくる顔をよけようとして腕を振る。
だけどそんなものは全く関係ないみたいに、今度は腰に腕が回る。
さすがにこれはおかしいと俺はオヤジの顔を押し返すようにして大声を上げた。
「やめろってば!!このくそオヤジ!!!」
「おい、何をしているんだ!」
馬車の向こうから顔を覗かせたのはダグラスだった。
「ダグラス!」
「俺の連れに何か用か?」
言いながら、いとも簡単に俺の体をひょいと自分の方に引き寄せる。
「あ………ああ、えっと………なんだか………悪かったな」
髭オヤジはそう言いながら、どこかぼんやりしたような感じで頭を振りながら去っていった。
「……何があったんだ?」
「わからない。馬を見ていたら、馬が好きなのかって聞かれて。ノーティウスのギルドに行くって言ったら15歳以上じゃないと登録できないって」
「ああ」
ダグラスは「そうだな」と言いながら頷いた。
「それで、俺が19って言ったら信じられないみたいだったから、じゃあ何歳に見えるんだって言ったらいきなり顔を近づけてきて、腰にも手を」
「………まあ、確かに19には見えないな。15も怪しい。ほら、行くぞ。見張り番の交代に組み込んでもらえた。食事も分けてもらえるそうだ」
「え!やったー!」
今の不快な出来事が一気に消し飛んで、俺は思わずぴょんと飛び跳ねた。
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ちなみにギルドは大きめの町には大抵あって、あれだ、ほら、身分証明書みたいなの出してくれる役所と、職業斡旋所?が合わさったみたいな感じ。
一晩寝ても、状況が変わらなかったので、もうここでどうにかしていくしかないんだと覚悟を決めて、俺はダグラスの好意に甘えた。
幸いにも頭は大きな傷にはなっていなくて、たんこぶがあるだけだった。
ダグラスは素晴らしい事に氷が出せる魔法ってやつを使えたので、しばらく冷やして一晩寝たらだいぶマシになった。
「ソウタ、そろそろ行くぞ」
「うん。あ、ダグラス、これ、これって薬草?」
「ああ?よく見つけたな。これはこっちより高く買い取ってもらえる」
「マジか!これあそこに沢山ある。もう少し採ってきてもいい?えっと、これは上の部分だけでいいんだよね?」
「ああ、葉と茎の部分だけで買い取ってもらえる。根はそのままにしておかないと次が生えないからな」
「わかった!ありがとう」
うん。やっぱり俺の視界に映っている情報は間違いがないらしい。
お金がないって言ったら、足しにはなるだろうって、ギルドに行くまでの間、俺は教えられるままに薬草を摘んでいる。
で、何でか知らないけど、見えるんだよね。草の名前が。
まるでゲームとかの画面みたいに、これなに?とか、薬草どれ?とか思うとタグみたいな感じに情報が視界に出てくるんだ。
これって、もしかして転生のおまけみたいなやつなのかな。
ほんとに俺、異世界転生とか、異世界転移とかってやつなのかな?
大体、基本的な事として俺は俺のままなのかな。
鏡がないからよくわからないんだよね。
だって、俺は元の世界でそんなに子供に見られたことはない。
もしかしたらこの世界の子供が、ものすごく大人びているのかもしれないけど。
でもそうしたら30代に見えているダグラスはもっと若いのかな。
そんな事を考えながら、ダグラスが貸してくれたマジックポーチとかいう収納入れの中に採った薬草を入れて、俺はダグラスの所は戻った。
「ごめん、時間かかって」
「いや、どのみち今日中にはノーティウスにもその手前の村にも着けないから同じだ」
ダグラスはそう言って歩き出した。
俺もその隣に並んで歩き出す。
「ねぇ、メイコスの森みたいにこの辺には小屋とかはないの?」
「ない。この辺りはそれほど強い魔物は出ないから、わざわざ除ける術を施したような小屋は必要ないんだ」
「え?あの小屋って魔物除けの術がかかっていたの?」
「ああ、言ってなかったか。そうだ。そのおかげで見張りを立てなくても眠ることができる。この辺りは野宿だな。この先に商隊が休むようなところがあるから、今日はそこまで行く。うまく商隊が居れば交代で見張りが出来るからな」
「ふぅん。そっか。わかった」
本当は分かったような分からないような感じだけど、とにかく安心して?野宿が出来る場所まで歩かないと駄目なのは分かった。
ダグラスは俺が本当に何も知らない事が分かると、歩きながらこの世界の事を教えてくれた。
今俺たちがいるへヴガイドル王国は、東を海、西をサダルシア王国、南をエステイド王国とマルメリアン王国、北をミルダン国とボルジダン王国で海以外の外側はものすごい高い山に囲まれていて、他の国はよくわからないんだろうだ。
