カミサマの父子手帳～異世界子育て日記～

幕間１

経過観察

 試験官テバッガとして黒部勇人をラフィーアに送り込んでから２週間が過ぎた。
 その間定期的に観察を続けているが、今回は順調に推移している。
 やり過ぎず大人しすぎず、彼は関わるものに好影響を与え始めている。
 彼の魂の影響により、新たな女神の御子は魔族の姿になった。
 ラフィーアに設定した人型の種族は多様性に富んでいる。純粋な人間はすでに滅び、魔法の使える亜種になった。
 亜人デミヒューマンの３割が人族で、３割がホビット、２割が数種のエルフ族。残り２割にリザードマンや翼人、そして魔族などの少数種族が存在している。
 クライアントの要望である『破綻の無い剣と魔法の世界ファンタジー』には均衡が必要だ。
 それも、管理者アドミニストレータが意図したものではなく、ラフィーアの中で生きる試験官テバッガと女神の御子、そして居住者ゲスト達の意思による均衡でなければならない。
 女神の御子同士で派閥争いが発生し、それに牽引される形で多くの国が動き始めている。十分とは言えないが、ラフィーアは自ら行く末を選択できるほどに成長したのかもしれない。
 女神として歪みを正せば、ラフィーアの成長は鈍化する。それは計画の遅延に直結してしまう。
 ならば、しばらくは女神フィオネスとしてではなく、管理者アドミニストレータウェンディとして、ラフィーアを観察することにしよう。
 私の手から完全に離れたとき、ラフィーアは１つの器として完成するのだからーーー。