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”出逢い”
【残酷にも限度がある】
しおりを挟む少女は東アジアのとある国に住んでいた。
生活水準は最下層。
ひたすらに上流階級の人間たちの衣服を洗って、日銭を稼ぐ日々。冬は手が痺れるほどに水が冷たい。使う洗剤も皮膚には全く配慮していない物だった。ガサガサに荒れた手を、毎晩母親が油をつけて保湿してくれた。その手のなんと優しいことか。
食事は、良くて一日二食。
一食の日とてザラにあった。
しかし、母の作る具のないスープが大好物だった。
父親は町の靴磨き。
何円にもならない仕事だが、他に職業はなかった。
そんな質素な生活ながらも、父親は人一倍頑張った。
たとえ下手くそだといちゃもんをつけられて殴られても、蹴られても、稼いできた。
何とかして、娘を学校に入れるためだ。
『お前の人生をここで終わらせるわけにはいかない』
それが口癖だった。
しかし、娘は学校に行けずとも、毎日洗濯をしようとも、物乞い同然の生活だろうが、幸せだった。二人の笑顔を見て、せんべいのようなボロ布団にくるまり、墓石のように硬い枕に頭を乗っけて眠る。
そんな日々が、掛け替えのない幸福だったのだ。
だがーーーー
『逃げろ!!』
夜中に、街のギャングがやってきた。
道路工事に邪魔な家屋を立ち退かせるためだ。
それでも引っ越す金などはない。
争う声が聞こえて、部屋から顔を覗かせてしまった。
すると、銃を引き抜いている悪漢共が、こちらを見てニヤッと笑った。
『上玉が居るじゃねえか。コイツぁ金になるぜ』
下品な笑いの中で、父親は包丁を手にした。
細く肉のない腕を振り回して、悪者退治に向かったのだ。
パパァァァン!!
現実は残酷だ。
ヒーローが必ずしも勝つわけではない。
倒れ込む父に覆い被さるように、母親が護ろうとした。
『んん~年増はいらねえなぁ』
パパァァァン!!
重ね餅で、二人は事切れた。
その光景を、少女は眼球が飛び出さんばかりに見ていたのだ。
『さぁて嬢ちゃん。こっちにきなぁ』
そこからはよく覚えていない。
父親と母親の名を大声で泣き叫んでいたような気もするが、記憶がおぼろげだ。
ギャングの巣窟に、他の少女たち同様に並べられ、品定めを受けた。
着ていた服は、当然のように切り裂かれ、脱がされた。
ギャングのボスは全身を見ながら舐めるように値踏みしてきた。
『街の娼婦街に売れ。コイツなんかはイイ金に・・・・・・』
ギャングのボスが手を伸ばしてきた。
口の中に、ヤニ臭く、汗の塩味がする指がナメクジのように侵入してきた。
だが、少女は絶望はしていなかった。
ただの木偶になる気はなかったのだ。
ガブッ!!
『痛ぇ!!』
『ボス!! コイツ・・・・・・ぶち犯してやる・・・・・・!!』
『いや・・・・・・コイツには地獄を見せてやる方が良い・・・・・・日本に売れ。そこで股から血が出るまで働いて貰うとしよう・・・・・・フハハハ!!』
そうして、船に乗せられた。
檻に入れられ、手を出されそうになった。
その時も、本能に従って陰茎を噛み千切り、暴れて抵抗した。
『このガキどうしようもねえぜ!』
『薬でも使って弱らせようか?』
『いいや・・・・・・コイツの売りは『ヴァージン』にしよう。何処の誰とも知れないヤツに大切な初めてを奪われるんだ。それを想像しながら震えてな!!』
『流石はMr.リズム!! コイツにはピッタリのお仕置きですね!! ギャハハ!!』
最後まではさせなかった。
守り抜いた・・・・・・
だが、見られ、触られ、ツバを吐きかけられた。
充分に尊厳は奪われた。
そして・・・・・・混乱の中で現れた異国の男。
和服のようなものを着ている・・・・・・だが、やはり男。
男なんてどうせ自分の身体目当ての、クズばかりだ・・・・・・
最後の最後・・・・・・ヤツらが日本に上陸して、引き渡すであろうその時のために取っておいた最後の手段。
古い檻に打ち付けられていた、古い釘。
必死に爪が剥がれてもゆっくりと気づかれないように抜き、手を握りしめて中に隠してきた。
「恥ずかしいかもしれませんが、ほんの一瞬の我慢です。すぐに自由にしてあげますのでね・・・・・・」
何言ってやがる・・・・・・
どうせ、そのよく鍛えた腕で私を押さえ込んで、汚い一物を中に入れる癖に・・・・・・
ガチャン・・・・・・
時は来た・・・・・・
(今だッッ!!)
シュビッッ!!
ザグンッッ!!
応援ありがとうございます!
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