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智洋ルート
97 会長と俺の秘密
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うあっ! 入って来たの気付かなかったなんて俺どんだけ妄想に浸ってたんだよーっ!
顔は上げたものの、別の意味で恥ずかしくて「こっこんにちは! お疲れ様ですっ」ってどもりながら挨拶だけして、首を竦めながら見上げるという奇妙な格好になってしまった。
大野会長は、今日も隙なくぴしりと着こなしたブレザーの上下のまま、小脇に抱えていたパソコンをテーブルに置いて、自身の荷物は足元にある俺の幌布バッグの隣に据えた。
そのまま机の角を挟んで隣に腰掛けて、答えを待つかのようにじっと俺を見つめて黙っている。
ええとー……。
「か、会長は、あのっ好きな人とかいたら、触りたくなったりとかします、か?」
どわっ! 違う違うちがうだろ俺―! 採寸されたって言えば済む事なのにぃぃーっ!
ぼんって音がしそうなくらいに派手に首から上が紅潮している気がする。見えねえけど判る!
流石の会長さまは肘を突いて指を組むと、ふむと首を傾げた。
「霧川は誰かに触られたのか?」
ううぅ……バレバレですね……。
「さっき、採寸と称してセクハラされました……」
涙を呑みながら答えると、ああと頷いて。
「小橋と間野か。それは災難だったな。そう害はないから放置していたんだが、酷くされたのか?」
「あー、ちょっと痛かったけど大丈夫です」
乳首がな、ちょっと変な感じになったよなー。とか思い出して項垂れていると、会長ががたんと立ち上がった。
え、と。
「会長?」
ちょっといつもより険しい顔、かなあ。俺の前では口元綻んでいること多いから、びっくりする。
そのまま俺の横に跪くから更にあせってしまう。
「痛いようなことを……?」
なんかこの体勢ってばお姫様と騎士みたいでいやですー!
「や、最初痛かったけど、途中から変な感じというか……あの」
なんだったんだろうあの痺れたような感じ。
思い出してはカッカして、また恥ずかしくてまともに会長の顔が見られないんですけどっ。
「力ずく……か」
「はあまあ、小橋一人ならともかく、間野には力負けするんで、拘束されたら無理でした」
「なるほど」
あれ? なんか急に空気冷えた?
天気悪くなったのかと窓の外を見たけれど、快晴のまま。五月晴れって感じで窓の外に植わっているケヤキの葉っぱがささやかに揺れている。
おかしいなあ。
「すまない、僕の不徳の致す所だ」
いきなり長い腕に抱き寄せられて、息が止まりそうになった。
両膝を古風な板張りの床に突いて両腕で横から抱き締められている。細いけれどしっかり筋肉の付いている会長の腕は、きつくはないけれど逃がす隙間はないという絶妙な力加減で俺を囲んでいた。
会長、震えてる……?
あ、そうか、同好会内部で何かあったら、会長の監督不行き届きだもんな。先生とかに叱られるのって会長になっちゃうんだ! そりゃ大変だよ……。
冷や汗が出てきて、どう言えば会長の気が休まるのかと懸命に頭を回転させる。
「あのでも俺、あいつらが遊び半分というか俺のことからかいたいだけってちゃんと解ってるし、そんなイヤだったってわけでもないし! ふざけてただけなんで! だから全然気にしてないっていうか寧ろどうでもいいっていうか!」
あわあわと必死になって言い募っていると、至近距離で会長と目が合ってしまった。
「どうでもいいわけがないだろう。もっと自分を大事にしろ……」
ノンフレームの眼鏡の奥の瞳が、痛みを耐えているかのように揺れていて。
俺より会長の方が辛そうです……。
「はい……」
こくりと素直に頷いたら、よしよしと頭を撫でられた。
会長も過保護すぎですよ。
嬉しくて、また先週みたいに一所懸命にマッサージのサービスをした。「あいつらを責めないで下さいね」って念押ししてこのことは内密にして下さいと言えば、会長は殊更申し訳なさそうな顔になり、マッサージの後またギュッて抱き締められて、下校時刻の音楽が鳴るまでいっぱいいっぱい頭を撫でてくれた。
俺の方こそ気持ち良かったです~。よしこれで精神点回復したぞ!
