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二章
それぞれの出来ること
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俺が念話を終えるとすぐに、ドミニクが呼びに来た。俺の話が終わるのを待っていたらしい。
ドミニクと共にデニス達の近くに歩いていくと、俺の顔を見たトロイアーノが頭を下げてきた。周りのお供が慌ててトロイアーノを制止する。
「いけません将軍!」
「兵が見ているのですよ!」
お供2人がそんなことを言っている。トロイアーノは苦い顔をしながら顔を上げた。
「ボウズ、先に言っとくぞ。将軍から俺らに頼みがあるんだと」
「既に話は聞いたのだが、小僧次第の内容なのでな」
言いながらデニス達は俺に道を開ける。トロイアーノの頼み?
「俺次第って?」
デニスに聞いてみると視線をトロイアーノに向けた。直接聞けってことらしい。
俺もトロイアーノに目を向けると、苦い顔をしたトロイアーノが俺を真っ直ぐに見ていた。
「渡人殿。我が国を、陛下を救っていただけないだろうか……」
「無理です」
俺はトロイアーノの頼みに即答する。
「貴様!」
「将軍が恥を偲んで!」
「ボウズ、いくらなんでも言い方ってもんが……」
「小僧……」
好き勝手言うなよ。俺はテオロス人じゃないっつーの。俺が見回すと周りが静かになった。
トロイアーノは表情を変えずに直立している。
「将軍。確かに俺は渡人です。でも俺は冒険者なんですよ」
トロイアーノは俺の言葉を静かに聞いている。
「冒険者に国は救えない。冒険者でしかありませんから」
さっきのジョエルとの話と同じだ。
「俺にできるのは2つ。1つは、先程テオロス軍に使ったものと同じ魔法をテオロス帝国全土に使うこと」
トロイアーノが苦い顔を和らげる。
「もう1つは、テオロス城にいる渡人を何とかすること。それだけです」
トロイアーノが笑った。
「確かに、渡人殿には我が国を救うことはできないようだ」
「……もったいぶりやがって」
「素直じゃないな……」
「大事なことだって。さっき言ったことをしても状況に変化は無いだろ。テオロス帝国が始めた戦争は、テオロス帝国が終わらせないと終わらないんだよ」
ゲームじゃないんだから、ヒーローがボスを倒して終わりじゃないの。魔王を倒すのとは違うんだぞ?
「ははははっ!」
トロイアーノが声をあげて笑った。全員がトロイアーノを見つめる。何が面白かったのか目に涙まで浮かべてるよ、このイケメン。
「いや、すまない。その通りだ、渡人殿。では……」
トロイアーノがまだ何か言おうとしていたが、俺は右手を挙げて話を止める。
「俺からも話があります。みなさんが話をしている間に魔力探知でテオロス帝国を探っていました」
ドミニクが苦笑し、デニスが右手で額を覆う。トロイアーノは驚いていた。
「テオロス城のある街以外は、青い魔力を赤い魔力が覆っているだけですね。テオロス城のある街も街中は他の街と同じ状況です」
将軍のお供はそれぞれに何か言っている。勝手なことを、とか、できるわけがない、とか。
俺はいちいち相手にする気も無いので先を続ける。
「問題はテオロス城。この中にいるほとんどの魔力は青い魔力を赤い魔力が覆っている状態です。ただ、いくつか赤い魔力がいます」
俺は再度周囲を見渡す。深呼吸を1つ。
「そして、白い魔力もそこにいます。黒く濁ってますが、渡人で間違いないはず。将軍、心当たりは?」
トロイアーノが頷く。
「クレイシャン殿だ。3年程前に、我が国に流れ着いた渡人だ。魔法の研究のために諸国を巡っていると言っていた。それが半年前に、我が軍の戦力増強に役立つ魔法が完成したと言って陛下に面会を求めて……」
「そこで魔法をかけられた?」
「……恐らく」
トロイアーノがまた苦い顔をする。なるほどね、3年前から準備して、半年前に仕上げに入った、と。
「ところで将軍。盗賊ギルドと付き合いはありますか?」
「いや……?」
トロイアーノは知らないみたいだ。お供に視線をやると、揃って首を横に振ってるな。
じゃあ、盗賊ギルドにあの依頼をしたのは誰だ?
