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場違いな二人が退場したことで、やっとカフェテリアの空気が緩んだ。
ざわざわといまの出来事を話し合う生徒たちを尻目に、私たちもカフェテリアを後にした。
あの場に残ったらいつまでも見世物状態だもの。
噂好きな令嬢たちには視線で釘を刺す事を忘れない。
彼女たちはぶるりと震えて、目でこくこくと頷いた。
噂をするのはいいの。でも余計なことまで噂に乗せたら。
分かるわよね?
少し離れたところにある、高位貴族向けのカフェテリアで昼食をとることにした。
こちらのカフェテリアは席数が少なく、静かな空気が流れている。
個室もあるので、私たちは個室に落ち着いた。
さっきの騒ぎはもう噂になっているようで、こちらのカフェテリアでも失礼ではない程度に見られていた。
私は軽食とパフェ。さすがにさっきの騒ぎで疲れているのでご飯が入らない。甘い物は別腹。糖分が足りないもの。
ルイスはしっかり昼食を取るようだ。
昼食を片付けてから、私たちは紅茶を頼んだ。
「甘いんじゃないか」
パフェの事ではない。ヘルマンに対する対応の事だろう。
ルイスと違い、私はヘルマン子爵家に抗議する、とは言わなかった。『どこの誰とも知らない方』と一見するとヘルマン子爵家を庇ったようにも見える。
もちろんそんな事はない。少しはない事もないけれど。
さっきの誤解、どう考えても原因は元実家のヴェラー伯爵家にありそうだったし。というか、多分元父かユリア。
誤解だったとしても、私に婚約破棄を突きつけた事を許すつもりはない。ヘルマンには学園にいる間中、噂という針の筵に座ってもらうわ。その辺は、噂好きの令嬢たちをつつけば上手く働いてくれる事だろう。
ヘルマン子爵家への態度は保留。ここがルイスに甘いと言われてしまうところかな。
でもね。
「不愉快な顔を見たくないだけです。どこのどなたかは知りませんが、あちらとの取引があれば全面的に引き上げさせますわ」
私はどこのどなたか知らないけれど、野次馬をしていた生徒たちも噂を聞いた生徒たちも彼の名前を知っている。
取引を引き揚げさせると私が言っていたと噂が流れれば。それを聞いた生徒達はどう思うか。
もちろん、私はどこのどなたなのか知らないので、謝罪されても受ける事はない。
ツンと顎を上げて不愉快、を表明してから紅茶を飲む。
対面に座って、眉を顰めていたルイスの瞳が、甘やかに解けた。
「やっぱり優しいな」
そんな事はないわ。公爵令嬢としては、アウリーデ公爵家からヘルマン子爵家に抗議するべきだったかもしれないけれど、噂って侮れないもの。
それにヴェラー伯爵家の方は許すつもりはない。
誤解が生まれた原因と事実関係を調査させて、アウリーデ公爵家から抗議するつもりだ。
私は相変わらずツンとしているのに、ルイスは甘やかな目で私を優しく見つめている。
「なんですか?」
すごく気になる。これが先ほどのように顰め面をしていれば、未来の侯爵夫人として咎められているのかと思うところだけど、そういう様子はない。
こんなに見つめられると、なんだか落ち着かない。
「二人きりになりたい」
ここは個室。二人きりだ。二人きりなのに、ルイスはなにを言っているの。
紅茶を置いて、扇を閉じたり開いたりしていたら、その手をルイスに握られた。
手を取られて、手の甲に口づけられる。リップ音だけじゃない。本当に触れられて、ひゃっと肩が跳ねた。
ルイス。貴方って人は!
「破廉恥です!」
二人きりってそういうこと!?
ここは学園だし、まだ昼休みなのよ。
そういうことはもっと時間のある時に、ロマンチックに言うものじゃないの!?
ざわざわといまの出来事を話し合う生徒たちを尻目に、私たちもカフェテリアを後にした。
あの場に残ったらいつまでも見世物状態だもの。
噂好きな令嬢たちには視線で釘を刺す事を忘れない。
彼女たちはぶるりと震えて、目でこくこくと頷いた。
噂をするのはいいの。でも余計なことまで噂に乗せたら。
分かるわよね?
少し離れたところにある、高位貴族向けのカフェテリアで昼食をとることにした。
こちらのカフェテリアは席数が少なく、静かな空気が流れている。
個室もあるので、私たちは個室に落ち着いた。
さっきの騒ぎはもう噂になっているようで、こちらのカフェテリアでも失礼ではない程度に見られていた。
私は軽食とパフェ。さすがにさっきの騒ぎで疲れているのでご飯が入らない。甘い物は別腹。糖分が足りないもの。
ルイスはしっかり昼食を取るようだ。
昼食を片付けてから、私たちは紅茶を頼んだ。
「甘いんじゃないか」
パフェの事ではない。ヘルマンに対する対応の事だろう。
ルイスと違い、私はヘルマン子爵家に抗議する、とは言わなかった。『どこの誰とも知らない方』と一見するとヘルマン子爵家を庇ったようにも見える。
もちろんそんな事はない。少しはない事もないけれど。
さっきの誤解、どう考えても原因は元実家のヴェラー伯爵家にありそうだったし。というか、多分元父かユリア。
誤解だったとしても、私に婚約破棄を突きつけた事を許すつもりはない。ヘルマンには学園にいる間中、噂という針の筵に座ってもらうわ。その辺は、噂好きの令嬢たちをつつけば上手く働いてくれる事だろう。
ヘルマン子爵家への態度は保留。ここがルイスに甘いと言われてしまうところかな。
でもね。
「不愉快な顔を見たくないだけです。どこのどなたかは知りませんが、あちらとの取引があれば全面的に引き上げさせますわ」
私はどこのどなたか知らないけれど、野次馬をしていた生徒たちも噂を聞いた生徒たちも彼の名前を知っている。
取引を引き揚げさせると私が言っていたと噂が流れれば。それを聞いた生徒達はどう思うか。
もちろん、私はどこのどなたなのか知らないので、謝罪されても受ける事はない。
ツンと顎を上げて不愉快、を表明してから紅茶を飲む。
対面に座って、眉を顰めていたルイスの瞳が、甘やかに解けた。
「やっぱり優しいな」
そんな事はないわ。公爵令嬢としては、アウリーデ公爵家からヘルマン子爵家に抗議するべきだったかもしれないけれど、噂って侮れないもの。
それにヴェラー伯爵家の方は許すつもりはない。
誤解が生まれた原因と事実関係を調査させて、アウリーデ公爵家から抗議するつもりだ。
私は相変わらずツンとしているのに、ルイスは甘やかな目で私を優しく見つめている。
「なんですか?」
すごく気になる。これが先ほどのように顰め面をしていれば、未来の侯爵夫人として咎められているのかと思うところだけど、そういう様子はない。
こんなに見つめられると、なんだか落ち着かない。
「二人きりになりたい」
ここは個室。二人きりだ。二人きりなのに、ルイスはなにを言っているの。
紅茶を置いて、扇を閉じたり開いたりしていたら、その手をルイスに握られた。
手を取られて、手の甲に口づけられる。リップ音だけじゃない。本当に触れられて、ひゃっと肩が跳ねた。
ルイス。貴方って人は!
「破廉恥です!」
二人きりってそういうこと!?
ここは学園だし、まだ昼休みなのよ。
そういうことはもっと時間のある時に、ロマンチックに言うものじゃないの!?
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