素敵なものは全て妹が奪っていった。婚約者にも見捨てられた姉は、「ふざけないで!」と叫び、家族を捨てた。

あお

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「どういうこと」

 その日、居間に集まった面子を見て、ロザリーには嫌な予感がした。




「エミリーの婚約者の家が没落したんだ。婚約は解消することになった」

 嫌な予感は当たる。特に、この家では。

 

「だからって、なんで私とロブの婚約がなかったのことになるの」

 不安に押しつぶされそうになり、ロザリーはにこにこしている両親とロブの両親、そしてなぜか同じソファに座っているエミリーとロブを見た。


「ロザリーは姉だろう。エミリーの事が可愛くないのか」

 人のものを奪っていく傍若無人な妹など可愛いわけがない。

 それに普通の家なら長女から婚約が決まるものではないだろうか。

「エミリーが言っていたのよ。ロザリーは学院でも人気があるって」

「それにロザリーには婚約の申し込みがあるが、エミリーにはあまりいい家からの申し込みはないからな。このままではエミリーが行き遅れてしまう。その点、ロブなら安心だし。ロザリーとロブの婚約は公になっていないから、婚約者を変えてもロザリーの瑕疵にはならないだろう」

「ロザリーなら、もっと素敵な人と婚約できるわ」

 ロブとロザリー両家の両親が揃った席で、ロザリーの婚約はなかったことになった。

「お姉様なら、婚約を譲ってくれるわよね」

 勝ち誇ったようにエミリーがロブの横に座り腕に纏わり付いていた。
 ロブは引きつったような顔をしているが、両家の両親になにかを言う気はないようだ。

「ロブはエミリーの婚約者になりたいの?」

「婚約は家同士のことだから」

 ロザリーと婚約してもエミリーと婚約しても、ビッスル伯爵家とワイリー子爵家が縁づくことは変わらない。
 貴族の令嬢としてその理屈は分かったが、気持ちが納得しなかった。






「ふざけないで!」






 ロザリーが力の限り叫ぶ。

 初めての反抗だ。

 ロブの両親は驚いたような顔をしたが、ロザリーの両親はうんざりした顔だ。



「我が儘をいうな。おまえの婚約者はすぐに決まる」



 父の一言にたまらなくなって、ロザリーは居間を飛び出し部屋に駆け込んだ。

「ロザリー!」

 ロブの声がしたが、両家両親になだめられたのか、誰も追ってはこなかった。
 部屋に閉じこもったロザリーの耳に、居間から笑い声が聞こえてくる。

 父も母もアクセサリーもドレスも、素敵なものはすべてエミリーが奪っていった。ロザリーの元に残るのは、エミリーが飽きた子どものようなドレスやおもちゃばかりだ。

 ロブだけは違うと思いたかった。ロブはロザリーの家族の事も知っている。ロザリーの気持ちを分かってくれると思ったのに。結局、ロブもエミリーに奪われてしまった。



「くやしい! くやしい! くやしい!」



 ベッドにしがみつき、何度も何度も、ロザリーは拳をたたきつけた。






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