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048 黒幕たち
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最後の主菜はどのように行うべきか。
悩むシンの前で、アルトが辛うじて声を絞り出す。
「待って、くれ……シン……これは、何かの、間違いなんだ……」
それは命乞いの言葉。
ここに来て、まだ説得できると考えているのだろうか。
呆れながら、シンはアルトに冷たい視線を送る。
「間違いだと? ふざけるのも大概にしろ。【黎明の守護者】は俺を裏切った。大切な家族を殺した。それを率いたリーダーはお前だろ、アルト」
その言葉に対し、アルトは激しく首を振った。
「違う! 違うんだ! 聞いてくれ、シン! あの日、お前の村にハングリー・ドレイクを誘導しようと提案したのも、ユニークスキル持ちのお前を騙して勧誘しようと言い出したのも、俺じゃないんだ!」
「……何だと?」
それは、シンにとっても無視できない主張だった。
責任逃れとしか思えないふざけた内容だが、アルトの表情からは決して嘘をついているようには見えない。
シンは骸の剣を掲げると、アルトの右手に突き刺した。
「ぐうっ!」
「……どういうことだ?」
続けて、問いかける。
「提案したのがお前じゃないだと? だったら、いったい誰があんな最悪なことを考えた!? ガレンか? シエラか? セドリックか? それとも……」
シンの脳裏によぎる、ある一人の人物。
その名を口に出そうとするも、それを遮るようにアルトが叫ぶ。
「違う、その誰でもない! もう一人いただろう!? 俺たちのパーティーには! 二年前に突然いなくなりやがったけど……そうだ、間違いない。俺じゃないんだ、そもそもの原因は……全ての罪の始まりは、アイツの――」
そして、アルトは言った。
「――――アダムのせいだ!」
《アダム》。
その名を、シンは知っていた。
なにせ彼は、シンが【黎明の守護者】に所属していた当時の、れっきとしたメンバーだったのだから。
しかし、シンの中でアダムの印象はあまり強くなかった。というのも、彼は常に飄々とした人物だったからだ。
他のメンバーに比べて――それこそ、最も関わりの薄かったセドリックと比べても、ほとんど話したことがない相手。
シンにとっては、本当にただのパーティーメンバーでしかなかった。
そしてアダムは二年前のあの日、所用があるとのことで調査依頼に同行しなかった。
そのため、シンが裏切られた瞬間に居合わせることはなかった。
とはいえ、彼もパーティーメンバーである以上、シンを仲間に入れた理由については元から知っていたはずであり、復讐対象には違いない。
そう思っていたからこそ、シンが地上に出てから【黎明の守護者】の情報を集める中で、彼が既にパーティーから脱退していると聞いた時は、探すのが少々面倒だなと思ったものだ。
そして今、動向を知っているであろうアルトから拷問してでも聞き出そうと考えていたのだが――
実際にアルトの口から出てきたのは、全く想定外の言葉だった。
「アダムが全ての原因……それは本気で言ってるのか?」
「あ、ああ。そうだ。俺たちはアイツの口車に乗せられただけなんだ! アイツの提案がなければ、あの村を滅ぼすことも、お前を仲間に入れて騙すこともなかった……本当だ、信じてくれ!」
そう告げるアルトは、まさに鬼気迫った表情だった。
ここで何とか責任を逃れないことには、生き延びられないと考えているからだろう。
しかしもはや今のシンにとって、アルトの態度などどうでもよかった。
アルトの言葉が本当に正しいとすれば、全ての前提が崩れ去る。
復讐がこれで終わるばかりか、まだ始まってすらいないと言えるだろう。
ここでふと、シンはある疑問を抱いた。
「いいだろう。ひとまず、今の言葉は信じてやる」
「ほ、本当か!? だったら俺だけでも助けてくれ! この通りだ!」
「……それは、ここからの態度次第だな」
「あ、ああ! ……いや、分かりました! 言う通りにします!」
頭を地面に擦り付けるアルトに対し、シンはその疑問を尋ねることにした。
「今の話の中で、不明瞭な点が一つある」
「な、何でしょうか……?」
「俺を騙してパーティーに入れた部分だ。お前は以前、俺をレベル100まで育ててからとある貴族に売るつもりだと言っていた。それは間違いないな?」
アルトはこくりと頷く。
「は、はい。ですがそれもアダムからの提案だったんです。貴族との橋渡しも、アイツがする予定で……」
「その貴族の名前と目的は?」
「え? 名前と目的ですか? ……えーっと、ですからそれはアダムの担当だったので、俺たちも詳しいことは何も知らなくて――」
