Hand to Heart

亨珈

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智洋ルート後日譚

赤堀くん頑張ってます 3

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「ということがあったんだけど、脈あると思う」
 とん、と目の前にジュースのカップを置かれて、丸テーブルの対面で周一郎はげんなりした顔を隠しもせずに頬杖を突いている。今日も昼休みの休憩コーナーは賑わっていたが、席が空いていないわけじゃない。どうしてここに来るんだと迷惑そうにしている。その膝の上に横座りになっている辰史の方が話に興味を持ってくれたようだ。
「ないない」
 仏頂面の周一郎の答えはにべもない。
 そうだなあ、と辰史も唸っている。
「可愛いの好きって言っても、元々はノーマルなんだから、そんなにホイホイ男に走らねえだろ。亮太は別の意味で可愛がってんじゃね」
 周一郎よりはまともに返してくれたから、そうかあと徹は溜め息を吐いた。
 なんだかよく判らないけど、あの時確かに今まで感じたことのない感触があったのだ。胸が疼くというのか。
「これが恋ってやつだったりして」
 ぼそりとこぼすと、ジュースに口を付けていた周一郎がぶほっと噴き出しそうになり片手で口を覆った。
「ちょっ、周」
 噴いた拍子に何処か別の場所に入ってしまったらしくけふんけふん咳いて涙まで浮かべている。なんて失礼な男なんだろう。友達甲斐のない。
 最初は冷やかし笑いを浮かべていた辰史も心配そうに背中をさすり、その体勢は徹から見ると恋人同士が抱き締め合っているようにしかとれなくて、それはそれでなんだか羨ましくて腹立たしい。
 少しましになったのか、調子に乗った周一郎が辰史の腰から下へと手を下げて、気付いて甲をつねられている。そんなやり取りも羨ましいなんて末期だ。早いとこ新しい相手を見つけなければ。
 いや、別に相手が居ないわけではないのだけれど、こういう日常でも一緒にいたい相手じゃないのだ。昔は何も感じなかったけれど、この学園の校風に馴染んで中てられてしまったかのように寂しくなってしまうのだ。
 和気藹々なんてことば、辞書の中にしか存在しないと思っていた。それなのに、ここの連中と来たら、勉強も食事もほかのどんな些細なことでも楽しそうに大事にしているから。だから自分もそうしたくなってしまったのだ。

 大事にしたくなるようなこととか、ものとか。誰かとか――
 欲しいと思ってしまったのだ。

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