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<模索 編>

街へ

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黒胡麻と塩味が香ばしくなる。

「お茶会で差し入れはある。パンとか、ジャム。」

「クッキー、ケーキとかは?」
「ないね?」


街で暮らしていれば、クッキーを買う子供もいるし奮発してクリームの乗ったケーキもある。
孤児院にだって、機会が少なくてもクッキーは食べられるのだ。

子供のために菓子を作る機会は、ないのか。
「誕生月とか、祝わねーの?」

俺でもちょっと良い酒飲んだり、肉を食ったりするのに。辺境であっても、街には馬車で行き来ができる距離だ。
祝う習慣がないのか、何かに遠慮があるのだろうか。

「ここでの扱い、どーなってんの?」

祝い事もなく、菓子もないって普通の、子供の教育的に有りなのか?ちょと不憫な境遇だと思うんだが。

「当主の子か分からないから、教育も混迷してる。」

思ったより複雑そうな理由だった!言った本人は寂しい様子さえ見せない。6歳が混迷とか言ってるし。
「どうツッコムか迷う。」

ま、そんなものだよって顔で達観しているセリを見る。
(俺が立ち入って良いものか。)

そう迷いながらも多めにクッキーを持たせ、とりあえず解散した。大した手伝いしていないが、気持ちの面で疲れたわ。部屋で休む事にする。

セリは回復薬の粗熱が冷めたら、瓶詰めするらしい。地下の部屋へ1人行ってしまった。
普段から、1人で行動してるんだな。王都に行ってる執事と温かい関係性ってイメージも湧かねえし。

すっげえ無愛想なやつらしい。

なんかモヤモヤすんなーと思って部屋に着くと、滞在している2人ロイとスールがいた。

「今日、森には行かねーのか?」
「行くよー、昼食べたらね。」

「そうか」

さっきのセリの話をした


「考え方が大人だ、あれで教師がいないってどういう頭の構造してるんだ?」

「あの子、人と距離はありそうなんだよねえ。」
「俺は、腕を動かせてんのあの子のお陰もあるしなあ。」

好意的になる。貴族とは依頼で偉そうなやつと関わる事があっくらいで面倒な印象が共通だ。

「よし、セリを冒険者扱いする事にする。駄目ならなんか言ってくるだろ!」

「見込みはあるぞ、弓矢の鍛錬してたぞ。良い腕。」
「へえー弓矢?師匠がいるのかなあ」

「それがな、知ってるやつか聞いたが、そのうちくると思うって言うんだ。」

「ミステリアスな子だねえ。」

「本当に」
作ったクッキーを食う。

「酒が欲しいな。」
「バリス好みなクッキーだね。」

確かに。ここの材料で作れる俺好みで、シンプルな味。

「不思議なもんだな。すっげえ嬉しそうだった。」

「手作りって美味しいからねえ。」
「森に持って行くか。」


俺は、いつセリを誘ってみるかと考えてていた。
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