「――嘘だな」
「っ!? ぁぁぁあああああ!」
シンはアルトの右手に刺した骸の剣の切っ先を、ぐりぐりと回す。
痛みに悶えるアルトに対し、シンは冷たい声で言った。
「お前は立場を理解しているのか?」
「う、ぁぁぁ……嘘なんて、決してついては……」
「クリムの存在を、俺が忘れたとでも思ったか!?」
「ッ!?」
アルトは“しまった!”とでも言いたげに、目を大きく見開いた。
「アイツは俺と同じユニークスキル持ち。パーティーに入れた理由も同じだろう。となれば……アダムがいなくなった今も、その貴族との伝手はあるはずだ」
「そ、それは……」
「ここで死にたいのなら、それでも構わない」
シンが剣を振り上げると、アルトは慌てて声を張り上げる。
「待ってください! 言う! 言います!」
「………」
「……ブラスフェミー公爵家、その当主様です」
ブラスフェミー公爵家。
元々は一介の冒険者でしかなく、国の事情に詳しくないシンであっても、その名は聞いたことがあった。
「確か――迷宮都市を治める領主だったか」
迷宮都市【トレジャーホロウ】。
それは全ての冒険者にとって、憧れの対象とも言えるこの国最大の都市だ。
町の中心にある大迷宮を始めとし、トレジャーホロウには数多くのダンジョンが存在している。
そこで活動している冒険者の多くがレベル500越えのAランクと言われており、文字通り迷宮探索の最先端と言えるだろう。
そしてその都市を治める領主こそ、この国の四大貴族の一つ、ブラスフェミー公爵家。
現当主の実力は、並の冒険者はもちろん、Aランク冒険者ですら敵わないというのは有名な話だった。
ここに来て飛び出してきた、まさかの大物の名前。
これは思ったより闇が深そうだ。
「名前は分かった。目的は?」
「そ、そっちは本当に知らないんです! 俺としても金さえもらえればよかったので、無理に聞き出そうとは思わなくて……」
「なるほどな」
その後、シンは他にも気になっていた幾つかを尋ねた。
アルトが先ほど、力を増したのはなぜか。
アダムの行方には心当たりがあるか、などなど。
結果的に、アダムが不思議なマジックアイテムをアルトに渡したこと以外、有益な情報は手に入れられなかった。
アダムは突然パーティーを抜けたため、行方についても知らないらしい。
(……この辺りでいいか)
聞きたいことは全て聞いた。
これでようやく、本番に入れる。
悩むシンの前で、アルトが辛うじて声を絞り出す。
「待って、くれ……シン……これは、何かの、間違いなんだ……」
それは命乞いの言葉。
ここに来て、まだ説得できると考えているのだろうか。
呆れながら、シンはアルトに冷たい視線を送る。
「間違いだと? ふざけるのも大概にしろ。【黎明の守護者】は俺を裏切った。大切な家族を殺した。それを率いたリーダーはお前だろ、アルト」
その言葉に対し、アルトは激しく首を振った。
「違う! 違うんだ! 聞いてくれ、シン! あの日、お前の村にハングリー・ドレイクを誘導しようと提案したのも、ユニークスキル持ちのお前を騙して勧誘しようと言い出したのも、俺じゃないんだ!」
「……何だと?」
それは、シンにとっても無視できない主張だった。
責任逃れとしか思えないふざけた内容だが、アルトの表情からは決して嘘をついているようには見えない。
シンは骸の剣を掲げると、アルトの右手に突き刺した。
「ぐうっ!」
「……どういうことだ?」
続けて、問いかける。
「提案したのがお前じゃないだと? だったら、いったい誰があんな最悪なことを考えた!? ガレンか? シエラか? セドリックか? それとも……」
シンの脳裏によぎる、ある一人の人物。
その名を口に出そうとするも、それを遮るようにアルトが叫ぶ。
「違う、その誰でもない! もう一人いただろう!? 俺たちのパーティーには! 二年前に突然いなくなりやがったけど……そうだ、間違いない。俺じゃないんだ、そもそもの原因は……全ての罪の始まりは、アイツの――」
そして、アルトは言った。
「――――アダムのせいだ!」
《アダム》。
その名を、シンは知っていた。
なにせ彼は、シンが【黎明の守護者】に所属していた当時の、れっきとしたメンバーだったのだから。
しかし、シンの中でアダムの印象はあまり強くなかった。というのも、彼は常に飄々とした人物だったからだ。
他のメンバーに比べて――それこそ、最も関わりの薄かったセドリックと比べても、ほとんど話したことがない相手。
シンにとっては、本当にただのパーティーメンバーでしかなかった。
そしてアダムは二年前のあの日、所用があるとのことで調査依頼に同行しなかった。
そのため、シンが裏切られた瞬間に居合わせることはなかった。