ここにいるテオロス軍は人間だけだったんだよな。
……すっかり忘れてたけど、人造魔獣は?
「盗賊ギルドが、何か?」
「いや、ご存じなければ構いません。クレイシャンに聞くことにします」
そろそろ日が沈む。東の空にはもう星が見える。
「将軍、失礼します」
「……む?」
魔力探知でトロイアーノとそのお供を捕捉。持続時間は……2刻でいいか。
「軽身っ!硬身っ!」
一瞬、3人を光が包む。3人の青い魔力を、俺の白い魔力が覆っていく。
「ボウズ、何考えてんだ!?」
「何って、一緒に城まで行ってもらわないと、不法侵入になるじゃないか」
「渡人殿……これは一体?」
光が収まると、3人は呆然としていた。
「俺の魔法でみなさんの重さを1割にしました。ついでに魔力の鎧もつけてます。俺を城まで連れていってください」
俺がそう言うと、デニスがわざとらしく咳払いをした。
「ウホン。小僧、これは他国の問題だぞ?」
「分かってるよ。俺はクレイシャンに関わることを処理しに行くだけだ」
「……よく言う」
ため息をつきながらデニスが苦笑し、ドミニクが頷く。
「しゃあねえな。俺もついていくぞ?とっつぁんは、みんなを連れて先に戻ってくれや」
物好きだね、大型犬。いいことを教えてやろう。
「こっから先はタダ働きだぞ?」
「……しゃあねえな。ベルセンに帰ったら、酒でも奢れや」
「勝手についてくんのに?」
「やかましい、俺はお前のお守りで行くんだよ」
「頼んでねえって」
そんなやりとりをしているとトロイアーノが楽しげに笑った。
「ははははっ!心配するな。報酬なら、我が国が、いや、私が個人的に……」
「いりませんよ。そんなもん」
後々面倒になりそうな報酬なんかいらん。ドミニクも笑いながら頷いている。
「代わりに、後始末をよろしく」
トロイアーノがきょとんとし、また笑った。よく笑う人だ。
「それから、俺はユートです。将軍」
気がつけば俺も笑っていた。
ーーーーーーーーーー
俺達5人は、月明かりの下をテオロス帝国の首都に向けて走っている。
目指す首都の名はラートリス。その中央にテオロス城があるらしい。
正気に戻ったテオロス軍は、将軍トロイアーノの命令によって、来た道を引き返している。街の洗脳はまだ解いていないから、街の近くに待機させておくらしい。
テオロス城に向かっているのは、俺とドミニク、そしてトロイアーノと2人のお供だ。
既に俺達はテオロス帝国の領内に入っている。ここに来るまでに、パルジャンス王国の物見台が6ヶ所瓦礫になっていた。瓦礫の隙間から衛士達の手足が見えていたが、心の中で手を合わせて先を急ぐ。彼らの手足はまるで彫刻のように微動だにしない。やっぱり、手遅れだったんだな。
「彼らには、申し訳ないことをした……」
洗脳中の記憶が残ってるってのは厄介だな。トロイアーノ達3人が暗い顔をしている。俺は前を走るトロイアーノの横に並ぶ。
「遺体の保護をお願いします」
何の償いにもならないだろうが、やらないよりいいだろう。トロイアーノが頷いたので、俺はまた後ろに下がった。ラフィーアの宗教なんか知らないが、野晒しってのも可哀想だしな。疫病のことを考えると火葬か埋葬をすべきなんだろうが、俺にそれを言う権利は無いしな。それにこの辺りは気温が低いから、すぐに腐敗するってのも無いだろ。
あとは任すよ、将軍殿。
「おい、よかったのか?」
「何が?」
後ろに下がるとドミニクが話しかけてきた。
「あの2人だよ。ありゃ納得いってなかったぜ?」
あー、チコとアムルスのことか。ついてくるってぎゃあぎゃあ騒いでたもんな。
「いいんだよ。あいつらはクロノリヤの住人だ。ついてくるべきじゃない」
なんとか宥めて、デニス達とベルセンに向かってもらったが。全く、言い出したら聞かねえんだもんな。
「あの子達はお前が心配なんだよ」
