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婚約解消から三年が経った。
当時14歳だったロザリーは、17歳の花も恥じらう乙女となっていた。
「答辞。ロザリー・ビッスル」
卒業式で呼ばれ、ロザリーは全校生徒保護者の前で答辞を読んだ。
堂々とした姿だ。
そこには妹に婚約者を奪われ、失意に泣いていた少女の姿はどこにもなかった。
あれからロザリーには何人もの相手が紹介されたが、ロザリーは誰とも婚約しなかった。
自分で婚約者を探すこともなく、社交を控え、勉学に注力した。
その甲斐あってか、学院の教師の覚えもめでたくなり、卒業後は教授の助手にという話も貰った。
上位貴族の令嬢が働くことなどありえないことなので、両親には内緒にしている。
「ロザリー、卒業おめでとう」
「おめでとう、ハンナ」
式が終わり、学院の中庭でロザリーは学友たちとの別れを惜しんだ。
「ロザリーは結局、婚約の話は全部断ったのね」
「どれも地方の子爵や男爵家への嫁入り話だったもの」
あの後。両家両親の話し合いで、伯爵家はエミリーに婿入りするロブが継ぐことが内々に決まった。
公にすると、ロザリーの縁談話がなくなるとの配慮で、二人の婚約もロザリーの婚約が決まるまで伏せることになったのだが。
エミリーがそんな約束事を守るはずがない。
翌週には学院中に、エミリーとロブの婚約話が広がっていた。ロブが伯爵家に婿入りするという話と一緒に。
すると潮が引くように、ロザリーへの縁談は立ち消えた。
焦った両親がツテを使い地方の家格が下の家との縁談を持ってきたが、ロザリーは全部断った。
そのことで両親とも揉めた。
「我儘を言うな! お前のために縁談を探してやっているというのに、なにが不満だというんだ」
「私のため? ならどうしてロブとの婚約を解消させたの」
「それはもう済んだ話だろう。終わった事をいつまでも言うな!」
「終わってなんかいないわ。そのせいで、こうして縁談を探しているんでしょう」
「そうだ。だから大人しく、」
「エミリーのせいで、私の婚約者になりたいなんていう同級生は誰もいなくなっちゃったわ。そんなに私の縁談に困っているなら、エミリーから婚約者を取り上げて、私の婚約者にすればいいじゃない」
「そんな恥ずかしい事、できるわけないだろう!」
「あら。お父様でも恥を知っていたのね。
三年前、そんな『恥ずかしい事』をしたのは、お父様たちよ。
貴方たちの尻ぬぐいをするなんて、もうたくさん。
貴方たちが探した縁談なんて、絶対に受けないわ」
ロザリーは立ち上がりさっさと部屋を出て行った。
「だったらどうするというんだ。行き遅れなんて恥ずかしい真似、絶対に認めないぞ!」
伯爵の負け犬の遠吠えが廊下まで響き渡ったが、ロザリーは振り返らなかった。
当時14歳だったロザリーは、17歳の花も恥じらう乙女となっていた。
「答辞。ロザリー・ビッスル」
卒業式で呼ばれ、ロザリーは全校生徒保護者の前で答辞を読んだ。
堂々とした姿だ。
そこには妹に婚約者を奪われ、失意に泣いていた少女の姿はどこにもなかった。
あれからロザリーには何人もの相手が紹介されたが、ロザリーは誰とも婚約しなかった。
自分で婚約者を探すこともなく、社交を控え、勉学に注力した。
その甲斐あってか、学院の教師の覚えもめでたくなり、卒業後は教授の助手にという話も貰った。
上位貴族の令嬢が働くことなどありえないことなので、両親には内緒にしている。
「ロザリー、卒業おめでとう」
「おめでとう、ハンナ」
式が終わり、学院の中庭でロザリーは学友たちとの別れを惜しんだ。
「ロザリーは結局、婚約の話は全部断ったのね」
「どれも地方の子爵や男爵家への嫁入り話だったもの」
あの後。両家両親の話し合いで、伯爵家はエミリーに婿入りするロブが継ぐことが内々に決まった。
公にすると、ロザリーの縁談話がなくなるとの配慮で、二人の婚約もロザリーの婚約が決まるまで伏せることになったのだが。
エミリーがそんな約束事を守るはずがない。
翌週には学院中に、エミリーとロブの婚約話が広がっていた。ロブが伯爵家に婿入りするという話と一緒に。
すると潮が引くように、ロザリーへの縁談は立ち消えた。
焦った両親がツテを使い地方の家格が下の家との縁談を持ってきたが、ロザリーは全部断った。
そのことで両親とも揉めた。
「我儘を言うな! お前のために縁談を探してやっているというのに、なにが不満だというんだ」
「私のため? ならどうしてロブとの婚約を解消させたの」
「それはもう済んだ話だろう。終わった事をいつまでも言うな!」
「終わってなんかいないわ。そのせいで、こうして縁談を探しているんでしょう」
「そうだ。だから大人しく、」
「エミリーのせいで、私の婚約者になりたいなんていう同級生は誰もいなくなっちゃったわ。そんなに私の縁談に困っているなら、エミリーから婚約者を取り上げて、私の婚約者にすればいいじゃない」
「そんな恥ずかしい事、できるわけないだろう!」
「あら。お父様でも恥を知っていたのね。
三年前、そんな『恥ずかしい事』をしたのは、お父様たちよ。
貴方たちの尻ぬぐいをするなんて、もうたくさん。
貴方たちが探した縁談なんて、絶対に受けないわ」
ロザリーは立ち上がりさっさと部屋を出て行った。
「だったらどうするというんだ。行き遅れなんて恥ずかしい真似、絶対に認めないぞ!」
伯爵の負け犬の遠吠えが廊下まで響き渡ったが、ロザリーは振り返らなかった。
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