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9 お風呂があったなんて!

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ノーティウスは結構大きな町で、普通に路面店もあれば、お祭りみたいな屋台みたいな店もあって、市場みたいな所もある。
日本でも電気街とか問屋街とか専門的な感じの店が集まっているところがあったけど、ここもそんな感じで同じような店が集まっている所がある。

魔道具というものを扱うような店や工房
剣とか盾とか弓とかそういう武器みたいなものを扱う店や工房。
装飾品、服、雑貨……。
知っているようなものもあれば、これは一体何に使うんだろうと思うようなものもある。


ダグラスに「ここだ」と言われて入ったのは古着屋だった。
新しい服っていうのはあんまりなくて、こうした古着屋がほとんどだ。
そこで数着の服を買った………正しくは買ってもらった。
それから大きめの肩からかける、いわゆるななめ掛けバッグも買った。
これは銀貨1枚だったから自分で買った。
あとは何となく屋台をひやかしながら、串焼きみたいなのを一つ買った。
結構スパイス?が効いてて美味かった。

ダグラスが武器屋も見たいっていうから一緒に行った。
薬草をとるのに便利そうな小さなナイフを買ってもらった。
なんだか申し訳なかったけど、いつか倍返ししようと心の奥で誓っておく。


そうして、宿屋に戻ってきて、夕食を食べて……


「え?マジ?ほんとに?」
「何を言ってるんだ。当たり前だろう。さっさと入って寝ろ」
「わ~~~!!ほんとに風呂だ~~!しかも広め~~!」

教えられた扉を開けて、見慣れたスペースを見た途端、俺は歓喜してた。
だってまさかこの世界に風呂があるなんて思ってもみなかったんだよ!

「ダグラス!風呂ってさ、裸になって、身体とか髪とか洗って、湯船でゆったりつかる、で間違いない?この世界、入り方違うとか言う?」
「言わない。とにかく落ち着け。なんだったら一緒に入ってやろうか?」
「狭くなるからいい。同じなら何の問題もない!あ、待ってお湯、お湯ってどうやって出すの?温度の調節は?」
「…………今日は、一緒に入ろう」
「ええ~」

ブツブツ言いながら俺は結局ダグラスと一緒に風呂に入ることになった。
だってさ、魔石がどうとか、魔力がどうとか言って、お湯が出せなかったんだ。
この世界ってさ、魔力ありきで出来ているんだな。
昼間の同性同士でどうのこうのっていう話を思い出して一瞬躊躇したけど、風呂には敵わない。
まぁ、銭湯に行ったと思えばさ、全然問題ないしね。


-*-*-*-*-


「ほら、これくらいでいいか?」
「うんうん。すげー気持ちいい。生き返る」
「死んでもいないのに生き返るのか?お前の世界は変な世界だな」

苦笑しながらも、気配りのイケオジは風呂でも有能。
ちょうどよい温度のお湯が魔石っていう綺麗な石の入ったレバーを押すと、蛇口みたいな所から出てくる。
そして驚くことにシャワーもある。
よく温泉にある感じの上のレバーを押すとシャワーで下のレバーを押すと蛇口から出る奴だ。

「言葉のあやだよ。あや……はわからないか。なぁ、これ考えたの絶対に異界渡りだろう?」
「ああ、そう言えばそんな事を聞いたな」

ダグラスは自分にも湯をかけながら答えた。

「やっぱり。絶対に日本人だな。この蛇口にこのシャワー。しかもこの湯船」
「二ホンジンは風呂好きが多いのか?」
「うん。毎日入るよ。大体の人が」
「へえ」
「ユニットバスでなくて本当によかった。こんなにちゃんとした風呂なんて」

しかも男二人が入っても身動きがとれるくらいの大きさなんて。
さすがに湯船に二人は無理だけど(出来てもやりたくないけど)一人が洗って、一人が浸かれば何の問題もない。
さっさと洗って湯船に浸かると自然に「あ~~~」って声が出た。
それを聞いてダグラスが吹き出す。

「どっちがおっさんだよ」
「いいの。風呂は日本人にとって心の友なの。それよりも一人でもお湯が出るように、その魔力の流し方とかいうの教えてくれ」
「ああ、とりあえず魔力操作は明日な。ここでレクチャーしてたらのぼせる」
「ああ、うん。そうだよね」

俺は頷きながら、改めてダグラスを見た。
風呂の方に夢中過ぎて気づかなかったけどすごい筋肉だな。
しかもものすごく傷がある。

「ねぇ、その傷って冒険者やっててできたの?」
「ああ?まあそうだな」
「やっぱり魔物とか出るの?会った時もコボルト?とか言ってたもんね」
「ああ、出るよ。それを倒せば金になる。素材が売れるし、魔石も出るからな。強い奴ほど強い魔石を持っているんだ」
「ふ~ん」
「それにしてもソウタは細くて色が白いな」
「!!み、見るなよ」
「はぁ!?風呂でそれは無理だろう?お互い様だ」
「………だよね。熱くなった。もう出る」
「ああ、出してあるタオルでちゃんと拭いて、水飲んでおけよ」
「分かった」

ダグラスの対応はどこまでも子供扱いだ。
まぁこの世界では子供なんだからしょうがない。
何となく、前を隠してザブっと湯船から出ると入れ違いにダグラスが湯船に入る。
あ、つい見ちゃった。うん。でかい。

「ベッド、好きな方で寝てていいぞ」
「………いや、さすがにあんたが出てくるくらいは起きてるよ」
「おやすみソウタ」
「話を聞け、おっさん」


だけどパジャマ代わりの服を着てベッドに転がった途端、俺の意識は急速に落ちていった。
微かに、ダグラスの笑い声と「おやすみ」という声が聞こえたような気がした。


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