DANCING・JAEGER

第3章

【光に集まる蛾】

　頭髪が関ヶ原の決戦状態の、中年ハゲ親父が接近してくる。


　どう見てもカタギ。ヤクザには見えない。


「コレはコレは･･････龍敏の親分さん。おつとめご苦労様です」


　男は懐からケースを出すと、名刺を渡してきた。


「わたくし、横浜で不動産をやっております者でして」


「へぇ･･････」


「日頃からなにかと柴田親分からはお仕事をもらっておりまして･･････もしも不動産投資に興味を持ちましたら、わたくしめにご連絡ください･･････いい話し持ってきますので」


「わ、分かったわ･･････」


「では･･････」


　ススス･･････と会場に戻っていく男の背中を見つめながら、龍敏は名刺を適当にポケットに入れる。


「こういうことだ」


「あぁ？」


「権力･･････この力を持つ者のもとには、甘い汁を求めて多くの人間が集まる。自然と金も集まる」


「･･････つまりワシは、親父の付属品ちゅーワケか」


「親がいてこその子分だろ？」


「ヒヒヒ･･････兄弟ぃ･･････ヤクザが板についてきたやないか」