海の向こうにも山の向こうにも他の国が存在するかもしれないが、交流はない。
ようするにこの6か国で事足りているというか、成り立っている世界なんだな。
北のミルダン以外は王政。どこも統治は安定して比較的穏やか。他の国とも友好的な関係らしい。
ミルダンは民主主義の国で、ここもまたそれなりに平和。
まぁ6つの国で回っている世界なんだから、そんなにやんちゃな国もないって事なのかな。
戦争がない国から来た俺にとってはそれだけでもありがたい。
へヴガイドルは海があるためか、商業が盛んな国でもあるそうで、商隊が行き来をしていることが多い。
ちなみに海があるのはへヴガイドルの他は南のエステイド王国とマルメリアン王国。
そんな感じで国の話、通貨の話、それから魔法の話を聞きながら歩いて、疲れてくると休んで、薬草摘んで、歩いて………。
そんなことをしていると、夕暮れ色の先にいくつかの馬車が見えた。
「ああ、ツイてるな。商隊がいる。うまくいけば保存食じゃないものが食えるぞ」
「え?マジ?やった!」
ダグラスの言葉に俺は思わずガッツポーズをしていた。
だってしょっぱくて固い干肉?は本当に顎が疲れるから、それじゃないのがあったらすごく嬉しい。
さすがに痛み始めている足に最後の力を入れるようにして、俺は、それでもきっと加減をして歩いているだろうダグラスの横に並んだ。
-*-*-*-*-*-*-
「馬だ~」
ダグラスが商隊の隣にテントを張らしてもらってもいいか聞きに行っている間、俺は並ぶ馬車を眺めていた。
大きな商隊なのか馬車は5台もあって、馬は2頭だて。
つまり10頭の馬が飼葉をもらって休んでいる。
「すげー。っていうか、馬は変わらないんだな」
自分の知っている馬と見た目は変わらない。
サラブレッドというよりは道産子系のどっしりとした感じだ。
「なんだ、坊主。馬が珍しいのか?」
商隊の人なのか、髭の生えたオヤジが話しかけてきた。
「あ、はい」
「どこからきたんだ?」
「えっと、東の方」
「東?」
「ああっとこれからノーティウスのギルドに行くんだ」
「ノーティウスのギルド?じゃあお前冒険者なのか?登録できないだろう?」
男は眉を寄せていぶかし気な表情を浮かべた。
「え?なんで?」
「ギルドに登録できるのは15歳以上だ」
「俺、19だし」
「はぁ!?」
ああ、またもやでかい「はぁ?」をいただきましたよ。
俺一体何歳に見えてるんだろう?
「ええと、俺、何歳に見えますか?」
「ああそうだな。12か13か………」
顔を覗き込むようにして言いながら、なんだか髭オヤジの様子が変。
え?何?ちょっと顔近くない?
そんなに見なくてもわかるよね?
ギルドに登録できないと思ったって事は、15には見えないって思っていたってことでしょう?
ちょちょちょ、肩を掴むのやめてくれ!
それともこの国のスキンシップってこんな感じなの???
「ちょっと!何すんだよ!近いって!!」
近づいてくる顔をよけようとして腕を振る。
だけどそんなものは全く関係ないみたいに、今度は腰に腕が回る。
さすがにこれはおかしいと俺はオヤジの顔を押し返すようにして大声を上げた。
「やめろってば!!このくそオヤジ!!!」
「おい、何をしているんだ!」
馬車の向こうから顔を覗かせたのはダグラスだった。
「ダグラス!」
「俺の連れに何か用か?」
言いながら、いとも簡単に俺の体をひょいと自分の方に引き寄せる。
「あ………ああ、えっと………なんだか………悪かったな」
髭オヤジはそう言いながら、どこかぼんやりしたような感じで頭を振りながら去っていった。
「……何があったんだ?」
「わからない。馬を見ていたら、馬が好きなのかって聞かれて。ノーティウスのギルドに行くって言ったら15歳以上じゃないと登録できないって」
「ああ」
ダグラスは「そうだな」と言いながら頷いた。
「それで、俺が19って言ったら信じられないみたいだったから、じゃあ何歳に見えるんだって言ったらいきなり顔を近づけてきて、腰にも手を」
「………まあ、確かに19には見えないな。15も怪しい。ほら、行くぞ。見張り番の交代に組み込んでもらえた。食事も分けてもらえるそうだ」
「え!やったー!」
今の不快な出来事が一気に消し飛んで、俺は思わずぴょんと飛び跳ねた。
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応援ありがとうございます!
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