「ついてこられたら俺が心配するね。ほんとならドミニクだって追い返したいくらいだ」
こっちも本音だ。
「やかましい。お前を置いて帰ってみろ。マンハイムの連中に、何言われるか分かったもんじゃねえ」
「何も言われないだろ。俺が勝手に動いてるだけだ。オーナーも諦めてたし」
「ふんっ。まあいい。ベルセンに戻った時に分かるさ」
それっきりドミニクがにやにや笑うだけで何も言わなくなったので、俺達は無言で先を急いだ。
そのまま半刻程走ると、目的の街、ラートリスが見えてきた。
外壁はベルセンのように高く、閉じた門が見えている。
「皆、こっちだ」
門を迂回するトロイアーノ達の後に続いて林の中に入る。少し進むと古井戸が見えてきた。
よくある話だな。
「城への抜け道ですか?」
「……よくわかったな」
「俺のいた世界だとよく聞く話ですよ」
俺の言葉にトロイアーノは感心したようだった。
「そうか……いずれ塞いでおくよう陛下に申し上げておこう。だが、今は必要だ。ついてきてくれ」
トロイアーノ達が古井戸に入っていく。その後にドミニクが続き、俺は最後に古井戸に入った。
古井戸には蔦を模した縄ばしごがかけてあり、今にも切れそうな感じがする。俺が軽身を使わなかったら切れてたかもな。
古井戸の底に着くと、上からはわからなかったが横穴が掘ってあった。お供2人が先頭に立ち、俺達は奥へと向かう。
横穴の中はぼんやりと光っていて、灯りが無くても歩くことができた。よく見るとびっしりと苔が生えていて、その苔が光っているみたいだ。
しばらく歩くと、ゴツイ鉄格子の扉が見えてきた。トロイアーノが懐から鍵を出し、鍵を開ける。
「ようこそ、テオロス城へ」
「帰りはちゃんと城門から出たいもんだな、旦那」
ドミニクがおどけたように言う。トロイアーノがにやりと笑った。
「その時は、総出で見送ってやろう」
ドミニクと共にデニス達の近くに歩いていくと、俺の顔を見たトロイアーノが頭を下げてきた。周りのお供が慌ててトロイアーノを制止する。
「いけません将軍!」
「兵が見ているのですよ!」
お供2人がそんなことを言っている。トロイアーノは苦い顔をしながら顔を上げた。
「ボウズ、先に言っとくぞ。将軍から俺らに頼みがあるんだと」
「既に話は聞いたのだが、小僧次第の内容なのでな」
言いながらデニス達は俺に道を開ける。トロイアーノの頼み?
「俺次第って?」
デニスに聞いてみると視線をトロイアーノに向けた。直接聞けってことらしい。
俺もトロイアーノに目を向けると、苦い顔をしたトロイアーノが俺を真っ直ぐに見ていた。
「渡人殿。我が国を、陛下を救っていただけないだろうか……」
「無理です」
俺はトロイアーノの頼みに即答する。
「貴様!」
「将軍が恥を偲んで!」
「ボウズ、いくらなんでも言い方ってもんが……」
「小僧……」
好き勝手言うなよ。俺はテオロス人じゃないっつーの。俺が見回すと周りが静かになった。
トロイアーノは表情を変えずに直立している。
「将軍。確かに俺は渡人です。でも俺は冒険者なんですよ」
トロイアーノは俺の言葉を静かに聞いている。
「冒険者に国は救えない。冒険者でしかありませんから」
さっきのジョエルとの話と同じだ。
「俺にできるのは2つ。1つは、先程テオロス軍に使ったものと同じ魔法をテオロス帝国全土に使うこと」
トロイアーノが苦い顔を和らげる。
「もう1つは、テオロス城にいる渡人を何とかすること。それだけです」
トロイアーノが笑った。
「確かに、渡人殿には我が国を救うことはできないようだ」
「……もったいぶりやがって」
「素直じゃないな……」
「大事なことだって。さっき言ったことをしても状況に変化は無いだろ。テオロス帝国が始めた戦争は、テオロス帝国が終わらせないと終わらないんだよ」
ゲームじゃないんだから、ヒーローがボスを倒して終わりじゃないの。魔王を倒すのとは違うんだぞ?
