7 / 98
第1章
5.なんていうか、笑うしかないよね
しおりを挟む
薬師だったマイお姉ちゃんは死んだ。
エクレアを助けるために死んだ。
その衝撃の事実を聞いた時はどんな顔をしてたのだろう……
覚えてないぐらいの衝撃が走ったのは確かだ。
「あはは……なんていうか、笑うしかないよね」
あれから一週間が経過し、外を出歩けるまで回復したエクレアは一つの墓を訪れていた。
マイお姉ちゃんの家の裏手に植えられた一本の大木の根本。
今ならわかる、お姉ちゃんにとって故郷を思い起こすサクラの木。
その根本に立つ、黒いとんがり帽子が添えられた小さな墓。
死因は毒による衰弱死。
バジリスクの毒によって息絶えたそうだ。
バジリスク……
毒蛇の王とも称される通り、そこらの毒蛇とは比べ物にならないほどの猛毒を持つ蛇。
常人だと噛まれたら即死だ。
そんな化け物が村近辺に現れた。
そう、あの日森の中で出会ったへびさん……
エクレアに襲い掛かったへびさんが『バジリスク』だった。
バジリスクは普段だと奥地。はるか昔に魔王が巣食っていたとされる魔王城跡地の近辺に生息しており、普段は村までは来ない。
来る時は跡地近辺に生態系を狂わす何かが現れた、もしくは大量発生で生息地を広げる必要性がでた……
RPG風に言ってしまえばレイドボスの出現やスタンピートの発生時であり、そういう時は大体前触れがある。
前触れを決して見逃さないよう、この村では冒険者…いや、モンスターハンターとも称される魔物や魔獣狩りの専門家が常に跡地近辺へと出向いて適度に魔物達を狩りつつ、異変がないか調査しているのだ。
襲われた前後では跡地近辺に異変が起きている気配はない。レイドボスやスタンピートの可能性はなし。
ただのハグレが村近辺までさ迷い出たのだろうっと結論付けられた。
ついでにバジリスクも退治されて危険もなくなった。
一人亡くなったといはいっても辺境ではまれによくある事だ。
被害でいえばゴブリンの群れが襲撃して村が壊滅する事態の方がよっぽど酷い。たった一人の犠牲で済んだのは幸いの部類っと、大きな騒ぎは起きず日常を取り戻していた。
一人以外は……
「バジリスクに襲われた当人が生き残って……助けに入った方が命を落とすって何それ?
なにべたべたな定番な展開なのそれ……」
あの日、森の道を歩いていた目的はお姉ちゃんの家へと出向くため。
森を抜けた先にはお姉ちゃんの住む家、アトリエともいうべき家があった。
だからエクレアのあげた悲鳴に気付き、即座に駆けつけてくれたようだ。
その場にいた者は誰もいないのでレクレアの推測になるが、多分おそらくそうだろう。
お姉ちゃんはバジリスクと戦い、追い払った。
そこでどんな戦闘を繰り広げたかわからない。
爆音ともいうべき凄まじい音が響きわたり、何事かと駆けつけてきた顔見知りの冒険者の話によれば、駆けつけた時にはすでに戦闘は終わっていたようだ。
そこにいたのは……
立ってはいるけど、噛まれた腕が変色してすでに毒が全身がまわり始めているお姉ちゃんと……
完全に毒が回ってすでに助かる見込みもなくなったエクレア。
顔見知り冒険者は万が一に備えて高位の薬を持っていた。
それこそバジリスクの毒にも対応できる、とてもとても貴重な薬……『霊薬』を一本だけ持ってたのだ。
だからお姉ちゃんがそれを飲めば助かった。
助かるというのにお姉ちゃんは断ったらしい。
“飲ませるなら私ではなくエクレアに……”
最初は無理だと却下した。
いくら『霊薬』でも万能ではない。
必ず助かるというものではない。
ましてや、すでに手遅れと誰がみてもわかるようなエクレアに飲ませても意味がない。
薬を無駄にするだけだと説得するもお姉ちゃんは聞き入れない。
無駄でもいい。代価を支払うから与えてやってほしい。
わずかでも助かる可能性があるなら……
時間もなかった事もあってか、冒険者の方が折れたようだ。
一本しかない貴重な薬をエクレアに飲ませ……
マイお姉ちゃんは死んだ。
エクレアの目覚めが伝えられたその直後に……
ただ一言……
「よかった……」
その一言だけを残して……
二度と目覚めない、永遠の眠りについたそうだ。
エクレアを助けるために死んだ。
その衝撃の事実を聞いた時はどんな顔をしてたのだろう……
覚えてないぐらいの衝撃が走ったのは確かだ。
「あはは……なんていうか、笑うしかないよね」
あれから一週間が経過し、外を出歩けるまで回復したエクレアは一つの墓を訪れていた。
マイお姉ちゃんの家の裏手に植えられた一本の大木の根本。
今ならわかる、お姉ちゃんにとって故郷を思い起こすサクラの木。
