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049 原罪の在り処
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聞きたいことは全て聞いた。
これでようやく、本番に入れる。
「そ、それで、シン……様。俺は、許していただけるんでしょうか……?」
「……ついてこい」
縋るような目を向けてきたアルトの首元を、シンは掴んだ。
そして引きずるような形で運んでいく。
そんな中、アルトはシンにバレないように笑っていた。
(は、ははっ、見たことか……! これで俺だけは助かる! ガレンたちには悪いが、運も才能のうち……俺が生き残るのは神に定められていた決定事項だったんだよ!)
心の中で、意気揚々と告げるアルト。
しかしふと、彼は違和感を覚えた。
「な、なあ、シン様、これだと出口じゃなくて、奥に向かっている気が……」
「…………」
シンは答えを返さない。
数分後、彼らがたどり着いたのはボス部屋だった。
「……俺がこのダンジョンを、復讐の舞台として選んだ理由は二つある」
抑揚のない声で、シンは語り始める。
「一つは、脱出のためには絶対に通らないといけない一本道があったこと。誰かに復讐している最中に逃げられるわけにはいかなかったからな」
「シ、シン様? 突然何を……」
「そしてもう一つ――こっちが本命だ」
シンが視線を奥に向ける。
するとそこには、これまでの戦闘や会話で相当な時間が経過していたようで、ボスのリザード・ジェネラルとその配下たちが復活していた。
「お前たちは俺の家族に、竜に喰われる痛みと恐怖を与えた」
「だ、だからそれは、アダムがやったことで――」
「ふざけるな」
「がはっ!」
シンが振り上げたつま先が、アルトの鳩尾に刺さる。
「誰が提案したかなんて関係ない。それを受け入れ、決断したのはお前だ、アルト。そんなお前には、皆と同じ……いや、それ以上に苦痛を受けてもらう」
「ま、まさか……」
「さすがに竜を用意するとまではいかなかったが……お前ごとき、この蜥蜴たちで十分だろう」
「ま、待て――」
静止の声も待たず、シンはアルトを投げた。
部屋の中心に、彼の体がぽとりと落ちる。
蜥蜴の群れが、一瞬で彼に群がった。
「う、嘘だろ……!? ふざけるな、シン! 俺だけは助けてくれるんじゃなかったのか!?」
「……期待してくれたんだな。よかったよ、おかげで俺が受けた苦しみも返すことができる。思い知るといい、アルト。それが裏切られる絶望だ」
「ま、待て……うわぁぁぁあああああああ!」
蜥蜴の群れが、捕食を開始する。
しかし彼は曲がりなりにも400レベルを超えたBランク冒険者。
先ほど使用したマジックアイテムの効果も、わずかとはいえ残っている。
その結果、蜥蜴たちの捕食はほとんど進まず――その分だけ、アルトは苦痛と恐怖を味わうこととなった。
(嘘だ、嘘だ、嘘だ! こんな、こんな終わりなんて――)
絶望のあまり、気を失いかけるアルト。
それはせめて死ぬ前に、痛みから逃れようという彼の本能だったのだろう。
しかし、
「――おい。逃げるなよ」
「ぐわぁぁぁあああああああああ!!!」
直後に激痛。
視線を上げると、シンが自分の左腕を剣で斬り裂いていた。
――【痛縛の強制】。強制的に痛みを共有することによって、アルトが意識を失うことすらシンは阻んだ。
絶望は続く。
どこまでも、どこまでも。
ここにいる魔物たちは、本来ならアルトにとって取るに足らない雑魚ばかり。
その事実が、さらに絶望の時間を延ばす結果となった。
(いや、だ……こんな、こんな終わりなんて――)
やがて声帯も、視力も、聴覚も失い。
暗闇の中で、責め苦を与えられ続けること約1時間。
長い長い絶望の末、ようやくアルトは力尽きるのだった。
そして、それを最後まで見届けたシンは天井を見上げる。
アルトから得た情報は想像以上に重要だった。
色々と検証する必要はあるだろうが、まだ彼の復讐が続くことは間違いない。
それでも――
「……ひとまずだけれど。僕が、皆の借りを返したよ」
――大切だった家族を想い、シンはそう告げるのだった。
かくして、始まりの復讐は幕を閉じた。
原罪の在り処を、今はまだ誰も知らない。
これでようやく、本番に入れる。
「そ、それで、シン……様。俺は、許していただけるんでしょうか……?」
「……ついてこい」
縋るような目を向けてきたアルトの首元を、シンは掴んだ。
そして引きずるような形で運んでいく。
そんな中、アルトはシンにバレないように笑っていた。
(は、ははっ、見たことか……! これで俺だけは助かる! ガレンたちには悪いが、運も才能のうち……俺が生き残るのは神に定められていた決定事項だったんだよ!)