「ははははっ!」
トロイアーノが声をあげて笑った。全員がトロイアーノを見つめる。何が面白かったのか目に涙まで浮かべてるよ、このイケメン。
「いや、すまない。その通りだ、渡人殿。では……」
トロイアーノがまだ何か言おうとしていたが、俺は右手を挙げて話を止める。
「俺からも話があります。みなさんが話をしている間に魔力探知でテオロス帝国を探っていました」
ドミニクが苦笑し、デニスが右手で額を覆う。トロイアーノは驚いていた。
「テオロス城のある街以外は、青い魔力を赤い魔力が覆っているだけですね。テオロス城のある街も街中は他の街と同じ状況です」
将軍のお供はそれぞれに何か言っている。勝手なことを、とか、できるわけがない、とか。
俺はいちいち相手にする気も無いので先を続ける。
「問題はテオロス城。この中にいるほとんどの魔力は青い魔力を赤い魔力が覆っている状態です。ただ、いくつか赤い魔力がいます」
俺は再度周囲を見渡す。深呼吸を1つ。
「そして、白い魔力もそこにいます。黒く濁ってますが、渡人で間違いないはず。将軍、心当たりは?」
トロイアーノが頷く。
「クレイシャン殿だ。3年程前に、我が国に流れ着いた渡人だ。魔法の研究のために諸国を巡っていると言っていた。それが半年前に、我が軍の戦力増強に役立つ魔法が完成したと言って陛下に面会を求めて……」
「そこで魔法をかけられた?」
「……恐らく」
トロイアーノがまた苦い顔をする。なるほどね、3年前から準備して、半年前に仕上げに入った、と。
「ところで将軍。盗賊ギルドと付き合いはありますか?」
「いや……?」
トロイアーノは知らないみたいだ。お供に視線をやると、揃って首を横に振ってるな。
じゃあ、盗賊ギルドにあの依頼をしたのは誰だ?
ここにいるテオロス軍は人間だけだったんだよな。
……すっかり忘れてたけど、人造魔獣は?
「盗賊ギルドが、何か?」
「いや、ご存じなければ構いません。クレイシャンに聞くことにします」
そろそろ日が沈む。東の空にはもう星が見える。
「将軍、失礼します」
「……む?」
魔力探知でトロイアーノとそのお供を捕捉。持続時間は……2刻でいいか。
「軽身っ!硬身っ!」
一瞬、3人を光が包む。3人の青い魔力を、俺の白い魔力が覆っていく。
「ボウズ、何考えてんだ!?」
「何って、一緒に城まで行ってもらわないと、不法侵入になるじゃないか」
「渡人殿……これは一体?」
光が収まると、3人は呆然としていた。
「俺の魔法でみなさんの重さを1割にしました。ついでに魔力の鎧もつけてます。俺を城まで連れていってください」
俺がそう言うと、デニスがわざとらしく咳払いをした。
「ウホン。小僧、これは他国の問題だぞ?」
「分かってるよ。俺はクレイシャンに関わることを処理しに行くだけだ」
「……よく言う」
ため息をつきながらデニスが苦笑し、ドミニクが頷く。
「しゃあねえな。俺もついていくぞ?とっつぁんは、みんなを連れて先に戻ってくれや」
物好きだね、大型犬。いいことを教えてやろう。
「こっから先はタダ働きだぞ?」
「……しゃあねえな。ベルセンに帰ったら、酒でも奢れや」
「勝手についてくんのに?」
「やかましい、俺はお前のお守りで行くんだよ」
「頼んでねえって」
そんなやりとりをしているとトロイアーノが楽しげに笑った。
「ははははっ!心配するな。報酬なら、我が国が、いや、私が個人的に……」
「いりませんよ。そんなもん」
後々面倒になりそうな報酬なんかいらん。ドミニクも笑いながら頷いている。
「代わりに、後始末をよろしく」
トロイアーノがきょとんとし、また笑った。よく笑う人だ。
「それから、俺はユートです。将軍」
気がつけば俺も笑っていた。
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俺達5人は、月明かりの下をテオロス帝国の首都に向けて走っている。