顔は上げたものの、別の意味で恥ずかしくて「こっこんにちは! お疲れ様ですっ」ってどもりながら挨拶だけして、首を竦めながら見上げるという奇妙な格好になってしまった。
大野会長は、今日も隙なくぴしりと着こなしたブレザーの上下のまま、小脇に抱えていたパソコンをテーブルに置いて、自身の荷物は足元にある俺の幌布バッグの隣に据えた。
そのまま机の角を挟んで隣に腰掛けて、答えを待つかのようにじっと俺を見つめて黙っている。
ええとー……。
「か、会長は、あのっ好きな人とかいたら、触りたくなったりとかします、か?」
どわっ! 違う違うちがうだろ俺―! 採寸されたって言えば済む事なのにぃぃーっ!
ぼんって音がしそうなくらいに派手に首から上が紅潮している気がする。見えねえけど判る!
流石の会長さまは肘を突いて指を組むと、ふむと首を傾げた。
「霧川は誰かに触られたのか?」
ううぅ……バレバレですね……。
「さっき、採寸と称してセクハラされました……」
涙を呑みながら答えると、ああと頷いて。
「小橋と間野か。それは災難だったな。そう害はないから放置していたんだが、酷くされたのか?」
「あー、ちょっと痛かったけど大丈夫です」
乳首がな、ちょっと変な感じになったよなー。とか思い出して項垂れていると、会長ががたんと立ち上がった。
え、と。
「会長?」
ちょっといつもより険しい顔、かなあ。俺の前では口元綻んでいること多いから、びっくりする。
そのまま俺の横に跪くから更にあせってしまう。
「痛いようなことを……?」
なんかこの体勢ってばお姫様と騎士みたいでいやですー!
「や、最初痛かったけど、途中から変な感じというか……あの」
なんだったんだろうあの痺れたような感じ。
思い出してはカッカして、また恥ずかしくてまともに会長の顔が見られないんですけどっ。
「力ずく……か」
「はあまあ、小橋一人ならともかく、間野には力負けするんで、拘束されたら無理でした」
「なるほど」
あれ? なんか急に空気冷えた?
天気悪くなったのかと窓の外を見たけれど、快晴のまま。五月晴れって感じで窓の外に植わっているケヤキの葉っぱがささやかに揺れている。
おかしいなあ。
「すまない、僕の不徳の致す所だ」
いきなり長い腕に抱き寄せられて、息が止まりそうになった。
両膝を古風な板張りの床に突いて両腕で横から抱き締められている。細いけれどしっかり筋肉の付いている会長の腕は、きつくはないけれど逃がす隙間はないという絶妙な力加減で俺を囲んでいた。
会長、震えてる……?
あ、そうか、同好会内部で何かあったら、会長の監督不行き届きだもんな。先生とかに叱られるのって会長になっちゃうんだ! そりゃ大変だよ……。
冷や汗が出てきて、どう言えば会長の気が休まるのかと懸命に頭を回転させる。
「あのでも俺、あいつらが遊び半分というか俺のことからかいたいだけってちゃんと解ってるし、そんなイヤだったってわけでもないし! ふざけてただけなんで! だから全然気にしてないっていうか寧ろどうでもいいっていうか!」
あわあわと必死になって言い募っていると、至近距離で会長と目が合ってしまった。
「どうでもいいわけがないだろう。もっと自分を大事にしろ……」
ノンフレームの眼鏡の奥の瞳が、痛みを耐えているかのように揺れていて。
俺より会長の方が辛そうです……。
「はい……」
こくりと素直に頷いたら、よしよしと頭を撫でられた。
会長も過保護すぎですよ。
嬉しくて、また先週みたいに一所懸命にマッサージのサービスをした。「あいつらを責めないで下さいね」って念押ししてこのことは内密にして下さいと言えば、会長は殊更申し訳なさそうな顔になり、マッサージの後またギュッて抱き締められて、下校時刻の音楽が鳴るまでいっぱいいっぱい頭を撫でてくれた。
俺の方こそ気持ち良かったです~。よしこれで精神点回復したぞ!
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