その根本に立つ、黒いとんがり帽子が添えられた小さな墓。
死因は毒による衰弱死。
バジリスクの毒によって息絶えたそうだ。
バジリスク……
毒蛇の王とも称される通り、そこらの毒蛇とは比べ物にならないほどの猛毒を持つ蛇。
常人だと噛まれたら即死だ。
そんな化け物が村近辺に現れた。
そう、あの日森の中で出会ったへびさん……
エクレアに襲い掛かったへびさんが『バジリスク』だった。
バジリスクは普段だと奥地。はるか昔に魔王が巣食っていたとされる魔王城跡地の近辺に生息しており、普段は村までは来ない。
来る時は跡地近辺に生態系を狂わす何かが現れた、もしくは大量発生で生息地を広げる必要性がでた……
RPG風に言ってしまえばレイドボスの出現やスタンピートの発生時であり、そういう時は大体前触れがある。
前触れを決して見逃さないよう、この村では冒険者…いや、モンスターハンターとも称される魔物や魔獣狩りの専門家が常に跡地近辺へと出向いて適度に魔物達を狩りつつ、異変がないか調査しているのだ。
襲われた前後では跡地近辺に異変が起きている気配はない。レイドボスやスタンピートの可能性はなし。
ただのハグレが村近辺までさ迷い出たのだろうっと結論付けられた。
ついでにバジリスクも退治されて危険もなくなった。
一人亡くなったといはいっても辺境ではまれによくある事だ。
被害でいえばゴブリンの群れが襲撃して村が壊滅する事態の方がよっぽど酷い。たった一人の犠牲で済んだのは幸いの部類っと、大きな騒ぎは起きず日常を取り戻していた。
一人以外は……
「バジリスクに襲われた当人が生き残って……助けに入った方が命を落とすって何それ?
なにべたべたな定番な展開なのそれ……」
あの日、森の道を歩いていた目的はお姉ちゃんの家へと出向くため。
森を抜けた先にはお姉ちゃんの住む家、アトリエともいうべき家があった。
だからエクレアのあげた悲鳴に気付き、即座に駆けつけてくれたようだ。
その場にいた者は誰もいないのでレクレアの推測になるが、多分おそらくそうだろう。
お姉ちゃんはバジリスクと戦い、追い払った。
そこでどんな戦闘を繰り広げたかわからない。
爆音ともいうべき凄まじい音が響きわたり、何事かと駆けつけてきた顔見知りの冒険者の話によれば、駆けつけた時にはすでに戦闘は終わっていたようだ。
そこにいたのは……
立ってはいるけど、噛まれた腕が変色してすでに毒が全身がまわり始めているお姉ちゃんと……
完全に毒が回ってすでに助かる見込みもなくなったエクレア。
顔見知り冒険者は万が一に備えて高位の薬を持っていた。
それこそバジリスクの毒にも対応できる、とてもとても貴重な薬……『霊薬』を一本だけ持ってたのだ。
だからお姉ちゃんがそれを飲めば助かった。
助かるというのにお姉ちゃんは断ったらしい。
“飲ませるなら私ではなくエクレアに……”
最初は無理だと却下した。
いくら『霊薬』でも万能ではない。
必ず助かるというものではない。
ましてや、すでに手遅れと誰がみてもわかるようなエクレアに飲ませても意味がない。
薬を無駄にするだけだと説得するもお姉ちゃんは聞き入れない。
無駄でもいい。代価を支払うから与えてやってほしい。
わずかでも助かる可能性があるなら……
時間もなかった事もあってか、冒険者の方が折れたようだ。
一本しかない貴重な薬をエクレアに飲ませ……
マイお姉ちゃんは死んだ。
エクレアの目覚めが伝えられたその直後に……
ただ一言……
「よかった……」
その一言だけを残して……
二度と目覚めない、永遠の眠りについたそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
婚約破棄された瞬間、隠していた本性が暴走しました〜悪女の逆襲〜
タマ マコト
恋愛
白崎財閥の令嬢・白崎莉桜は、幼いころから完璧であることを強いられた女であった。
父の期待、社会の視線、形式ばかりの愛。
彼女に許されたのは「美しく笑うこと」だけ。
婚約者の朝霧悠真だけが、唯一、心の救いだと信じていた。
だが、華やかな夜会の中、彼は冷ややかに告げる。
「俺は莉桜ではなく、妹の真白を愛している」
その瞬間、莉桜の中の何かが崩れた。
誰のためにも微笑まない女——“悪女”の本性が、静かに目を覚ます。
完璧な令嬢の仮面を捨て、社会に牙を剥く莉桜。
彼女はまだ知らない。
その怒りが、やがて巨大な運命の扉を開くことを——。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる