外れスキル【無限再生】が覚醒して世界最強になった ~最強の力を手にした俺は、敵対するその全てを蹂躙する~

八又ナガト

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081 蠢く憎しみ

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 シンとイネスが眠りにつく一方――冒険者ギルドの医務室にて。
 フール・ブラスフェミーは、静かに目を覚ました。

 しかし彼は状況が飲み込めず、困惑した表情を浮かべていた。

「何が、起きたんだ……?」

 フールは頭を抱えながら、必死に記憶を探る。
 そこで彼は、ルイン・ドレイクの炎に呑まれ殺されたことを思い出した。

「そうだ、俺様は確かルイン・ドレイクにやられたはず……!」

 その事実に、フールの背筋に冷たいものが走る。
 だとすれば、なぜ自分はこうして生きているのか。

 その疑問を抱きつつ、ふとフールは違和感を覚えた。
 いつも耳につけている、あのイヤリングの存在が感じられない。

「っ、そうか。が発動したのか……!」

 得心のいったフールは、ホッと胸をなでおろした。
 まさかの保険が、こんなタイミングで役に立つとは思ってもいなかった。

 その保険こそ、今はなきイヤリング――通称【霊宝具《ソウル・アーティファクト》】と呼ばれるアイテムだった。
 通常のマジックアイテムとは比べ物にならないほど高性能で、一部の貴族たちの間でしか流通していない逸品。
 並の冒険者では存在すら知らないだろう。

 そして肝心な能力についてだが……フールが装備していたイヤリングは、装備者が死亡してもという、まさに規格外の能力を有していた。
 その能力によって、自分がこうして生き延びたことをフールは悟る。
 

 ここでふと、フールはとある疑問を抱いた。

「いや待て。そもそもどうして、俺様がギルドにいる? ここまで運ぼうにも、その前にルイン・ドレイクを片付ける必要があったはず。あの場にそれだけの実力者がいた覚えはねぇが……」

 疑問を抱えたまま、フールがベッドから起き上がろうとしたその時だった。
 医務室の扉が開き、別のグループに参加していた数人の部下が入ってくる。

「フールさん! お気づきになられましたか!?」
「おお、お前たちか。一体何があったんだ? どうにも記憶が曖昧なんだが……」

 フールの問いかけに、部下たちは面食らった表情を見せる。
 そのうちの一人が、おずおずと口を開いた。

「それが……今回のスタンピードを解決したのは、シモンとイネスという冒険者たちだったんです」
「なっ! アイツらだと……!?」

 予想外の名前にフールは目を見開く。
 部下たちは続けて、事の顛末を説明し始めた。
 そしてそれはフールにとって、あまりにも信じがたい内容の数々だった。


「シモンは突如出現したレベル5000のエルダーリッチを、たった一撃で倒したそうです。あの規格外のモンスターを、無傷で葬り去ったんだとか」
「それに、イネスという銀髪の少女――なんとアイツが、フールさんが追っていたハーフエルフの少女だったんです! しかも彼女がルイン・ドレイクを単独で討伐したらしいんです。レベル2000のモンスターを、たった一人で……」


 信じられない話の連続に、フールは呆気にとられていた。

「そんな、ありえねぇ……そんなこと、ありえるはずが……」

 動揺するフール。
 そこへ追い打ちをかけるように、隣の酒場で打ち上げをしている冒険者たちの会話が聞こえてくる。

「シモンとイネス……だっけ? あのコンビ、マジで最強じゃねえか? 特にシモンだよ! レベル5000のエルダーリッチを瞬殺するところなんて、見てて鳥肌が止まらなかったぜ」
「嬢ちゃんの方もすげえよ。ハーフエルフだってのに偏見なんて吹き飛ばして、堂々と戦ってたって話だもんな。あの時、中央広場には俺の嫁と娘もいたんだ。どれだけ感謝してもしたりねぇよ……」

 賞賛の声が、次々と上がっていく。
 誰もがシモンとイネスの活躍を称えているようだった。

 その一方で、フールの名前が出た時の反応は――

「そういやフールはどうなったんだ? ルイン・ドレイクに吹っ飛ばされて、どっか行っちまったんじゃねえの?」
「いや、あいつなら医務室で寝てるんじゃねえか? 死んだふりして、戦いから逃げ出したんだろ」
「はっ、口先だけは達者なくせに、肝心な時に役立たずだもんな」

 などなど、侮蔑の念がこもった嘲笑がほとんどだった。

 そうなるのも理由があった。
 まず、気絶していたフールをここまで運んだのは彼らだ。
 彼らが現地に向かった時点で、フールは【霊宝具《ソウル・アーティファクト》】による再生が終わり怪我一つない状態だったらしいが、それが逆にまずかった。

 彼らは傷を負わず気絶しているフールを見て、戦わずして失神してしまったと考えたからだ。
 加え、フールはもともとギルド内で幅を利かせていたこともあり、彼らからよく思われていなかった。

 普段から溜まった不満と、スタンピードを解決した達成感。
 それらが合わさった結果、現在、フールの無様な姿はこれ以上ない酒の肴になっていた。

 そんな彼らの言葉を聞き、フールの体が怒りに打ち震える。
 これまでにない、深い屈辱を味わわされた気分だった。

「許さねぇ、許せねぇ、絶対に許さねぇ……!」

 フールは歯軋りしながら、呪詛の言葉を吐き続ける。
 もはや彼の中で、理性は怒りに呑まれつつあった。

 あの冒険者たちはもちろんだが、それ以上に、自分に惨めさと屈辱を与えたあの2人が許せなかった。
 どういう方法かは不明だが、シモンが初めてギルドに来た時、レベルを偽り実力を隠していたこと。そして、イネスが自分の正体をハーフエルフだと隠していたこと。
 それらがそもそもの事の発端だと、そうフールは考えていた。

 理性を失った怒りは収まる気配を見せず、そのまま黒く塗りたくられていく。

「何としてでも、復讐してやる……! 特にアイツら二人には、地獄の苦しみを味わわせてやるっ……!」

 感情の赴くままに、フールは魔力を高ぶらせる。
 それを見た部下たちは、慌てて声を上げた。

「フールさん!?」
「いったい何を!?」

 静止の甲斐もなく、フールはそのまま魔術を発動。
 途端、目の前の壁が大きな音を立てて崩れ去り、夜空が視界いっぱいに飛び込んでくる。

「テメェら、ついてこい」
「「は、はい!」」

 ただならぬ雰囲気に気付いた部下たちは、恐る恐るフールの後に続く。

「うおっ、なんだ!?」
「医務室の方だ!」

 遅れて酒場の方から声が聞こえるが、そちらは後回し。
 今のフールにとって、真っ先に復讐する対象はもう決まっていた。


 そのままフールと数人の部下は、真っ暗な夜道を進んでいくのだった。
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