3 / 57
003 1から始める肉体改造
しおりを挟む「よし、そうと決まれば……今日からさっそく特訓開始だ!」
俺は気合を入れ、特訓を開始した。
まずは『筋力』を鍛えるための筋トレだ。
腕立て伏せに腹筋、背筋と、とにかく自分の体に負荷をかける。
慣れない運動で体中が悲鳴を上げるが、目標を思い浮かべればこの苦痛にも耐えられた。
次に『スタミナ』を鍛えるランニングだ。
一定の速度で長距離を走り続ける。
息が上がり脚が重くなるが、それでも俺は足を止めない。
最後は『速度』を鍛えるための全力疾走。
もはや地獄のような運動量だが、ここを乗り越えなければ強くなれない。
汗が滝のように流れ、心臓が爆発しそうに高鳴っている。
一通りフィジカル面のトレーニングを終えた俺は、息を切らしながら汗を拭った。
「はぁ……はぁ……思ったよりキツいが、意外とやれるもんだな」
前世の自分と比べ、今のレストの身体能力は明らかに高い。
これまでもアルビオン家の厳しい環境の中で、必死に鍛錬を積んできたのだろう。
「ゲームだと、サボり魔もいいところだったのにな……そうなってしまうくらい、テイム獲得後のレストにとってアルビオン家の環境が厳しかったってことか」
改めて、レストがテイムを手にした時の絶望が思い起こされる。
あれほど頑張ってきたのに、努力が全て水の泡になるのだから無理もない。
ただ、いつまでも過去のレストに思いをはせても仕方がない。
俺は呼吸を整えた後、魔力錬成に移行する。
ここまでの三種類は前世で経験があったため取っつきやすかったが、魔力を扱うのは当然これが初めて。
かなり苦戦するのではないかと予想していたが……結果としては意外にも、スムーズに使用することができた。
というのもだ。
今の俺には前世の記憶だけでなく、この世界で生きてきたレストの記憶も備わっている(ところどころ朧げではあるが)。
その中には魔力を使った記憶もあるため、それを思い出しながら実行することで魔力錬成にも成功した。
「よし! この調子でガンガン進めていくぞ!」
最大の難関と思われていた魔力錬成を呆気なくクリアした俺は、その勢いのまま次の項目へと進み――
「って、最後に残ってるのはお祈りじゃん」
――さすがに、このハイテンションのままお祈りをするわけにはいかない。
深呼吸をして落ち着きを取り戻した俺は、改めてこの世界の女神に向けて祈りを捧げるのだった。
◇◆◇
「ふっ! はっ!」
――そうして鍛錬に打ち込むこと約一週間。
徐々にその成果が表れ始めていた。
まず筋力、スタミナ、速度に関しては、わずかとはいえ数値にも残るレベルで着実に上昇していた。
やはりこの世界でもゲームと同様、トレーニングによるパラメータ上昇効果は反映されるのだろう。
魔力と幸運については実感しづらいのだが、この分だと間違いなく効果が出ているはずだ。
「……ん? なんだ?」
そんな風に考えていた矢先だった。
何やら視線を感じたのでそちらを見ると、そこでは通りすがりのエドワードとシドワードが、興味深そうに俺の様子を観察していた。
俺が気付いたのを見て、二人は意地の悪い笑みを浮かべる。
「おい、レスト。何をやってるんだ?」
「まさか特訓か? お前のスキルは【テイム】なんだ。そんなことしても意味ないだろう?」
……散々な言われようだ。
【大剣使い】と【双剣使い】という優秀なスキルを持つ彼らからすれば、【テイム】しか使えない俺の努力など無駄に思えるのだろう。
加え、二人は俺と同学年ではあるものの、誕生日が半年ほど早いため、それだけ早くにスキルを授かり鍛錬を積んできた。
その差は今の実力にも如実に表れている。現時点の俺では、どう足掻いても彼らには敵わない。それを知っているからこそあれだけ横柄な態度を取れるのだ。
俺は呆れが表情に出ないよう取り繕いながら、二人に言葉を返す。
「意味がないかどうかは、やってみないと分からないだろ」
すると、次男のエドワードが馬鹿にするように指をさしてくる。
「ハハッ、分かるに決まってるだろ! 【テイム】風情がどれだけ努力したって無駄無駄! そんなことも分からないからお前はダメなんだ!」
「エド、そろそろ時間だ」
「おっと、そうだった。俺らはこれから剣の指導を受けに行くところだ。レスト、お前は受けられなくて残念だったな!」
そう言って二人は嘲笑い、剣術指導の場へと向かっていった。
彼らはスキルを獲得した半年前から、国内で名を轟かせる凄腕の剣士に指導を受けている。
本来であれば俺も受けるはずだったのだが、剣術系のスキルを授からなかったことでその資格をはく奪された。
「正直、こればっかりはかなり痛かったかもな……」
強くなるためには、ただステータスを上げるだけでなく生きた戦闘経験を積む必要もある。
その機会を奪われたのは、今後の事を考えるとかなりの痛手だった。
とはいえ、まったく可能性がないわけではない。
「二人が指導を受けてる相手についてはレストの記憶で覚えがある。あの人ならもしかしたら……」
その後、特訓を再開すること約二時間。
いつもならこれくらいで、二人の特訓が終わるはず。
「ダメでもともと。試すだけならタダだ!」
呼吸を整えた俺は、その足で目的の場所に向かう。
たどり着いた大修練場では、ちょうどエドワードたちが、とある女性から指導を受けている最中だった。
433
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる