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 結果を言えば、ルーチェリア・カルンシス公爵令嬢は聖女というものらしい。




 この世界には聖女が存在するらしい。人々の邪念や怨念、邪な思考から瘴気は生まれ、それが凝り固まる前に浄化する力を持つと言う非常に尊い存在だ。
 その魔力は魔道士をも軽く凌駕し、その地位は一国の国王をも超えると言う。
 世界広と言えど聖女の数は多くは無く、そのたった一人を得るためにかつては大戦争まで起こったと言う。

 そのため、神託を得た祭司は一つの騎士団を作った。

 その名をガルンドーラ聖騎士団という。国境、性別、身分を超えてただひたすらに聖女の為に生きる騎士団。その忠誠心と能力を要したものならば誰でも入団することが出来るのだ。
 彼らの仕事は世界中に出向き、聖女の守護に努める。必要ならば聖女を保護し、相応の神殿へ送り届ける。聖女の為に存在し、聖女の為に生きる。それがこの騎士団だ。

 ガルンドーラ聖騎士団はこの日、神から一つの信託を受けた。


「アール!これから出るんだって?」

 神託が降れば迅速かつ、誠実さを持って聖女の為に馳せ参じる。騎士団随一の実力者聖騎士アールストも例外なく、例え地の果てまでも聖女の為に馳せ参じる。

「あぁ。」

「それにしても急だな?」

「今朝神託が降ったそうだ。」

 同僚の騎士と話しながらも、身の回りの荷物をまとめる手は休まない。

「今回は祭司様からお前が指名されたのだろう?」

「まあ、そうだな。」

 聖騎士の派遣は本来指名制ではない。誰もが聖女を守れるだけの実力を備えているのだから、その時に手の空いている者達が出向くのが通例であった。

「で、わざわざ小国のトルンフィスに?」

 やや呆れ顔の同僚の顔を横目で見ながらアールストは馬車に荷を積む。

「あそこに聖女の兆しなんかあったか?」

 トルンフィスは取るに足らない小国なのだ。絹生産量が多く、世界的に顧客が居るから国を保てている様なもので、国力、軍事力、世界への発言力、そのどれをとっても最弱の国だ。

「今まで兆しはなかったのだろうが、突然に目覚める方もいる。その調査も兼ねて俺なのだそうだ。」

 アールストは色素の薄い銀の髪に金の瞳という印象的な外見をしている。そしてその腕は聖騎士団一だ。見た目も、実力もピカイチの者がこの度選ばれた。

「相当な力のある方…か?」

「それを見定めるのも俺の役目だな。」

 一通り荷を積み終えると、ひらりと愛馬に跨って、従者と共に出発する。仲間との別れを惜しむよりも、聖騎士の優先順位はあくまでも聖女だからだ。








 




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