知らない人に「お前とは婚約破棄をする」と言われました。私の婚約者は貴方じゃありません。

あお

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「もう一度言ってくれますか?」

「お姉さまったら、聞こえないふりをしないでよ」

「お前と婚約破棄して、ユリアと結婚する。もう決めた事だ。ヴェラー伯爵には話をつけてある」

 そこで男はニヤリと笑った。

「ユリアを妻として、俺が婿養子に入るって事をな」

 なるほど。よく分かりました。




 私はヴェラー伯爵の先妻の娘。妹、ユリアは後妻の娘です。

 父は母が亡くなってすぐに後妻を迎えました。娘を連れて。喪が明ける前に。

 屋敷に二人を連れて来た父は、後妻の娘を指して「血の繋がった妹だから大事にするように」と言いました。

 その時の血が凍るような思いは忘れられません。

 母の生前、父は屋敷に戻ることがほとんどありませんでした。病を得た母が寝付いてからも。

 いま思えば愛人との間に娘を作り、愛人宅に入り浸っていたのでしょう。

 あの時はそこまで思い至りませんでしたが。『血の繋がった異母妹』を紹介されて。ふと思いました。

 それってつまり、お母様の存命中から父は不倫していたって事よね。
 その愛人と、妻の喪が明ける前の再婚なんて。お母様のご実家がどう思うか考えなかったのかしら。

 後妻が来たその日、私は執事に命じてお祖父様、亡き母の父に手紙を送りました。
 父の不貞と、父が不倫相手と再婚して後妻に迎えた事、後妻の連れ子は不義の子で、その女子を養子として迎えいれた事実を。

 祖父からはすぐに返事が来て『屋敷を出て祖父母の元へ来るように』とありました。

 母と過ごした、生まれ育った屋敷を出る事に後ろ髪をひかれる思いがありましたが、十歳の私はその手紙に従いました。

 これからこの屋敷は、浮気をした父と、父を誑かした女、そして卑しい不義の子が生活する場になるのです。
 
 母を裏切った父も、母の痛みの原因である母子も恨めしく、なにより、不義を働いた、不義の証である三人が気持ち悪くて仕方ありませんでした。とても一緒になど暮らせません。

 荷物の手配などは全て執事に任せ、お祝いだと浮かれる三人の晩餐が始まる前に、馬車で屋敷を出ていきました。

 屋敷を振り返る事は一切ありませんでした。

 その後、父からは外聞が悪いから家に戻るようにと手紙が来ましたが、なんの感情もわきませんでした。
 その手紙を祖父に見せ、祖父から父へ釘を刺して貰うと、それ以降、父からの手紙が届くことはありませんでした。




 その後、祖父から養子にならないか、と話があり、私は母の実家であるアウリーデ公爵家の籍に入りました。



 それから七年。公爵令嬢として王立学園に通っていた私の前に、なぜか父が決めたという婚約者がやってきて、エスコートしてきた女を見せつけるようにニヤニヤと笑いながら言った言葉が。

 私と婚約破棄をして、異母妹に乗り換える。ヴェラー伯爵家の家督は俺が貰う。

 まったく意味が分からない。

 この人たち、馬鹿なの?





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