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最終章
4-6 嘘 ※R15
しおりを挟むカンタレア国王が用意した部屋で、リリアナはオスカーと共にいた。
無理を押して来た彼をベッドに寝かせる。
リリアナはだいぶ落ち着きを取り戻していた。
痛むのだろうか。目を閉じたオスカーに話しかける。
「骨折はどうなさったんですか……」
「肋骨だけだからな、動けないことはない」
「無理をなさらないでください。魔力はご自分の治癒には使えないのでしょう?」
「とはいえかなり回復は早いがな」
自分のせいで危険にさらしてばかりだと思うと、リリアナはいたたまれなかった。
「寒くはないですか?」
毛布をかけ直し、返事がある前に立ち上がる。暖炉に薪をくべ、空気を入れ替えた。
(お父さま達は明日――)
国王に、例えリリアナが頼んだとしてもカンタレア国として処分は変えないと言われた。
彼らは自分の犯した罪で堕ちていったのだ。そう思えれば楽なのに、油断すると呼吸がうまく出来なくなる。
「リリアナ」
手を引かれ、リリアナの身体はベッドに沈む。
「もう……危ないですよ。危うく倒れ込むところで……」
とがらせた唇をなだめるように、熱っぽい唇が重なった。
「お身体が……」
「俺といるのに、余計なことを考えるお前が悪い」
いつの間にかリリアナの上になったオスカーは、もう一度深く口づける。
「ちょ……っと、オスカー様」
甘い声が零れそうで、遠慮がちに押し返すと、オスカーが顔を歪めた。
「痛みましたか!?」
リリアナは飛び起きた。
仰向けに倒れたオスカーは胸を手で押さえている。
「ごめんなさい、私……押したりして……」
「キスしてくれないか」
「え?」
「痛みを忘れたいんだ」
腕で目元を隠しているオスカーの顔は見えなかったが、そう言われては弱い。
「ど、どちらにすれば……」
唇に、と言われリリアナは震えながら、かすめるようにキスをした。
「足りない」
低く甘い声が、まるで脳を痺れさせるようで、無意識に顔を近づけた。
触れるか触れないかで肩を抱かれ、気づいた時には上下が入れ替わっていた。
上で、オスカーがいたずらっぽく笑う。初めて見る表情にリリアナの体温は上昇し、鼓動が鳴り止まない。
「あの、痛みは……?」
「あぁ、痛む。耐えられないくらい」
そう言う彼の視線が理性を溶かす媚薬のようで、見ないように目をきつく閉じた。
まぶたに口づけられ、それでもリリアナが目を開かないでいると、柔らかい熱が移動していく。
額に、耳に、首筋に――
冷めるのををひたすら待つが、熱はたまる一方で、声を抑えるので精一杯だった。
それでもなぞるような唇に、ついに耐えきれずに目を開けた。
「首まで赤いな」
オスカーが意地悪にもそんなことを言うので、もう、これが彼の嘘だと分かっていた。
(でも、もう……)
嘘でいい――
理性の境界線が取り払われていく。
オスカーはリリアナを胸に抱いた。鼓動が近い。熱い。自分のものと重なって、区別がつかない。
暖炉の火が、二人の影を長く揺らした。
やがて、部屋の灯りが静かに落とされる。
絡めた指先はほどけることなく、ゆっくりと沈んでいった。
窓の外がうっすらと白み始める頃――
カンタレアの城には、遠く、低い鐘の音が静かに響いた。
◇
その数日後、リタ六世と連合国がカンタレアに参上した。
国際会議でリタ国は、侵略と人質行為を咎められ、エルジオと和平を結んだ。
賠償と経済制裁――その代償は、これから長くリタ国を縛るだろう。
リタ国の軍は、追い立てられるように国境の向こうへ消えていった。
エルジオは再び平穏を勝ち取った――
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