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「お姉様、また新しいアクセサリーを貰ったのね。ずるいわ。私にちょうだい」
「ダメよ。これは婚約者のロブに貰ったものなの。あげられないわ」
「なんて意地悪なの! ロブだって私に使って貰った方が喜ぶわよ。早くちょうだい」
ダメだと重ねていったが、アクセサリーは妹のエミリーにひったくられてしまった。
「ふふ。綺麗。ねぇ、素敵でしょう」
そしてエミリーは戦利品を首にかけ、じっとりとした目でこちらを見てくる。
婚約者からもらったものだ。できることなら取り返したいが、エミリーが金切り声をあげて両親に訴えれば両親はエミリーの味方をするだろう。
「ロザリー、あなたは姉なのだから、妹に譲ってあげなさい」、と。
それでも取り返すべきかと躊躇しているうちに、お披露目して満足したのかエミリーはパタパタと足音をたてて去って行った。
プレゼントされたばかりのアクセサリーを次のデートにつけていかなければ、またロブの機嫌が悪くなる。
困ったものだ。
どうせエミリーにとられてしまうのだから、プレゼントなどくれなければいいのに。
幼なじみのロブは、エミリーが姉のものならなんでも欲しがることを知っている。それでも折々に洒落た小物をプレゼントしてくれた。
「僕がプレゼントをしたいだけだから」
と。
エミリーにとられる前に、二人でプレゼントを眺め、そっと笑い合う。婚約したばかりの頃は、そんな穏やかな空気が二人の間に流れていた。
だが近頃は、妹にやられっぱなしのロザリーをふがいなく思っているのか、贈られたプレゼントをロザリーがデートにつけていかないと、小さなため息を吐くようになっていた。
「ロザリー、君の事情はわかるけど、もう成人するんだ。いい加減、自立したらどうだ。結婚してからも同じようにエミリーに与え続けるつもりかい」
「仕方ないわ。両親もエミリーの味方なのよ」
「僕は君の家に婿入りする。君がしっかりしてくれないと、結婚生活が成り立たないぞ」
「それは」
そんな風に責められると、ロザリーは口ごもるしかなかった。
伯爵家の子どもは、ロザリーとエミリーの姉妹だけだ。
ロザリーが婿をとって家を継ぎ、エミリーは嫁に出ることになっている。
結婚後、両親とともに過ごすのはロザリーなのだが、エミリーのあの性格だ。結婚後も我が物顔で実家を踏み荒らしていくにきまっている。
そして両親は困った顔をしながらも、エミリーの味方をするのだ。
ロブも婿養子の立場では両親になにかを言うこともできないだろう。
現にいまも、ロブは両親の前では借りてきた猫のように大人しくしている。
子爵家の三男であるロブは、仲のいい幼なじみで家族ぐるみの付き合いだからロザリーと婚約の話になったが、本来であれば格上の家の娘と婚約するのは大変だ。
両親の機嫌を損ねて、せっかくの婿入り先をおじゃんにしたくはない。かといって我が儘なエミリーにひっかきまわされるのも嫌なので、ロザリーを盾にするのだ。
力関係は分かるが、それなら誰がロザリーを守ってくれるのだろう。
意気地がないとは思うが、今日もロザリーは親に守られたエミリーに戦利品のように婚約者からのプレゼントを奪われるのを、指をくわえて見ているしかなかった。
未来になんの夢も希望もないロザリーの人生が変わるのは、あっという間だった。
「ダメよ。これは婚約者のロブに貰ったものなの。あげられないわ」
「なんて意地悪なの! ロブだって私に使って貰った方が喜ぶわよ。早くちょうだい」
ダメだと重ねていったが、アクセサリーは妹のエミリーにひったくられてしまった。
「ふふ。綺麗。ねぇ、素敵でしょう」
そしてエミリーは戦利品を首にかけ、じっとりとした目でこちらを見てくる。
婚約者からもらったものだ。できることなら取り返したいが、エミリーが金切り声をあげて両親に訴えれば両親はエミリーの味方をするだろう。
「ロザリー、あなたは姉なのだから、妹に譲ってあげなさい」、と。
それでも取り返すべきかと躊躇しているうちに、お披露目して満足したのかエミリーはパタパタと足音をたてて去って行った。
プレゼントされたばかりのアクセサリーを次のデートにつけていかなければ、またロブの機嫌が悪くなる。
困ったものだ。
どうせエミリーにとられてしまうのだから、プレゼントなどくれなければいいのに。
幼なじみのロブは、エミリーが姉のものならなんでも欲しがることを知っている。それでも折々に洒落た小物をプレゼントしてくれた。
「僕がプレゼントをしたいだけだから」
と。
エミリーにとられる前に、二人でプレゼントを眺め、そっと笑い合う。婚約したばかりの頃は、そんな穏やかな空気が二人の間に流れていた。
だが近頃は、妹にやられっぱなしのロザリーをふがいなく思っているのか、贈られたプレゼントをロザリーがデートにつけていかないと、小さなため息を吐くようになっていた。
「ロザリー、君の事情はわかるけど、もう成人するんだ。いい加減、自立したらどうだ。結婚してからも同じようにエミリーに与え続けるつもりかい」
「仕方ないわ。両親もエミリーの味方なのよ」
「僕は君の家に婿入りする。君がしっかりしてくれないと、結婚生活が成り立たないぞ」
「それは」
そんな風に責められると、ロザリーは口ごもるしかなかった。
伯爵家の子どもは、ロザリーとエミリーの姉妹だけだ。
ロザリーが婿をとって家を継ぎ、エミリーは嫁に出ることになっている。
結婚後、両親とともに過ごすのはロザリーなのだが、エミリーのあの性格だ。結婚後も我が物顔で実家を踏み荒らしていくにきまっている。
そして両親は困った顔をしながらも、エミリーの味方をするのだ。
ロブも婿養子の立場では両親になにかを言うこともできないだろう。
現にいまも、ロブは両親の前では借りてきた猫のように大人しくしている。
子爵家の三男であるロブは、仲のいい幼なじみで家族ぐるみの付き合いだからロザリーと婚約の話になったが、本来であれば格上の家の娘と婚約するのは大変だ。
両親の機嫌を損ねて、せっかくの婿入り先をおじゃんにしたくはない。かといって我が儘なエミリーにひっかきまわされるのも嫌なので、ロザリーを盾にするのだ。
力関係は分かるが、それなら誰がロザリーを守ってくれるのだろう。
意気地がないとは思うが、今日もロザリーは親に守られたエミリーに戦利品のように婚約者からのプレゼントを奪われるのを、指をくわえて見ているしかなかった。
未来になんの夢も希望もないロザリーの人生が変わるのは、あっという間だった。
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