心の中で、意気揚々と告げるアルト。
しかしふと、彼は違和感を覚えた。
「な、なあ、シン様、これだと出口じゃなくて、奥に向かっている気が……」
「…………」
シンは答えを返さない。
数分後、彼らがたどり着いたのはボス部屋だった。
「……俺がこのダンジョンを、復讐の舞台として選んだ理由は二つある」
抑揚のない声で、シンは語り始める。
「一つは、脱出のためには絶対に通らないといけない一本道があったこと。誰かに復讐している最中に逃げられるわけにはいかなかったからな」
「シ、シン様? 突然何を……」
「そしてもう一つ――こっちが本命だ」
シンが視線を奥に向ける。
するとそこには、これまでの戦闘や会話で相当な時間が経過していたようで、ボスのリザード・ジェネラルとその配下たちが復活していた。
「お前たちは俺の家族に、竜に喰われる痛みと恐怖を与えた」
「だ、だからそれは、アダムがやったことで――」
「ふざけるな」
「がはっ!」
シンが振り上げたつま先が、アルトの鳩尾に刺さる。
「誰が提案したかなんて関係ない。それを受け入れ、決断したのはお前だ、アルト。そんなお前には、皆と同じ……いや、それ以上に苦痛を受けてもらう」
「ま、まさか……」
「さすがに竜を用意するとまではいかなかったが……お前ごとき、この蜥蜴たちで十分だろう」
「ま、待て――」
静止の声も待たず、シンはアルトを投げた。
部屋の中心に、彼の体がぽとりと落ちる。
蜥蜴の群れが、一瞬で彼に群がった。
「う、嘘だろ……!? ふざけるな、シン! 俺だけは助けてくれるんじゃなかったのか!?」
「……期待してくれたんだな。よかったよ、おかげで俺が受けた苦しみも返すことができる。思い知るといい、アルト。それが裏切られる絶望だ」
「ま、待て……うわぁぁぁあああああああ!」
蜥蜴の群れが、捕食を開始する。
しかし彼は曲がりなりにも400レベルを超えたBランク冒険者。
先ほど使用したマジックアイテムの効果も、わずかとはいえ残っている。
その結果、蜥蜴たちの捕食はほとんど進まず――その分だけ、アルトは苦痛と恐怖を味わうこととなった。
(嘘だ、嘘だ、嘘だ! こんな、こんな終わりなんて――)
絶望のあまり、気を失いかけるアルト。
それはせめて死ぬ前に、痛みから逃れようという彼の本能だったのだろう。
しかし、
「――おい。逃げるなよ」
「ぐわぁぁぁあああああああああ!!!」
直後に激痛。
視線を上げると、シンが自分の左腕を剣で斬り裂いていた。
――【痛縛の強制】。強制的に痛みを共有することによって、アルトが意識を失うことすらシンは阻んだ。
絶望は続く。
どこまでも、どこまでも。
ここにいる魔物たちは、本来ならアルトにとって取るに足らない雑魚ばかり。
その事実が、さらに絶望の時間を延ばす結果となった。
(いや、だ……こんな、こんな終わりなんて――)
やがて声帯も、視力も、聴覚も失い。
暗闇の中で、責め苦を与えられ続けること約1時間。
長い長い絶望の末、ようやくアルトは力尽きるのだった。
そして、それを最後まで見届けたシンは天井を見上げる。
アルトから得た情報は想像以上に重要だった。
色々と検証する必要はあるだろうが、まだ彼の復讐が続くことは間違いない。
それでも――
「……ひとまずだけれど。僕が、皆の借りを返したよ」
――大切だった家族を想い、シンはそう告げるのだった。
かくして、始まりの復讐は幕を閉じた。
原罪の在り処を、今はまだ誰も知らない。
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