とはいえ、彼もパーティーメンバーである以上、シンを仲間に入れた理由については元から知っていたはずであり、復讐対象には違いない。
そう思っていたからこそ、シンが地上に出てから【黎明の守護者】の情報を集める中で、彼が既にパーティーから脱退していると聞いた時は、探すのが少々面倒だなと思ったものだ。
そして今、動向を知っているであろうアルトから拷問してでも聞き出そうと考えていたのだが――
実際にアルトの口から出てきたのは、全く想定外の言葉だった。
「アダムが全ての原因……それは本気で言ってるのか?」
「あ、ああ。そうだ。俺たちはアイツの口車に乗せられただけなんだ! アイツの提案がなければ、あの村を滅ぼすことも、お前を仲間に入れて騙すこともなかった……本当だ、信じてくれ!」
そう告げるアルトは、まさに鬼気迫った表情だった。
ここで何とか責任を逃れないことには、生き延びられないと考えているからだろう。
しかしもはや今のシンにとって、アルトの態度などどうでもよかった。
アルトの言葉が本当に正しいとすれば、全ての前提が崩れ去る。
復讐がこれで終わるばかりか、まだ始まってすらいないと言えるだろう。
ここでふと、シンはある疑問を抱いた。
「いいだろう。ひとまず、今の言葉は信じてやる」
「ほ、本当か!? だったら俺だけでも助けてくれ! この通りだ!」
「……それは、ここからの態度次第だな」
「あ、ああ! ……いや、分かりました! 言う通りにします!」
頭を地面に擦り付けるアルトに対し、シンはその疑問を尋ねることにした。
「今の話の中で、不明瞭な点が一つある」
「な、何でしょうか……?」
「俺を騙してパーティーに入れた部分だ。お前は以前、俺をレベル100まで育ててからとある貴族に売るつもりだと言っていた。それは間違いないな?」
アルトはこくりと頷く。
「は、はい。ですがそれもアダムからの提案だったんです。貴族との橋渡しも、アイツがする予定で……」
「その貴族の名前と目的は?」
「え? 名前と目的ですか? ……えーっと、ですからそれはアダムの担当だったので、俺たちも詳しいことは何も知らなくて――」
「――嘘だな」
「っ!? ぁぁぁあああああ!」
シンはアルトの右手に刺した骸の剣の切っ先を、ぐりぐりと回す。
痛みに悶えるアルトに対し、シンは冷たい声で言った。
「お前は立場を理解しているのか?」
「う、ぁぁぁ……嘘なんて、決してついては……」
「クリムの存在を、俺が忘れたとでも思ったか!?」
「ッ!?」
アルトは“しまった!”とでも言いたげに、目を大きく見開いた。
「アイツは俺と同じユニークスキル持ち。パーティーに入れた理由も同じだろう。となれば……アダムがいなくなった今も、その貴族との伝手はあるはずだ」
「そ、それは……」
「ここで死にたいのなら、それでも構わない」
シンが剣を振り上げると、アルトは慌てて声を張り上げる。
「待ってください! 言う! 言います!」
「………」
「……ブラスフェミー公爵家、その当主様です」
ブラスフェミー公爵家。
元々は一介の冒険者でしかなく、国の事情に詳しくないシンであっても、その名は聞いたことがあった。
「確か――迷宮都市を治める領主だったか」
迷宮都市【トレジャーホロウ】。
それは全ての冒険者にとって、憧れの対象とも言えるこの国最大の都市だ。
町の中心にある大迷宮を始めとし、トレジャーホロウには数多くのダンジョンが存在している。
そこで活動している冒険者の多くがレベル500越えのAランクと言われており、文字通り迷宮探索の最先端と言えるだろう。
そしてその都市を治める領主こそ、この国の四大貴族の一つ、ブラスフェミー公爵家。
現当主の実力は、並の冒険者はもちろん、Aランク冒険者ですら敵わないというのは有名な話だった。
ここに来て飛び出してきた、まさかの大物の名前。
これは思ったより闇が深そうだ。
「名前は分かった。目的は?」
「そ、そっちは本当に知らないんです! 俺としても金さえもらえればよかったので、無理に聞き出そうとは思わなくて……」
「なるほどな」
その後、シンは他にも気になっていた幾つかを尋ねた。
アルトが先ほど、力を増したのはなぜか。
アダムの行方には心当たりがあるか、などなど。
結果的に、アダムが不思議なマジックアイテムをアルトに渡したこと以外、有益な情報は手に入れられなかった。
アダムは突然パーティーを抜けたため、行方についても知らないらしい。
(……この辺りでいいか)
聞きたいことは全て聞いた。
これでようやく、本番に入れる。
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