目指す首都の名はラートリス。その中央にテオロス城があるらしい。
正気に戻ったテオロス軍は、将軍トロイアーノの命令によって、来た道を引き返している。街の洗脳はまだ解いていないから、街の近くに待機させておくらしい。
テオロス城に向かっているのは、俺とドミニク、そしてトロイアーノと2人のお供だ。
既に俺達はテオロス帝国の領内に入っている。ここに来るまでに、パルジャンス王国の物見台が6ヶ所瓦礫になっていた。瓦礫の隙間から衛士達の手足が見えていたが、心の中で手を合わせて先を急ぐ。彼らの手足はまるで彫刻のように微動だにしない。やっぱり、手遅れだったんだな。
「彼らには、申し訳ないことをした……」
洗脳中の記憶が残ってるってのは厄介だな。トロイアーノ達3人が暗い顔をしている。俺は前を走るトロイアーノの横に並ぶ。
「遺体の保護をお願いします」
何の償いにもならないだろうが、やらないよりいいだろう。トロイアーノが頷いたので、俺はまた後ろに下がった。ラフィーアの宗教なんか知らないが、野晒しってのも可哀想だしな。疫病のことを考えると火葬か埋葬をすべきなんだろうが、俺にそれを言う権利は無いしな。それにこの辺りは気温が低いから、すぐに腐敗するってのも無いだろ。
あとは任すよ、将軍殿。
「おい、よかったのか?」
「何が?」
後ろに下がるとドミニクが話しかけてきた。
「あの2人だよ。ありゃ納得いってなかったぜ?」
あー、チコとアムルスのことか。ついてくるってぎゃあぎゃあ騒いでたもんな。
「いいんだよ。あいつらはクロノリヤの住人だ。ついてくるべきじゃない」
なんとか宥めて、デニス達とベルセンに向かってもらったが。全く、言い出したら聞かねえんだもんな。
「あの子達はお前が心配なんだよ」
「ついてこられたら俺が心配するね。ほんとならドミニクだって追い返したいくらいだ」
こっちも本音だ。
「やかましい。お前を置いて帰ってみろ。マンハイムの連中に、何言われるか分かったもんじゃねえ」
「何も言われないだろ。俺が勝手に動いてるだけだ。オーナーも諦めてたし」
「ふんっ。まあいい。ベルセンに戻った時に分かるさ」
それっきりドミニクがにやにや笑うだけで何も言わなくなったので、俺達は無言で先を急いだ。
そのまま半刻程走ると、目的の街、ラートリスが見えてきた。
外壁はベルセンのように高く、閉じた門が見えている。
「皆、こっちだ」
門を迂回するトロイアーノ達の後に続いて林の中に入る。少し進むと古井戸が見えてきた。
よくある話だな。
「城への抜け道ですか?」
「……よくわかったな」
「俺のいた世界だとよく聞く話ですよ」
俺の言葉にトロイアーノは感心したようだった。
「そうか……いずれ塞いでおくよう陛下に申し上げておこう。だが、今は必要だ。ついてきてくれ」
トロイアーノ達が古井戸に入っていく。その後にドミニクが続き、俺は最後に古井戸に入った。
古井戸には蔦を模した縄ばしごがかけてあり、今にも切れそうな感じがする。俺が軽身を使わなかったら切れてたかもな。
古井戸の底に着くと、上からはわからなかったが横穴が掘ってあった。お供2人が先頭に立ち、俺達は奥へと向かう。
横穴の中はぼんやりと光っていて、灯りが無くても歩くことができた。よく見るとびっしりと苔が生えていて、その苔が光っているみたいだ。
しばらく歩くと、ゴツイ鉄格子の扉が見えてきた。トロイアーノが懐から鍵を出し、鍵を開ける。
「ようこそ、テオロス城へ」
「帰りはちゃんと城門から出たいもんだな、旦那」
ドミニクがおどけたように言う。トロイアーノがにやりと笑った。
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